第6話

他のメンバーも、だんだんと食堂に顔を出し始めた。




キョウスケ「よう、ナオトっち!風呂上がったぜ!朝ぶりだなぁ。どうだ?少しは元気出たか?」




ナオト「はい、おかげさまで。」




キョウスケ「そうかそうか!それにしてもいい湯だったぞ〜?まぁ今日も頑張ろや!」




車田さんは、笑って話しかけてくれた。




廊下の方から声がした。




ランマル「いやいや猪狩さん、そりゃないっすよ〜」




ツムギ「なーに言ってんだ!女の世界にもいろいろあんだよ!変に希望もつもんじゃねーぞ?」




ランマル「そんなもん持ってないって〜」




何の話をしてるんだか。


俺には気づかなかったらしく、2人は席の方へ行ってしまった。飯伏くんと目が合った気がするが...恐らく気のせいだろう。





また声が聞こえてきた。




マリ「ほら、着きましたよ、早坂さん?」




アンズ「うぅ〜、まだ眠いです...」




マリ「そんなこと言ってないで!ご飯食べないんですか?」




アンズ「食べますけどぉー、、、」




白雪さんと早坂さんが手を繋いで食堂に来た。


早坂さんはまだ寝起きなのか、眠い目を擦っている。




アカネ「これで全員...揃ったみたいね。」




マサミチ「そうみたいだね。」




そうか、これで全員...か。





ランマル「ね〜猪狩さん、ここ食堂だよね〜?どこに食べ物があるのかな?」




ツムギ「さぁね。んでも、そこの券売機でなんか買うんじゃねーの?」




ランマル「んー。そうなんだけどさぁ」




俺は、券売機を見て、不自然なことに気づいた。




レイナ「ない...わね。値段が。」




食べ物の名前は書いてあるのに、肝心の値段が書かれていないのだ。




キョウスケ「なんだよ、これじゃ買えねーってのか?せっかく腹空かせてきたのによぉ!」




マサミチ「まぁ、そうは言っても、僕達お金なんて持ってないしね。」




キョウスケ「確かにな...。どうすりゃいいんだこれ?」




案内人「何か、お困りですか?」




ツムギ「うわっ!なんだよ、脅かすなよな!」




案内人「あぁ、券売機のことですね。本食堂、なんと全品無料になっているのです。」




アカネ「へぇ、驚いたわね。ところで、買った食券はどこへ持っていけば?」




案内人「あちらの“食券受付”と書いてあるところまでお持ち頂ければ、作り置きがございます。もちろん温めますよ。」




キョウスケ「げっ、作り置きかよ!いつのやつだ?」




案内人「今朝の6時半にお作りしました。」




キョウスケ「お...おうそうか、なんか微妙だな...」






そして俺たちは、小一時間くらいかけて、朝食を食べ終えた。因みに俺の朝食は、“ハンバーグ定食”だった。味は...かなり美味しかった。





アカネ「それにしても、東雲くん。朝からハンバーグだなんて、昨日のこともあったのに、よくそんなに入るわね。」




ナオト「はは...ヤケ食いってやつですよ。」




アカネ「...そう。まぁ、無理はしないことね。」




時刻は、8時半をさしていた。




食券受付のカウンターを飛び越して、ノエルが姿を現した。




ノエル「よーし、いい朝だね!昨日はあれだったけど、今日からは楽しくデスゲームだ!んじゃ、さっそくメインゲームのルール説明、始めちゃうよ!」




アカネ「とうとう、始まるのね。」




ノエル「うん?そこのキミ!なんでそんなに嬉しそうなのかなぁ?たしか、ランマル...って言ったっけ?」




ランマル「あ、ボク?いや、なんにもないかな〜。強いて言うなら、楽しみってだけ。」




ノエル「メインゲームのことかな?」




ランマル「もちろん♪」




こいつ...やっぱり是本さんたちの言っていたことは、本当だったのか...




