【短編】追放されたポーターが知らぬ内に追放者たちを「ざまぁしていた」お話
じょお
01 追放されたポーター、少女を助ける。
最近流行のざまぁ系ですが、テストで書いてみました。これといってプロットもないので行き当たりばったりですが、どうかご了承下さいませ
主人公:ヒロ
追放側:ジョウド 上級剣士。パーティリーダー。ヒロが嫌い。ヒロと同じ村の出身
マンボ 盾戦士(タンク)力持ち。ヒロが嫌い
アリーシャ 魔術師兼、治癒師。ジョウドの彼女。ヒロが嫌い
ナナシ 暗殺者。ヒロが嫌い。本編には名は出てないが仮の名としてキリカと名乗っている
※名無しだからナナシではなく、そういう名前で暗殺者ギルドでの通り名
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- いつもの出だし -
「悪いが…おめーはクビってことで」
「ええ!?…何でだよ」
「わからないのか?…これだから
故郷の村から一緒にパーティを組んで来たってのに、道中の町に至る道で俺は突然クビをいい渡された。不満に思い聞き返すが、リーダーである上級剣士のジョウドはこんなこともわからないのか!?…と舌打ちをしてくる。
「お前がパーティの役に立ってないからだよ。おら、あっちに行きな!…しっしっ」
(てか顔にぶつかったら怪我するだろうが…)
慌ててごつい手を躱して後退ると、気配を消していた何者かが肩にぽんと手を乗せてこう囁いてくる。
「はいお疲れさん。故郷に帰ったらうちらは元気にやってるって言付け宜しく!」
そして、だん!と地面に叩きつけられる。彼女は…キリカは力が無い癖に、暗殺者の敏捷性を生かした動きで自分より体格に勝る者でもこうして地面に叩きつけたりできる訳だ…
「ぐは…」
顔から地面に叩きつけられた俺は地面にキスをする羽目に遭う。
「あらあら…ヒロさん地面がお好きでしたの?」
見上げると、リーダーの隣で嘲笑を上げているのは魔術師兼、治癒士のアリーシャだ。リーダーとデキてると噂を聞いたことがあるが…まぁ興味が無いのでスルーしていた。が、わざわざ腕を絡めて見せつけている所を見ると、本当らしいなということがわかる。
「…ってぇな。つか
このパーティが他に
「本気だ。追放する…だが、その前に
(そんなことだろうと思ったよ…あれは入手するには高額だからな。未だに買ったりダンジョンで見つけることもできてないしな…)
ある物とは…「収納袋」だ。魔道具でもあり、見た目の大きさより遥かに大きな物でも中に納めることができ、重い物でも重量を感じさせることがない。
俺はナップザック程の大きさの収納袋を持ち、パーティ全員の予備の装備品と消耗品。パーティ共通の資産と資金を入れて持ち歩いている。それでもまだまだ余裕はある。だが…仮に今詰め込んでいる全てを荷馬車で運ぼうと思えば、軽く3台の荷馬車に分けて運ばざるを得ない。つまり、毎日中規模のキャラバンで運ぶこととなり、移動するだけで相当な費用が掛かること請け合いだろう。
「はぁ…これはうちの家宝だから渡せないっていってるだろ?…忘れたか?」
「ならばパーティ資金から代金を支払おう。寄越せ!」
ここまで話しが通じない奴だったか?…とは思ったが、実は家宝というのは嘘だ。わざわざバラすつもりはないが…
「だからさ…国宝級だから普通に買えないってのがわからんのか?」
暗にパーティ資金だけじゃ支払うのは無理だと突っぱねる。だが、
「なら、お前を殺せばうちらのもんだな?」
と、また背後から殺気が這い寄り…
ざくっ!
