7 ドラゴン相手に無双する
空に、巨大な黒い竜の姿があった。
ごうっ!
問答無用で炎を吐きかけてくる。
「――って、いきなりドラゴンブレスきたー!?」
「まずい……っ!」
バーナードさんが俺の前に出る。
「なんとか防御壁を作って防いでみる! せめてお前だけでも守ってやるからな!」
「バーナードさん……」
「『
呪文とともに、俺たちの周囲を薄緑色の防御フィールドが覆った。
ブレスが触れたとたん、バチバチッと激しい火花が散る。
普通の防御呪文なら一瞬で貫かれる威力のドラゴンブレスを受け止めただけで、十分すごいことだった。
だが──防御フィールドは少しずつ薄れていく。
いくら強化した杖を使っているとはいえ、ドラゴンブレスにいつまでも耐えることはできないらしい。
「ちいっ、持たないか……っ!」
バーナードさんが焦る。
俺は前に進み出た。
「お、おい、何をしている。フィールドの外に出るんじゃない! 死ぬぞ!」
「平気です。たぶんっ」
今度は俺がバーナードさんをかばう番だ。
直後、防御フィールドが吹き散らされた。
ドラゴンブレスが俺たちの頭上に降り注ぐ。
「させるかっ!」
俺は跳び上がって炎に身を晒した。
ばちぃっ!
ばちばちばちぢぢぢぢぢぢぢぃぃっ……!
ブレスが俺の服に触れ、服から発する薄緑の光によって押し返される。
そう、俺の『布の服』に付与された『+2733』の力である。
やがて──、
ばぢぃぃぃぃぃっ!
ブレスは俺の周囲に弾け散り、そこで爆発した。
「ふうっ」
俺も、そしてバーナードさんも無傷で済んだ。
「な、な、な……!?」
バーナードさんがポカンと口を開けていた。
「お、お前、今何をしたんだ」
「防いだんです。俺の防具で」
「防具って、それただの服だろ……?」
「ちょっと倒してきます」
いうなり、俺は銅の剣を抜いた。
近づけば、爪や牙、尾などで攻撃してくるだろう。
俺には通用しないだろうが、バーナードさんが巻き添えを食うかもしれない。
ならば、
「この距離から仕留める――」
剣を振りかぶった。
竜が警戒するように俺を見ている。
静寂が、流れる。
「砕けろーっ!」
気合いの声とともに、剣を振り下ろした。
剣圧をそのまま叩きつける。
轟音と爆音、そして切断音。
空間をも切り裂く一撃が、ドラゴンの巨体を両断した──。
ずうぅぅぅ……んっ。
両断された竜の死体が落下し、地響きを立てる。
「す、すごい奴だな、お前……」
バーナードさんは腰を抜かしていた。
「はははは、笑うことしかできんよ」
「いや、まあ……」
照れる俺。
「悪かったな。新入りのお前を守ってやりたくて同行したが……俺の方が邪魔になってしまった」
「そんなことないです。一緒にいてもらえて心強かったですよ」
俺はバーナードさんに微笑んだ。
「やっぱり、ソロって緊張するので」
「違いない……」
言いながら、彼の顔は青ざめていた。
腰を抜かしたまま、立ち上がれないようだ。
「一緒に来てくれて、ありがとうございました」
バーナードさんに一礼する。
不意に、理解できたんだ。
本当はバーナードさんも怖かったんだ、って。
いきなりドラゴン退治を言い出した無茶な新入り──つまり俺のために、恐怖に耐えて同行してくれたんだ、って。
ありがとう、バーナードさん。
心の中でもう一度お礼を言った。
──こうして、俺の『青の水晶』での初クエストは終了した。
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