君と見た星を、もう一度

朱理

星を見ていたあの人

 少しだけ高い丘の上に、星を眺めている少年のような子供の姿があった。

 身長は私より少し高いぐらいだ。綺麗な顔立ちをしている。


「ねえねえ、何してるの?」


 私は何をしているのか気になり、近づいて話しかけた。


「星を見ているんだ。ここは田舎でいろいろ不便だと思っているが、星や月がよく見える」


 その少年は夜空に夢中だ。私の存在など意識していないかのように。


「楽しいの?」


 私はこの田舎の町で生まれ、七年間育ってきた。

 だから星や月を見て何かを思うわけでもない。綺麗だとは思っても、いつも通りの光景だし珍しいものでもない。そこに楽しさや面白さなどを感じるとは思えなかった。


「楽しいさ。星の誕生にも長い年月がかかり、様々な事象が起きる。それを想像するのは、まるで物語を作るようで楽しいだろう?」


 なにを言ってるんだろう、と私は思った。

 七歳の私が、そんなことを考えたこともなく、言っている意味もほぼ理解できなかったからだ。


「んー私にはよく分かんない! ただ、綺麗だよね! お星さま!」


「ああ、そうだな。星は綺麗だ。何もかも忘れられるぐらいに……」


 少年は悲しげだ。視線は遠くにある星をまっすぐに見つめている。


「君の名前は?」


 少年はいきなり私の名前を聞いてきた。

 名前を聞かれたときは必ず言うようにしているので、私は答える。


「私は星野舞!」


 すると、びっくりした顔をして言う。


「驚いたね……名前に星が入っているのか。もしかして、これは運命の出会いというやつなのかな?」


 今度は私の顔を見つめている。


「君も星を調べてみる気はないかい? 知ったら意外と面白いものだよ」


 私は、この時少年に好意を抱いていた。気づけばこれが初恋だったのかもしれない。


「分かった! 調べてみる!」


 勢い良く返事をした。


「興味を持ってくれたようで嬉しいよ。また会うようなことがあったら、星の説明でもしようか」


 少年は満面の笑みを浮かべていた。さっきの悲しい表情が噓のように。

 私はその言葉がすごく嬉しかった。好きになった人に教えてもらう以上に嬉しいこ

とはない。


「そういえば、私の名前を言っていなかったね。私の名前は……」

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