「ぐっ…がっ!?」
腹の横からダガーを突き立てられて昏倒する。そこは、致死の部位であり、ショックで即死間違いないとされていた。
「くくく…大人しく寄越していれば帰郷の路銀くらいはくれてやったものを…」
「アホだな。これだからポーターは…」
「ほい、頂きっと…行こか、リーダー」
「あぁ…じゃあなヒロ。天国か地獄かはわからんが…無事に辿り着けるように祈ってるぜ?」
「うふふ…
こうして、パーティから追放どころか収納袋であるナップザックを強奪された上に仲間と思っていた暗殺者によって殺される羽目にあるヒロ。
「道のど真ん中に放置しとくと通行の邪魔になるからな…よっと!」
「はっはっはっ…よくやったマンボ!」
「さ、次の町に急ごう。これ、私が持っておこうか?」
「宜しく頼むわ」
こうして、哀れなポーターを殺害という名の追放を行った冒険者パーティ一行は、次の町「ダスティー」へと急ぐのだった…。
- 蘇生するヒロ -
「………ぐっ…」
あれから数時間が経過し、そろそろ夕暮れといっていい時間になっていた。草むらに遺棄された筈のヒロの死体が動きだし、口から声と息が漏れ出た。
「…ったく酷い目に遭ったぜ。痛てて…」
横っ腹をダガーで貫かれ、即死状態だった筈のヒロ。アンデッドとして復活するには早過ぎるし、とてもアンデッドには見えない程に血色は良かった。
「あーあー…服が台無しだ。着替えないとな…」
ぼやきながらヒロはゆっくりと立ち上がる。背中に背負った
「まぁ…あいつらは自分で解体とかしたことないのに…できるのかね?」
やったこともない作業をやるような連中とは思えない。と思いつつ、ゴキゴキと体を鳴らして立ち上がった。結構な時間、地面の上で寝っ転がっていたせいで節々が痛むのだ。
(はぁ…持ってて良かったわ。まさか使うことになるとはな…それも味方の攻撃でとか。最悪だわ)
ボロっと崩れて胸から落ちて来たのは
(用心深いことで…服も着替えないとな。それにしても、スケドに当たって破壊されなくて良かった)
そんなことを思いつつ、俺はとあるスキルを行使して替えの服と予備のナイフを取り出した。
「
空中に魔法陣が浮かび上がり、そこに無造作に腕を突っ込むとヒロは目的の物を取り出した。それは、
「ふぅ…あいつら強引が過ぎるんだよな。ま、俺の手を離れたとあっちゃ1週間ともたないだろうけどな…ま、自業自得だ。俺は知ぃ~らないっと…」
1週間ともたないとは…それは1週間経過したことでヒロを文字通り棄てていった彼らの身に降りかかることで判明するだろう。それに彼らのせいでポーターギルドにすら所属できていないヒロは…
「名前を変えていちから再出発した方が早いかな?」
…と考える。復讐するにしても、ナイフを用いた戦いすらロクにできない身としては…返り討ちに遭うだけだろう。数少ない取り扱える刃物…ナイフは、狩った獲物の解体程度にしか使用したことしかないのだ。
家宝だったが危険な冒険に出るとあって両親に渡された
「さて…体も拭いたし動くか。…ん~、ここからだとダスティーって町の方が近いんだが…でもなぁ」
ジョウドたちのパーティもダスティーに向かっている為、同じ町には余り行きたくない。見つかれば最期…再びキリカによって殺されてしまう可能性が非常に高い。
「…仕方ない。戻るか」
街道まで出てきたヒロは進むか戻るか迷った末、戻ることを選択した。そして、
「俺以外の誰にでも
「はぁ…もうじき日が暮れるな…初めて
本来は死ぬだけのダメージを得た時点で瀕死の状況で蘇生するタイミングを選ぶことができるのだが、ショック死したも同然で意識を失っていた為、意識を回復するまで蘇生のタイミングが遅れただけだった。両親からは死を回避することができる物としか聞いてなかった為、詳細は知らないのだった。
「さて、
(手前で野営した方が良さそうだよな…)
と、現地の地形を思い浮かべるヒロ。本来は森林地帯の手前で野営するのだが、それはモノリス側の話しでダスティー側ではない。朝に立てばダスティーからモノリスへ戻る場合は野営することはないのだ。モノリスより手前の村から出発した場合は無理をしないでモノリスの町に泊まるのだから。
