勘違い×勘違い

阿_イノウエ_

一 婚約破棄

【お前を】未来の国母を傷つけた大罪人について【許さない】

 1 クラウディオ

 立ったか?


 2 とある貴族

 王子殿下、何やってるんです?


 3 とある貴族

 きましたー


 4 とある貴族

 何ですか?面白そう


 5 とある貴族

 てか、未来の国母って誰ですか?


 6 クラウディオ

 集まってきたな!

 このスレは第一王子である私、クラウディオ・デ・スポレティーニが立てたものだ。

 皆には証人になってもらうために集まってもらった。

 未来の国母とは当然ヴォロンテ男爵の令嬢であるスザンナのことだ!


 7 とある貴族

 ああ、あの


 8 とある貴族

 殿下の婚約者ってクリスチナ嬢だったんでは?


 9 とある貴族

 スザンナ嬢って誰ですか?


 10 とある貴族

 》9

 7だけど、殿下が最近うつつを

 あ

 いや

 溺愛なさっている令嬢のこと


 11 とある貴族

 へえ


 12 とある貴族

 》10

 殿下の前で言うって

 勇敢な


 13 クラウディオ

 ええい!皆静かに!

 そのスザンナをいじめた悪女を呼んである

 なあ、お前がスザンナに嫌がらせをしたんだろう?クリスチナ・ディ・ヴェッリ


 14 クリスチナ

 わざわざ共有掲示板の方に呼び出されるから何事かと思えば

 一体何のことですか?


 15 クラウディオ

 知らぬふりをしても証言も証拠もでている

 見苦しいぞクリスチナ


 16 クリスチナ

 知らぬふりも何も本当に知りませんわ

 大体スザンナ嬢に私が何をしたって言うんです?


 17 クラウディオ

 お前が素直に謝れば、優しいスザンナは許すと言っていたのに

 残念だよクリスチナ

 これを見ろ

(切り刻まれた教科書や鞄の画像)


 18 クリスチナ

 これが何です?


 19 クラウディオ

 スザンナの鞄と教科書だ。私が見つけた時はすでにこうなっていた。

 魔法で直せるからと言って意地悪をされた事実にスザンナは深く傷ついている

 かわいそうに彼女は泣いていた

 彼女が虐めを受けていたと証言するものも多くいる


 20 クリスチナ

 まさか殿下はそれを私がやったと?

 馬鹿馬鹿しい。私がなぜ彼女にそんなことをするんです?


 21 クラウディオ

 お前は私の婚約者だろう

 私がスザンナを可愛がることに嫉妬したお前はその思いのあまり凶行に及んだ

 始まりは私の多情が原因だ

 すまなかった

 しかし虐めは許されることではない

 ましてや私の婚約者として未来の国母にもなろうとしていた者が!

 私はお前との婚約を破棄し、スザンナと婚約する!未来の国母には慈悲深い彼女こそふさわしい!

 そして、クリスチナ・ディ・ヴェッリ

 貴様を未来の国母をいじめた罪で国外追放の罪に処す!

 恨むなら醜い心を持った自身を恨めよクリスチナ



 *


 クリスチナは目の前に展開する共有掲示板の画面を見て唖然としていた。

 場所はヴェッリ公爵家領地の屋敷にある自室。クリスチナはシーズンではない冬の今、領地で勉強に勤しんでいた。

 我が国スポレティーニ王国では、領地を持つ貴族は基本的に春先から初夏の社交シーズン以外は、それぞれの家の領地にいるのが伝統である。

 ヴェッリ家の領地は王領とは隣り合ってはいるが、互いに広大な土地を有しているため近くはない。辺境よりは気軽に王都に向かえるが、決して通える距離ではなかった。

 だから、幼馴染である第一王子殿下に個人チャットで声をかけられても不思議に思わなかった。

 第一声で共有掲示板に誘導されるまでは。

 クリスチナは動揺する観衆のコメントを眺める。殿下は国中の貴族を集めたらしい。友人や知り合いから個人チャットで心配の言葉が飛んできている。そのどれもに言葉を直ぐには返せないで、クリスチナは物思いに沈む。

 ショックだった。

 殿下は私がスザンナ様に虐めを行ったと誤解しているらしい。仮にも幼馴染にそんな疑惑を吹っかけらえるとは。

 なぜそのような誤解が生じたのかは情報が少なすぎてわからないが、無実を証明しなければならない。

 それに、まさか未だに私が殿下の婚約者なんて誤解をしていらっしゃるとは・・・

 クリスチナは共有掲示板に言葉を載せるべく意識を集中させた。


 *


 67 とある貴族

 というか、クリスチナ嬢どこいった?

 》20からいないぞ


 68 クリスチナ

 ここにいますわ

 少しばかり動揺してしまって


 69 とある貴族

 動揺って


 70 とある貴族

 そんなまさかですよね?クリスチナ様


 71 クラウディオ

 ようやく罪を認めたかクリスチナ


 72 クリスチナ

 まさか

 やってもいないことを認めるわけがないでしょう?

 殿下、そもそも誤解があるようですけれど、私たちは婚約者ではありません


 73 クラウディオ

 は


 74 とある貴族

 婚約者じゃない?


 75 とある貴族

 え?でも殿下はずっと婚約者って言ってましたよね


 76 クリスチナ

 ええ

 殿下には何度も止めるようにお伝えしたと思いますが、結局やめていただけませんでしたね


 77 クラウディオ

 嘘を言うな!父王様とお前の父上が約束されていたではないか!お前も見ていただろう!


 78 クリスチナ

 そもそもそれが誤解なのです殿下

 父と陛下がされたのは所詮口約束

 家族しか入れない限定掲示板の冗談だったのです

 正式な書面が交わされていないことはちょっと調べれば直ぐにわかりますわ


 79 クラウディオ

 そんな

 しかし貴様も父王様も否定しなかったではないか!


 80 クリスチナ

 それは・・・

 陛下に止められていたのです

 その程度のことも調べ見抜けない者が国を支える王になるなどできるはずがないと仰せで


 81 クラウディオ

 うそだ

 嘘をつくな!クリスチナ!



 *


 まるで殿下の叫びが聞こえてくるかのようで、クリスチナは一瞬画面から目を逸らした。

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