トラウマ
朝
トラウマ
実家の大掃除をしていたら、押し入れの奥からクマのぬいぐるみが出てきた。
私はそれを見て絶叫し、押し入れに頭をぶつけてしまった。
「何?うるさいね~、虫?」
母がやってくると、私はそいつを指さした。
「これ!なんであるの!?捨ててって言ったじゃん!」
私は幼いころ、ずっとこのクマと一緒に過ごしていた。
でもあることがきっかけでこいつを大嫌いになり、母に捨ててほしいと頼んでいたのだ。
それがまだ、押し入れにいた。
「だってー、ぬいぐるみそのまま捨てるなんてかわいそうでしょ?捨て方わかんないし」
「かわいそうじゃない!可燃か資源の日にでも捨ててくれればよかったのに!」
母の言い訳が今は憎かった。
私はこいつが怖いのだ。
「やだ、かわいそう。ぬいぐるみも人の話聞いてるかもよ、こんな邪険にされたらクマさんかわいそうだよねえ」
母はそうクマに話しかける。
「話しかけないで!」
「もう、怖いんだけど」
母が出ていった後、私はクマを睨みつけて舌打ちをした。
今度弟が帰ってきたときにでも捨てて置いてもらおう。
あるとき私は、おやつに出てきたクッキーをこいつに渡した。
するとクッキーは、私の手からなくなったのだ。
こいつは「おいしい、あまいね」と言った。
驚いたけど、まだまだかわいいクマだった。
こいつは次に「もっといろんなあじしりたい、みんなのこともたべていい?」と聞いたのだ。
クマに家族を食われるなんてたまったもんじゃない。
だから怖くて、捨ててほしいと頼んだのだ。
クマはつぶらな瞳で私を見つめている。
私はクマを睨みつけると、勢いよく押し入れの戸を閉めた。
トラウマ 朝 @morning51
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