「叩いて直る」


「昔はテレビの調子がおかしくなった時は、手で叩いたもんだ……ちょうどいい衝撃が内部の部品の接触部分を上手く繋げていたのかもしれんな」

「へえー」


 昔の話を興味津々に聞いてくれる孫だった。

 しかし、厚みがあるテレビなんて、この子は知らないだろう。今や薄型テレビが主流である。中にはカーテンのように薄いテレビもあるしな。叩く面積はかなり狭い。

 昔と違って、繊細な家電という気がする。直るどころか、叩いた方が壊れてしまいそうだ。


「テレビの調子が悪い時、今はどうしているんだ?」


 孫が答えた。

 今の子は、叩くことなくすぐに修理屋さんにお願いするのだろうか。


 それとも、壊れたら新しいものと買い替えるのか――


「テレビはないよ。スマホで見れるし」


 ―—そもそもテレビがなくなっていた。

 だが、スマホがテレビ代わりと言うのなら、不調のスマホをやっぱり叩いて確かめてみるのではないか? 変わらないこともある……。

 昔から受け継がれてきた伝統が無くなってしまうのは、少し寂しいな。


「調子が悪いスマホの直し方? 叩くよりも、先に再起動をすると思う」


 再起動……。


「地面に落としても大丈夫な、頑丈なスマホを叩いたって、なにも変わらなそうだし」



 …了

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