- 襲われている少女との出会い -
「ん…この辺でいいかな?」
森林地帯に入る手前の街道で立ち止まる。真正直に街道で野営する訳にもいかず、街道の左右どちらかに向かって野営に適した地形を探すことにする。
「う~ん…浅い洞窟とかあれば雨が降って来ても困らないんだが…」
代わりに先住の熊などが居ることもあるので別の危険がないこともない。取り敢えず左右を見比べ、斜面がありそうな右を進むことにした。
「…
周囲の気配を調べる生活魔法の「探知」…その派生上位魔法「
「味方になりそうなのは無しと…。ま、普通は灰色だけどな」
会ったこともないのに緑色アイコンの友好生物などは存在しない。居たら余程のお人好しの生き物だろう。この過酷な世界では、そういう存在から食われて消え去って行く。
「使えそうな洞窟はっと…ん、あれ?」
探査でサーチしている範囲は視界が通るか音が聞こえる範囲までだ。俺は目も耳もいい方なので、大体2kmくらいは有効範囲となる。尤も、音は静かっていう条件があり雑音が多ければ範囲は狭まる。視界にしたって夜や枝や草、霧などの自然現象などにより有効距離は狭まる。人によっては魔力を放射してアクティブソナーのように反響して返ってくる情報を脳裏に浮かべることもできる。その場合、薄く広がる魔力波の出力によるが、10kmくらいまで見える人もいるとか…。
「これ…若しかして…人が襲われてるか?」
赤色のアイコンが灰色のアイコンを追いかけている。その数は3:1で時々重なっていることから攻撃を受けながら撤退か敗走しているのだろう。
「はぁ~~~…ポーターの俺がやることじゃないんだろうけどなぁ…」
見てしまったものは見過ごす訳にはいかんだろうと、ヒロはくるりと向きを変えると道中見つけた大岩を収納しつつ今来た道を戻る。
・
・
「はっはっはっはっ…」
どうしてこうなったんだろう…あぁ、そうだ。朝寝坊して…昼間出発したのが悪かったんだ。途中の森の中では狼が群れているから、暗くなったら入らないようにしろって忠告されたっけ…失敗したなぁ~…。
がうっ!
「きゃあっ!?」
背後から敵に飛び掛かられ、背中に衝撃を受ける。偶々、背中の
「とっとっとっ…」
躓きそうになって、何とか転ばずに立ち直ったと思ってたら…すっかり周りを狼たちに囲まれていることに気付く。フォレストウルフ…1つの群れで大体4~5匹居ると聞いていたけど見えているのは3匹。群れとしては小規模だけどあたし1人を狩るには十分な脅威だ。
「ううう~、やばいやばい…どうやってこの状況を切り抜けよう…」
いいながら小盾を構えて
「ふえぇっ!?…順番に来るんじゃなかったのぉ~っ!?」
予想に反して狼が3方向から一斉に飛び掛かって来て私は「もう駄目だっ!!」と目を瞑り、足から力が抜けたのかしゃがみ込んでしまう…だけど、狼たちはあたしを襲うことは無かった。何故ならば…
「…あれ?」
いつまでたっても何も起こらない。というか、さっきまで狼たちの唸り声でうるさいくらいだったのに、今は静かで時々風に撫でられた草の騒めきくらいしか聞こえない…。ぎゅっと瞑っていた目蓋を、そ~っと目を開けてみると…
「…え、なにこれ?」
狼たちが飛び掛かって来た3方向に、何故か大きな壁?…があった。いや、壁にしては丸みを帯びているこの物体はよく見ると…
「これは…大きい…岩?」
不審に思いつつ、ゆっくりと立ち上がって目の前に鎮座している岩?の塊を1つ1つ見てまわる。信じられないけど、こんな物が偶然転がって狼を圧し潰した…なんて考えられないし、上から押し潰した…なんて以ての外だ。
「襲って来た狼たちは…何処に?」
あの状況からいって、何か途轍もなく強いモノが現れたとしても、あたしにぶつかりもせずに逃亡なんてできる筈もないだろうし、仮に逃げだしたとしてもまだ足音なんかが聞こえる筈なんだけど…ん?