ノエル「はっはっはー!そりゃいいや!キミ、いいね!オイラもノってきちゃったぁ!んま、そゆことで、改めて説明開始します!終わったらちゃんと質問の時間もあげるから、今はみんな黙って聞くように!」




ノエル「みんな、昨日のタブレットは今日も持ってきたよね?今日からもそれ使うから!...うんうん、みんな持ってるみたいでよかった!それじゃ、見てみようか!」




俺は、タブレットに目を落とした。


...表示が変わっている。





【NG行動】【密告】【手札確認】





ノエル「昨日とは違うだろ?それが、メインゲームの画面だ!まぁ、説明してくね!」




ノエル「それじゃあ、1番右の【手札確認】を押してみようか!」




俺は、言われた通りに従った。




【4,10,K】【密告:絶対】




ノエル「今表示されてる番号もしくはアルファベットは、キミたちの“手札”だ!それ、NG行動以上に秘密にしなきゃいけないから、みんな誰にも言わないでね〜?」




ノエル「まぁトランプのカードなんだけど、それ。当初の計画では普通にカード配ろうとも思ったんだけどね〜?交換とか廃棄とか起きたらめんどくさいから、こうやってデータ化しました!」




ノエル「そして!そのトランプのカードは、エースからキングまでの13種類が2枚ずつ、それとジョーカーが1枚の計27枚を、9人に3枚ずつランダムに配っています!」




ノエル「そして、ここからが重要なポイント!このゲームの大きなルールだよ!さっきの、項目が3つある画面に戻って、今度は【密告】を押してみよう!」




ノエル「そこに自分以外の8人の名前と顔が出てきたはずだ!まぁ好きに選んで誰かの名前を押してみてよ!」




俺はなんとなく、飯伏くんのボタンを押した。




【どのカードを密告しますか?】


【A,2,3,4,5,6,7,8,9,10,J,Q,K,】




ノエル「それじゃ、密告のルールを説明するね!ここがいちばん重要だから、よーく聞くように!」




ノエル「密告とは、言わば処刑ボタン!その人が所持している3枚のカードのうち、いちばん数字が若いカードを見事選ぶことができれば、密告した相手を処刑できます!まぁ、首輪の装置が作動するってことだね!」




ノエル「それでもし、密告に失敗した場合!まぁ、自分が密告した数字が、相手のいちばん若い数字と一致していなかった時は〜!


なんと、密告した本人が死んでしまいます!気をつけてね〜」




ノエル「持ち主が死んだタブレット端末には、今まで通りその人のNG行動と、今回から追加で“手札だったカード”が公開されます!ちなみに、密告失敗で死亡した人のタブレットには、“密告したカード”も表示されるよ!」




ノエル「それと、大事なルール2つ目!ジャック、クイーン、キング、ジョーカーをお持ちの皆さん、よく聞いてくださいね!その4種類のカードは“絵札”と呼ばれ、それぞれに特殊効果があります!」




ノエル「まずはジャックとクイーンについて!」




ノエル「ジャックの特殊能力は【透視】です!相手が持っている3枚のカードのうち、ランダムで1枚、そのカードが何なのか分かります!つまり、【透視】を使って1(エース)を引き当てられたなら、もう確実に密告成功できるわけです!運が良ければ最強のカードとも言えるでしょう!」




ノエル「クイーンの特殊能力は【尋問】!このカードの能力を使われてしまった相手は、YESかNoで答えられる質問をされた際、否応なしに、強制的に、意思に反して、正直に質問に答えさせられてしまいます!つまり、嘘をつけないということ!使い方次第では、相手の手札の中身がほぼ分かってしまうかも知れません!」




ノエル「そして、ジャックとクイーンの使用回数には制限があります!それぞれ、3回までになります!3回使い終わったら、ただの数字が大きいだけのカードになるから、使い所は気をつけた方がいいよ〜」




ノエル「次に、キングの説明!キングの特殊能力は、【概観がいかん】!キングのカードを持っている人は、4種類の絵札が誰の手にあるか、すべて把握することができます!もちろんキング同士の2人は、認識し合えるってことだね〜。ジャックやクイーンの持ち主を意図的に避けることもできるね!」




ノエル「それじゃ、最後にジョーカーの説明!みんなに配った27枚のうち、1人だけに与えられた特殊能力は、【回生かいせい】!」




ノエル「なんと、ジョーカーを持っている人は、自分の死を2回も回避できる!例えば、自分の手札でいちばん若いカードを密告されても、死なずに生き延びることができるんだ!ちなみに、同じ人に何回も密告することは出来ないようになってるから、安心してね〜」




ノエル「それじゃ、大きなルール3つ目!これも割と重要なルールだからよく聞いてね〜」




ノエル「【手札確認】の項目をタップして!そしたら、持ってるカードと、密告がなんちゃらって出てくるでしょ?まぁ具体的に言うと、【密告:絶対】と【密告:自由】の2種類があるんだ!


