無味青色

蒼狗

無味青色

 小瓶からスポイトを取り出す。そのまま器の中に垂らすと、スープの薄色が途端に青色を帯びる。

「またやってる」

 背に聞こえる友人の呆れた声も聴き慣れたものだ。

「食欲減退食を好き好んで食材に垂らすなんて頭終わってるって」

 何度聴いたかわからない言葉を聴き流し、出来上がった料理の写真を撮る。光の加減によって青色の印象も変わるから注意が必要だ。

「あんたのフォロワーも変わった奴が多いね」

「本当にそう思うよ」

 写真を投稿する。数秒して投稿に反応があったのを確認するとスマホをしまう。

「色をつけるだけで反応がある。不思議と青ならより多くの反応をもらえる。料理の腕が普通でもね」

 出来上がった料理を友人に差し出す。友人は無言で受け取ると、料理を口にする。

「いつも通り普通のおいしさだね」

「青色に味はないからね。でも反応はないし売れる」

 視線の先の本棚には同じタイトルの本が並んでいる。著者は私だ。

「本当に、美味しい青色だよ」

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無味青色 蒼狗 @terminarxxxx

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