「岩の下から…これは血?」
よく見れば、岩の下から赤い血が滲み出ていた。例えば…上から大岩が狼を圧し潰して噴出したって感じの…
(まさか?)
そこまで考えた所で、誰かが近付いて来るような気配がして脊髄反射でそちらを向いて迎撃態勢に入ってしまう。多分、まだ狼襲撃で気分が昂ったままだからだと思うけど…。
・
・
(どうやら、間に合ったようだな…)
俺は
どがっ!x3
きゃいん!x3
今まさに3方向から獲物目掛けて飛び掛かっていた狼だが、いきなり上から落ちてきた大岩によって圧し潰され、断末魔らしい間抜けな悲鳴を残した。まさに座標的にもタイミング的にもドンピシャだった。
(ふぅ…見た感じは大した怪我もしてないようだし…良かった。間に合って…でも、まぁ、一応説明をしておいた方がいいよな?…変な噂が立っても困るかもだしな…)
森林地帯で落石とか、大した山も高い斜面も無いのに妙な注意喚起でも出されたら通過する人たちに無用な警戒心を抱かせるとか、申し訳ない気分になってしまう。俺は走っていたペースを落としながら蹲っていた人に近付いて行ったのだが…
(あれ、岩に気付いたのか…うーん、どうやって説明したらいいだろうか?)
ペースを落として歩いていると、こちらに気付いたようでこちらを見て…何故か盾を剣を構えてこちらを睨んでいる。
(あ、あれ?…ひょっとして警戒、されて…る?)
どーしてこーなった!?…と、俺は敵対の意思は無いよ~?…と、両手を上げてその場に立ち止まるしかなかった…
(武器は持ってないし、両手を上げてれば大丈夫…だよな?)
・
・
(あれ?…両手を上げて立ち止まった…これって…)
敵対意思が無い…というポーズだと気付くのに、たっぷり数秒掛かった訳で…腰が抜けたかのように、その場にへたり込んでしまうあたし。恐らくこの落石…魔法?…を使って助けてくれた人なんだと、何となく感じて…力が抜け過ぎて漏らさなかったよ…股間が緩い女と思われなくて良かった…。ただ…そのまま気絶するとか…余程疲労してたんだと思うけど…情けないな、本当…
がくり、と倒れ込んでしまう少女。そこにヒロが辿り着き、
「あの…大丈夫ですか?」
落とした大岩の真ん中の…フォレストウルフに襲われていた女の子の無事を確認してたんだが、いきなり倒れてしまい…かといって見も知らない異性の体に触れていいものか…と悩んでいたのだが。
あお~ん…
遠くから狼の遠吠えが聞こえてきた…いや、普通の人間に聞こえるかどうか、といった音量なのでまだ接近までには時間的猶予はあると思うが…
「血の匂いに惹かれて来るかも知れないしな…」
という訳で、緊急事態という建前で女の子を担ぎ上げ…ようとして武器防具が重かったので除装させて貰って収納袋に収納し、ついでに腰に装備していた各種薬瓶ホルダーも外して収納した。
(この子、すげー力持ちなんだなぁ…)
薬瓶だけでなくちょっとした道具類もホルダーに収まっていて結構な重量だったのだ。無論、背負い袋も外して収納した。こうなったらと革鎧も除装して収納し、ようやくヒロが背負えるくらいの重量になったのでよっこいせっと背中に背負ったのだが…
(ぐはっ…こ、この柔らかい双丘はぁっ!?)
背中に当たる、柔らかい塊が2つ…そんな生まれてから異性を背負ったことがないヒロにとって桃源郷が背中に生まれ…
(いや、それどころじゃねーっての!!)