この2つの違いは、カードの数字の合計が15以下か16以上かで決まる!例えば、手札が【3,4,7】なら、合計は14!15以下だから、【密告:自由】になる!逆に、手札が【5,7,Q】だったら、合計が24になって、16以上だから、【密告:絶対】になるんだ!」




ノエル「【密告:絶対】の人は、その名の通り、絶対に密告しなければいけません!密告しないでいると、いつか死んじゃうから気をつけてね〜!


逆に、【密告:自由】の人は、密告をしなくても死にません!自分で他人を殺さなくてもいい代わりに、所持手札の合計は少ないから、カードを推測されやすいので、注意が必要だ!」




ノエル「じゃあ最後に4つ目!“生存条件”について!」




ノエル「生存条件はただ1つ!密告をすること!密告をすると、【密告:絶対】の表示が、【密告:自由】の表示に変化します!『表示が【密告:自由】になっていること』こそが、ただひとつの生存条件になります!」




ノエル「このゲームには、10時間のタイムリミットがあります!そして、密告によって死亡者が出た場合、タイムリミットはもう一度、残り10時間にリセットされます!」




ノエル「そして、タイムリミットが来るまでに、表示が【密告:絶対】のままの人は、タイムリミットの瞬間に死亡してしまいます!」




ノエル「つまり、死にたくなければ、タイムリミットを延ばすために、10時間以内ごとに、誰かが死ななければいけないということです!」




ノエル「説明は以上だよ!なにか質問はあるかな?」




アカネ「...大方は分かったわ。仮に私がジョーカーを持っているとして、カードの合計にはどうやって含まれるのかしら?」




ノエル「ジョーカーのカードは0でカウントされるよ!【3,8,Joker】の手札だったら、合計は11!密告はしなくていいことになるね!」




アカネ「なるほどね。0っていうことは、例えば3人の人から1回ずつ密告されたら、すぐ死んじゃうんじゃないの?」




ノエル「いや、【密告】の画面を見ればわかると思うけど、ジョーカーでは密告できないようになってるんだ。」




アカネ「あら、本当ね。じゃあ、私からは大丈夫よ。」




ノエル「他には、誰か居るかな〜?」




ランマル「はいはーい、ちょっといいかなぁ?」




ノエル「どうぞ?」




ランマル「このゲーム、いつまでやるの?まさか、最後の1人になるまでやるつもり?まぁ、ボクはそれでもいいけどさ。」




ノエル「いや、メインゲームは、残り3人になるまでだね〜。最後の3人になれるように頑張ってね!」




ランマル「ふ〜ん?まぁ、分かったよ〜」




ノエル「他は大丈夫そうかな?まぁまたルールで分かんないこと出てきたら、教えるから呼んでね〜」




ノエル「あと、もし死人が出たら、放送流れるよ〜。そんじゃ、オイラはこの辺で!」




そう言うと、ノエルは食券受付のカウンターの向こうへ飛んでいった。







...随分と複雑そうだな...。




自分の中で整理してから、部屋に戻るとするか...












・密告をすることで、【密告:絶対】が【密告:自由】に変化する。





・10時間後にくるタイムリミットまでに、【密告:自由】になっていなければいけない。





・死亡者が出れば、またそこから新たに10時間のタイムリミットが始まる。





・ジャックは相手のカードをランダムに透視できて、クイーンはYESかNoかの質問に正直に答えさせられて、ジョーカーは死を2度回避できる。キングはそれらの絵札の持ち主を把握することが


できる。





・相手が持っているなかでいちばん数字が小さいカードを密告すれば、相手は死亡する。


誤って密告した場合は、密告した本人が死亡する。





・密告されて死亡した人のタブレットには、NG行動と手札が表示される。密告失敗で死亡した人のタブレットには、それに追加で、密告したカードも表示される。










要点はこんな所か...。




それじゃあ、一旦部屋へ戻ろう。




俺は、自分の部屋へと向かった。






[生存者、9名。]

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