final war.

華月椿

夢は枯野を かけ巡る

右手で筆を持ち、吸い込まれるほど青い色をのせていく。

のせていくほどに、空白の世界は形のあると変わっていった。夢中になり、只管に塗っていく。

白いパステルをのせれば、綿菓子に見えるほど柔らかそうな物ができた。顔を輝かせて飛び乗り、千切ってみると味がないまま口の中で溶けて消えた。

少しつまらなそうに顔を曇らせ、先程自分が塗っていた真っ青な世界を見つめる。

汚いところなど一つもなく、ただ澄んだ世界が目の前に広がっていた。見下ろすとただ何も言わずに揺れる明るい緑が広がっていた。

何かは分からないが、さらさらと音を立てていて耳に心地よい。

色を塗り終えると、空白の世界は瞬く間に美しい草原の世界になった。

塗り終えた青い世界は「空」、浮かぶ柔らかいものは「雲」となり、揺れる緑は「草」となった。

草原の世界を創り出した少女は―――その時世界を創り出したからか、所謂「神」と呼ばれるものとなった。


それから何億何兆もの月日が流れ、草原はほぼ無くなった頃。

空気は濁り、歩くものはガスマスクのようなものをつけていた。

悲鳴が各地に響き渡る。銃声も轟く。

かつてあったあの平和な、暖かな草原と空なんて消えたも同然だった。

倒れたビルがコンクリートを割り、その下敷きになった者の命をまた奪っていく。


神は嘆く。


嗚呼、あの時の希望に溢れた世界は何処へ行ったのだろう。

どうして、こうなってしまったのだろう。

自分の創ってしまった人間というものは、なぜここまで自分勝手なのだろう。


今日も、夢だと信じて眠る。

翌朝起き、世界の惨状を見るたびに神はあの時の世界を思い出し嘆くのであった。

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final war. 華月椿 @tsubaki0110

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