と、再び
- 安地探し -
だがヒロは
「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」
息が上がり、汗だくのヒロ。背中に少女を背負っていて胸がどうの…という考えは既に抜けており、迫りくる脅威から自身と少女をどうやって隠すかだけに集中していた。
「…
静止し、呪句を唱える。生活魔法は静止した状態でないと効果を発揮しない。専門の聖職者の聖属性魔法ならば移動しながらでも効果があるようだが、劣化版といわれる生活魔法は殆どが静止した状態でないと発動しないのだ…故に戦闘には向いてない。
ぱああ…
凡そ数秒の間光り輝き、その輝きが収まると低下した体力が半分程回復する。
「ふぅ…怪我をしてなかったから体力が大幅に回復してくれたか…」
少女を背負っていた為、全快とはいかず半々の回復に留まったようだがこの際問題は無い。要はヒロ自身が動けるようになるのが肝要だからだ。
「う…」
不意に声が背後の人物から漏れる。体力回復の作用で目が醒めたようだ。
「こ…こは…?」
見えないが、顔を上げて左右を見回しているらしい挙動が感じられる。そして
ふにゅんふにゅん…
という擬音が聞こえてきそうな柔らか双丘が押されたり離れたりして、赦されるなら
ふぉおおおおおお!!!
と叫びたいヒロだったが、ぐ…と我慢して静かに問い掛ける。背中の少女に…
※変態仮面かっ!w
・
・
「お、お嬢…さん、大丈夫、ですか?」
ジョウドが聞いていたら爆笑して腹を抱えて転がるだろう臭いキザっぽい台詞を…噛みながらもいい切った現在進行形で走っているヒロ。その声を、今まさに背負っている人物から聞こえた…と判断し、少女は答える。
・
・
(えと…此処は…何処…私は…だ…じゃない!)
目覚めてから曖昧だった意識がはっきりと覚醒すると、身も知らずの異性の背中に背負われている事実を今度こそはっきりと自覚し…要は、羞恥心がびっくりした心を埋め…
「えええ、えっと!…すすす、すみません!…あの…降ろして貰っても…いいでしょう、か?」
と、尻すぼみになりつつ背負っている人物に問うが…
「えと…今、絶賛…狼たちに追われてるんですが…走れますか?」
「へえっ?」
といわれるが…狼の姿も声も聞こえてない。本当だろうか?…と思ったが、後ろを振り向いた彼の目は真剣そのものだ…だが。
「本当…ですか?」
そう問いつつも、自身の体をチェックするが…軽くする為なのか…装備は全て。服以外は装着してなかった…確かに、逃げるだけならあの重い物は不要だが…
(全部捨ててきちゃったのか…はぁ…あれ…整えるのに結構お金掛ったんだけどなぁ…)
と思っていると、今も走っているお兄さん?から返答がある。
「はい…。遠くて…見えない…ですが…。現在…進行形…で…追われて…います」
流石に夕暮れも地平線に沈み、辛うじて月明かりで仄かな明かりで地面が照らされているだけの状況では…「狼に追われている」といわれても…昼間でも尚、薄暗い森の中では視認できない。木々の枝の葉の隙間から漏れている月光でしか照らされてない地面。そして遠くから迫って来る狼なんて…
(え?…この状況で見えている?…
彼女は身を起こし、後方を見る。そしてなるべく静かにして聞き耳を立てる…そうすることで、後方からの音を集中して聞き取っていると…
はっはっはっはっ…
がささささ…
確かに、こちらが立ててない音が…ホンの僅かにだが聞き取れた。
(どうやら嘘を付いてる訳じゃないようね…)
だが、こちらは重荷を背負っている
そして自身もフォレストウルフ3体相手では相手にならなかった
(恐らく…後数分もしないくらいの時間で捕まっちゃうだろう…この人を巻き込んだ形で…)
そうなれば、あの忌々しいフォレストウルフに餌を2人分献上する形になる…獣を狩るハンターである自分だけなら…いつかはそうなっても…いや、食べられるなんて物凄い嫌だけど…でも、一応は覚悟はできている。だけど…この人はどう見ても一般人だ。少しだけ土属性の魔法を使えるってだけの…
