短冊は思いをつなぐ
桜飴彩葉。
なかなおりできますように
僕は昨日、ゆきちゃんと喧嘩した。
ゆきちゃんとは小学生になった時からずっと同じクラスで、僕の仲良しな友達だ。同じ班だから、毎日一緒に学校に行く。そして学校が終わったら、いつもの仲良し4人組で集まって、公園で遊んだり、家でゲームしたりしている。
僕は今まで誰とも喧嘩をしたことがなかった。でも昨日、初めての喧嘩をゆきちゃんとした。
「私のクマさんにジュースかけたのはるくんでしょ?」
昨日みんなで遊んでいる時、ゆきちゃんが僕に大きな声で怒鳴ってきた。
でも、僕は何もやっていない。
「ぼくじゃないよ」
「うそ、だってオレンジジュース飲んでたのはるくんだけじゃん!」
「僕じゃないって」
「じゃあ誰なの? 2人も違うって言ってるし、はるくんしかいないじゃん! シミになったらどうするの?」
「知らないよ。そんなに言うなら新しいの買って貰えばいいじゃん、僕はやってない」
何回言ってもゆきちゃんは信じてくれない。僕は本当に何も知らなかったから、ついイライラして大きな声を出してしまった。
「私も知らない。帰る」
急いで謝ろうとしたけど間に合わず、ゆきちゃんは涙目になりながらクマのぬいぐるみを抱え、走っていってしまった。後の2人もその場にいたけど、2人とも、言い合いをしてる僕たちを見てるだけだった。
こんなモヤモヤした気持ちで遊ぶのも嫌で、2人と話し合って、早く家に帰ることにした。
何もしていないのは本当のことだけど、言い過ぎてしまったと僕は後悔した。ゆきちゃんがクマのぬいぐるみを大事にしているのは知っていたはずなのに……
それから1日経った。僕はゆきちゃんに謝りたいと思った。今日は日曜日で学校は休みだけど、明日になればまたゆきちゃんと会うことになる。その時にはちゃんと謝って、また仲良しに戻りたい。
でも、恐い。ゆきちゃんに許してもらえるかな、またみんなで遊べるかな。僕の心はそんな不安な気持ちでいっぱいだった。
「今日七夕の日だから、お願い事してみたら?』
この話をお母さんにしたら、お母さんが小さな紙とペンを渡してきた。
「これは短冊って言ってね、七夕の日にこれに願い事を書いて飾ると、願いが叶うんだよ」
お母さんはいつもの優しい声でそう言った。
七夕、学校で先生が話していたから知っている。
僕はお母さんからもらった短冊に、願い事を書いた。ちょっと文字が汚くなっちゃったけど、何とか読める。
僕はそれをお母さんに渡して、飾ってもらった。明日絶対ゆきちゃんに謝ろう。そして、絶対前みたいな仲良しに戻ってみせる。
「ゆきちゃんとなかなおりできまづように」
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