第27話 婚約披露パーティーにて
一難去って。
先のディアスキア騎士団長の動きもあったので、ここらでローラとオスカーの婚約式をしようと言うことになった。
婚姻した事を公にして横槍が入らないようにするためである。
これは我が家ではなくロッテ側からの提案である。
今日はオスカーとローラの婚約発表のお披露目パーティーである。
2人はお揃いの色で合わせた衣装を着ている。
正直に言おう、ものすごーく可愛い。
思わずまとめて抱きしめてしまったくらいに可愛い。
わたしは薄紫のドレスを着ている。
まだそこまでお腹は目立たないとはいえ、締め付けのないデザインなので妊娠中というのが分かる人には分かるかもしれない。
私の首元の痕は妊娠しても無くなることなく、定期的に付け足されていく。
むしろ昨晩は念入りに上書きされた。
曰く今日はいろんな人が来るから虫除けの意味も兼ねているらしい。
子供を妊娠した今も私って信用ないのかしら?
「しんどくは無いか?」
腰を抱かれ小声で聞かれる。
先ほどからひっきりなしに挨拶に来ていて休む間もないのを心配してくれているらしい。
小さく頷く事で大丈夫と伝える。
ただずーっとヴィーが腰を抱きながら対応するものだから挨拶に来る人が驚いたようにヴィーの手を凝視していくのがちょっと居た堪れない。
本人は気にせずケロッとしているけど。
「おめでとう、キャロ」
公爵様とアンネが来てくれた。
公爵様はヴィーと話し始めたのでアンネがこっそりと話しかけてくる。
「あなたと縁続きになれるなんて嬉しいわ。
・・・それとロッテから聞いているわ、そちらもおめでとう」
後半は更にこっそりと呟かれる。
「ありがとうございます、アンネ」
「またお茶でもしましょうね」
会場がざわめき始める。
何事かと思えば、第二殿下が来ていた。
招待状は送ってないと思う。
一臣下の婚約パーティーに王族を招待するのは失礼に当たるのだ。
「殿下!どうして?」
オスカーが慌てて殿下に声をかけた。
「どうしてって、オスカー酷いじゃないか、側近でましてやマタイトコの婚約披露パーティーに誘ってもらえないなんて」
どうやらお祝いに来たらしい。
うーん。
「アウローラ嬢もおめでとう」
「ありがとうございます、殿下」
ローラは綺麗なカーテシーで返す。
「個人的なことにお忙しい殿下の手を煩わせるなんてと思いまして」
申し訳ございませんとオスカーが謝った。
「良いんだ、むしろ騒がしたようで申し訳なかったね」
そう思うのなら敢えて来なくてもと思ってしまうけど、止める人が周りには居ないのかもね。
「やぁ侯爵、お邪魔しているよ」
ヴィーに向かって挨拶をした殿下とバッチリ目が合う。
「夫人は今日も首元までのドレスなんだな。
その下には侯爵の寵愛の印があると噂だが本当だろうか。
一度その下を見てみたいものだな」
殿下がそう言った途端空気が凍った。
女性陣は一斉に扇を広げ顔を隠す。
流石にさっきの発言は無い。
隣のヴィーから怒気を感じる。
どうしたものかな。
その時ヴィーとは反対の手を取られる。
「でんか、はははたいちょうがすぐれませんのでごせんしつれいいたしますわ。
本日はおこしいただきありがとうございました」
私の横に来たローラが私の手を引き、殿下のところから引き離してくれた。
「おかあさま、もうおへやでやすんてでね」
ぎゅっと抱きついて笑顔でローラはホールに戻って行った。
「もうしわけありません、お義母様」
招待客が帰り、やってきたのはローラとオスカー。
オスカーと我が家の交流は少しずつ増え、オスカーは私たちのことをお義父さまとお義母さまとよんでくれている。
ローラも伯爵やロッテのことをそう呼んでいるらしい。
オスカーは私の前まで来てポロポロ涙をこぼしはじめたので、ハンカチで涙を拭いてやる。
「オスカーが気にすることでは無いのよ」
「でも!殿下をお止めできずにあんなに失礼な事をお義母様に!」
そっと頭を撫でてやる。
ハンカチが間に合わないくらいに涙が溢れている。
泣いてるオスカーに寄り添うローラごと2人を抱きしめる。
「今日は2人の大切な日だわ。
それ以外はどうでもいい事よ」
それよりも私としては同じ部屋で怒気を放っているヴィーとロッテが怖いです。
しかし、我が国の王太子殿下があれで、かつまわりには止めるような側近がいないとなると、大丈夫かな?我が国。
少なくとも今日来ていた女性陣には軒並みマイナスな印象を植え付けてしまったよね。
首とはいえドレスの下を見たいなんて、まるで娼婦のような扱いですよ。
もしくは不貞のお誘い。
まぁ侯爵夫人に対する発言ではないし、そもそも招待されていないパーティーに来るのもマナー違反だもんね。
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