2 一週間後
俺が剣を手に入れてから一週間が経っていた。
「お帰りなさい、レインさん!」
ギルドに戻るなり、俺の元に一人の少年が走ってきた。
『青の水晶』に所属する冒険者のラスだ。
クラスは剣士で年齢は十四歳。
まだ若いけれど、すでにCランクだった。
Bランクも間近で、将来の有望株というやつである。
「首尾はどうでした?」
「ああ、ちょうどギガサイクロプスが村を襲おうとしてたから討伐してきたよ」
「えっ、もう倒したんですか? すげー、さすがレインさんだ!」
ラスが歓声を上げた。
目をキラキラさせて俺を見つめる。
どうも彼は俺に憧れているらしい。
あと、彼の剣を強化してやったんだけど、そのことにもかなり恩義を感じているようだ。
以来、何かあれば『レインさんレインさん』と駆け寄ってくるようになった。
ちょっと年下の弟ができたようで悪い気分じゃなかった。
「ふふ、今日も仕事が早いですね、レインさん」
受付窓口に行くと、ニーナが笑顔で出迎えてくれた。
「人間や家畜、それに作物にもかなり被害が出ていたそうだし、早めに処理できてよかったよ」
「きっと町の皆さんも感謝していますよ」
「ああ、帰り際に町の人たちが総出で見送ってくれたんだ。自分のしたことが、あの人たちの助けになったんだ、って実感できて嬉しい」
そういうのって、冒険者としての醍醐味かもしれない。
と、
「さすがは我がギルドのエースだ。もちろん俺もまだまだ負けんぞ。がはは」
バーナードさんが豪快に笑いながら話しかけてきた。
戦士のような体格の良さだが、この人は魔法使いだ。
俺が来る前の『青の水晶』で序列一位――つまりエースだった人。
俺は冒険者といっても裏方がメインで、あまり前線に出ることがない。
だから、経験豊富なバーナードさんにはいろいろと教えてもらっていた。
「俺はレッドワイバーンを討伐してきたぞ。ほら、素材だ」
と、ワイバーンの牙をカウンターに置くバーナードさん。
「いつの間に……すごいです」
「
「適材適所ですね」
ニーナが笑う。
「ええ、俺が出向いていたら、きっとバーナードさんより時間がかかってました。感謝します」
「ふむ、謙虚な気持ちは忘れてないらしいな。俺から伝えられる知識は何でも伝える。だから、これからも頼むぞレイン。頼りにしてるからな」
バーナードさんが俺の肩をポンと叩いた。
「がんばります!」
俺は力強くうなずく。
「お、我がギルドの双璧、レインとバーナードさんがそろっているな」
ギルドマスターのエルシーさんがやって来た。
「さっき連盟から連絡があったんだ。最近の実績が目覚ましいということで、『青の水晶』のギルドランクが上がったぞ。みんなの――特にレインとバーナードさんの頑張りのおかげだ」
「ランクアップ? おめでとうございます!」
俺はエルシーさんに微笑んだ。
「わーい、やりましたね!」
「ふむ、これで最底辺から脱出だな」
ニーナやバーナードさんもうれしそうだ。
こんな感じで俺たち『青の水晶』は上手く回っていた。
きっとこれから、もっと発展していくはずだ──。
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