第7話

さて、部屋に戻ってきたが...




もう一度タブレットを確認してみよう。




俺は、【手札確認】の項目をタップした。






【4,10,K】【密告:絶対】





そういえば、キングには能力があったな...。




Kの部分を押すと、新たに表示が出た。




【能力:概観を使用します。】




【Now loading...】









【ジャック→桐江 茜、猪狩 紬希】




【クイーン→是本 真理、飯伏 蘭丸】




【キング→東雲 直斗、飯伏 蘭丸】




【ジョーカー→早坂 杏珠】






...なるほど...、これは便利だな。




飯伏は絵札を2枚持っていて一見手強いが、


裏を返せば、残り1枚を当てるだけで、それがいちばん若いカードになるから、簡単に密告できるということだ。




つまり...向こうからの脅威は間違いなく俺...というわけか。





考えを回していると、部屋のドアがノックされた。誰だろうか...




俺は、ドアを開けてみた。





アンズ「あ...ごめんなさい、始まったばっかりでお邪魔して...」




ナオト「いや、気にしないでいいよ。それで、なんの用?」




ナオト「あーいや、そこの机で話そうか。」




アンズ「はい、ありがとうございます...」





俺たちは、椅子に座った。





ナオト「どうしたの?急に部屋に来て。」




アンズ「実はさっき、食堂から戻ろうと思ったら、飯伏さんに呼び止められたんです。」




ナオト「飯伏に?」




アンズ「はい。それで、自分がキングを持っていて、東雲さんがキングのカードを持っていることを教えてくれたんです。『気が向いたから教えたけど、どう使うかはキミの自由だよ〜』って言っていました。なんで教えてくれたのかは分かりません...。キングを持っているのは本当なんですか?」




ここで隠しても仕方がないだろう...




それにしても飯伏のやつ、なんでそんな真似を。




ナオト「あぁ、本当だよ。俺はキングの能力で全員の絵札が分かる。飯伏も俺と同じキングを持ってるし、早坂さんがジョーカーを持っているのが分かるのもキングの能力だよ。」




アンズ「ほんとに分かるんですね...」





しばらくの沈黙が流れる。




早坂さんが口を開いた。





アンズ「あの、それで、本題なんですけど...」





アンズ「...思ったんです。この能力を有効活用できないかって。」




ナオト「ジョーカーの能力のこと?」




アンズ「はい。この【回生】の能力は、他の3つの能力と違う点がひとつだけあると思うんです。」




アンズ「ほかの3つの能力は、“相手を殺すか自分を守るか”のふたつの使い方がありますが、唯一この【回生】だけ、“相手を救う”ことができると思ったんです。」




ナオト「なんだって...?」




アンズ「言葉通りの意味ですよ。今ここで、東雲さんが、私に正しいカードを密告するんです。そうすれば、東雲さんは、【密告:自由】になることができるんです。」




なるほどな...だが、本当にそれでいいのか...?




ナオト「確かにいい提案だと思う...けど。」




アンズ「けど、なんですか?」




ナオト「その前に聞きたいことがあるんだ。」




ナオト「君は、密告する正しいカードを俺に教えないといけない訳だけど、それはどうするつもりなのかな。俺はジャックもクイーンも持っていないんだ。君のカードを知ることはできないし、君から教えてもらっても、悪いけどそれを信用することはできない。もし教えてもらったカードが嘘なら、俺は死ぬんだ。俺は、俺は...あいつのためにも。」




アンズ「いやいや、もちろん見せますよ?」




ナオト「...え?なんて」




アンズ「見せますって、私の手札。」




そう言うと、早坂さんは、おもむろにタブレットを取り出して、なんの迷いもなく画面を見せてきた。




【5,8,Joker】【密告:自由】




アンズ「...私の手札です。信用してくれましたか?」




ナオト「何も俺は、そこまでしろとは...」




アンズ「いや、いいんです。このゲーム、きっと仲間が多い方が有利なんです。」




ナオト「仲間?」




アンズ「はい。信頼の置ける人と手を組めば、このゲームで生き残るのも、そう難しいことじゃないと思うんです。」




ナオト「なるほどね。でも、なんで早坂さんが俺にそこまでしてくれるんだ?それに、俺が君の手札を周りにバラしたら君は...」




アンズ「私、東雲さんのこと信頼してるんです。たぶん話すのこれが初めてですけど、そういう事じゃなくて。その、神木さんをなくした時の東雲さんの顔みて、『この人は信頼できる人だ』って思っちゃったんです。まぁ要するに、直感ってやつです。」




ナオト「直感って...。まぁ、俺は君を裏切る気持ちなんてさらさらないけど、注意はした方がいいぞ...」




アンズ「えへへ、分かってますって。それに私、東雲さんのこと...」




ナオト「ん?」




アンズ「あっいえ、なんでもないです!今は、生き残ることを優先しましょう!」




なんだったんだ...?




アンズ「密告があると放送が流れるみたいですね。どんな放送かは分かりませんが、今ここで密告してしまうと、私たち2人のどちらかがジョーカーを持っていると推測されてしまいます。だから、私は今からロビーに行ってみんなと合流します。もちろん、さっきした話は、秘密ですよ。東雲さんは、私が部屋を出てから10分くらいしてから、私に5のカードを密告してください。」




ナオト「...あぁ、ありがとう。...ところで、さっきのは?」




アンズ「いや、それはなんでもないですっ!それじゃ、また会いましょ!」





そう言うと、早坂さんは足早に部屋を出ていってしまった。




とにかく俺は、これから10分後に、早坂さんを5のカードで密告すればいいんだな...。








10分が経過した。


俺は、手筈通りの操作を進めた。




そして.....








<ジョーカーの保持者が密告されました。>







放送だ...。




名前が出なくてよかった...。




とりあえず一安心した俺は、表示を確認した。





【密告:自由】




よかった、変わってる。


生存条件を満たした...ってことだよな。




俺は、早坂さんに感謝を伝えるべく、部屋を後にした。





...そのとき......。




















<車田 京介 が、皇 麗奈 の密告に失敗しました。>







それは、突然にして訪れた。










[生存者、8名。]

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