極限状態である少女は正常な判断ができていなかった。岩石落としができる魔法使いの何処が一般人だというのだろうか?…と。だが、その一般人と思われている彼…ヒロは唯の一般人ではない。冒険者でもないが、体力だけはその行動に何とかついていける
(そろそろ目的地だな…)
少女がそんなことを思っている間、ヒロは目的地を目指していた。探査魔法で周辺を調べ、向かい打つに際して有利な地形を探していたのだ。自分自身には戦う能力はないが…地形を利用してならやりようはある。
・
・
「よし…降りてくれ」
「えと…はい」
ストンと背中から降り立つ少女。そしてそこの洞穴に入って待機していてくれといわれ、素直に入って待つ。一応、先に洞穴に先住民が居ないか調べようと覗き込むが…
「その穴には何も居ないから安心していいよ」
といわれ、疑問に思っていると…
「…探知魔法って知ってる?」
と問われ、頷くと
「…まぁそういうことだから」
と、男性は歩き出す。
「…」
(まぁ、何も居ないというなら入って待ってるしかないか…)
何しろ逃げ出す為に荷物は全部捨てて来てしまったのだから…。武器も防具も無い、今の自分にはいわれた通り…邪魔にならないようにするしかない。そう思いつつ洞穴に入り…外が辛うじて見える位置に座り込む。
体育座りで座り込み、月明かりで仄かにしか見えない外を凝視していると…あの男性があちこち歩き回り、何かを集めているように見えるが…その手には何も持っておらず、洞穴の外に立つと…いきなり丸太が現れ、積み上げられている。
(え?…今、確かに何も持ってなかったよね?…ええっ!?)
だが、丸太が積み上げられている。確かに筋肉で少々重い自分を背負って走れるくらいだから体力はあるんだろうけど…それ程腕に筋肉が付いてるようには見えなかった男性が、あれ程の大きな丸太を持ち歩けるだろうか?…それより、見えない所から丸太を積み上げていく事実に思考が停止する…
・
・
「っと、これくらいでいっかな?」
その辺の木を収納して丸太にしてから防御壁として積み上げる。収納袋ではなく、
ひとつ…収納袋では地面や大きな物に固定された物品は収納できない。収納可能な大きさならまとめて収納できるけど、
ひとつ…収納袋では生きているモノは収納できない。だが
ひとつ…収納袋では出し入れしかできないが、
「じゃあ…待たせたな?」
ヒロが振り返ると…見た範囲だけでも10数頭のフォレストウルフが唸っていた。
そして…ニヤリとするヒロに向かって一斉に飛び掛かる…だが、奇襲するなら兎も角、正々堂々…真正面から飛び込んで来た狼が彼に勝てる道理は…無い。
ぎゃうんっ!
きゃいんっ!!
どさどさ…と、下半身だけになったフォレストウルフたちが飛び掛かった勢いで地面に転がっていく。
そして半数以上が動かなくなった骸と化した後…流石に敵わないと判断した残りが逃亡を開始する。だが、後で奇襲されることを鑑み、ヒロは逃亡しているフォレストウルフも可能な限り…下半身を収納していく。
「…これで…全部かな」
上半身と下半身だけとなったフォレストウルフだったモノは総数が22体。襲って来た総数も22体。ボス個体は最初の迎撃で既に処分済み。問題は無いだろう…この辺の勢力図が書き換わる可能性はあるだろうが…今すぐどうこうという訳でもないと思う。
「ちょっと…疲れたな」
残りの半分を収納して…収納袋の方に移しておく。後で討伐の報告にいきなり何もない空間から出す訳にもいかないし…
「…ふう。疲れたし、俺も中で休むか…」
丸太を収納して入り口を人1人分だけ開けて中へ入ると…
「あ…生きてた」
と、失礼な第一声を放つ少女が1人。いや、それどーなんだ?…とは思ったが。
「あはは…何とかやっつけたよ」
といって、俺は収納袋から寝袋を取り出すと…
(そいや自分の分しかなかったっけ…)
と思い出し、仕方なく彼女に寝袋を譲り、自分自身は毛布を取り出して…壁に背を預けて毛布を腹に掛けて寝ることにした。
━━━━━━━━━━━━━━━
長過ぎるので一旦ここで切って見た。
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