第34話 邂逅する神狼は、世界一

 理想とは、いつだって現実から遠くかけ離れたところに在る。


 そこへ辿り着くまでの道のりを明確に描けなければ、残るのは虚しさだけだ。


 いつか、きっと、なんて曖昧な言葉を羅列させては、理想となることを諦め、いつの間にか妄想することで、人というものは満足してしまうのだ。

 

 妄想からは何も生まれない。

 何も生まれないからこそ虚無が生まれる。


 虚無とは無駄だ。

 無駄とは全てを貪り喰らう悪だ。


 世界は悪意に満ちている。

 隙間もないほどに満ち満ちている。


 生き辛くて仕方がない。


 だから壊してしまおう。

 

 この手で何もかも。


 こんな世界。


 蹂躙だ。

 殴殺だ。

 虐殺だ。

 銃殺だ。

 蜂の巣だ。

 パパパパパッ。


「ひひ、…うひひ…みんな死ね、しねしねしねちねちねちねちね……こ、こんな世界滅びろぉっ……ひひ、うひひひ……うぴっ」


――ぱたんッ。


 スクリム一日目が終わってから約4時間。

 いい子はとっくに寝静まった時間帯。

 

 寝る間も惜しんでABEXを配信せずに寂しく一人でやっていた悪い子は、糸が切れた人形のようにデスクへと突っ伏した。


 そしてそのまま夢うつつの状態へと移行。


 なんだか白の世界が見える。


 気のせいかな。


 あ、怪物さんこんにち―――…、


―――この下手くそッ!!。

―――スパンキーングッ!!。


「………かはッ!!?」


 完全に意識を失う一歩手前、SKとメテヲさんの怒声が聞こえてきて、飛び起きる。


 俺は反射的に謝りながら、首を左右に振る。


 声の主を探そうと、しばらくキョロキョロする。


 しかし、部屋の中、モニターの中を念入りに確認するが、誰もいない。


 どうやら先程の怒声は幻聴だったようだ。

 遅れてその事実に俺は気が付いた。


「…はぁ、……よかったぁ」


 誰にも怒られていない事実にホッと一安心。


 ゲーミングチェアの背もたれに体重を預け、しばらくの間ぐったりスライム状態。

 

 僕悪い子じゃないよ?。

 だから怒らないで?

 お願いしますよ旦那、ぐへへ。


 ひとしきりブツブツと独り言を呟いた後、俺はしっかりと椅子に座り直し、マウスを手に取って、正面モニターへと視線を向けた。


「……5位からの0キル、0アシ、0ダメージ、……うぅ、頭が…」


 正面モニターに映る「部隊全滅」という文字と、その下にある戦闘データを見て、俺は頭を抱えた。


 本気で練習しようと意気込み早4時間、未だに0という数字が輝く。


 強いプレイヤーにおんぶに抱っこ(キャリー)されるだけで、まるで俺自身が上達している気がしない。


 操作には多少慣れてきた感じはあるけど、これではきっとスクリム2日目もSKとメテヲさんの足を引っ張ってしまう。


 俺は一体、どうしたらいいのだろうか。

 もう今から頑張ったって、手遅れなのだろうか。


 このままじゃ、やばい。

 大会までにどうにかしなければ。

 さもないと、また…、また怒られる。


 …うぅ、頭が痛い。


「もうやだぁ……、怒られるのやだぁよぉぉ……ずずッ」


 眠気で若干にして意識が朦朧とする中、惨敗した記憶だけが鮮明だ。


 SKや娘達に怒られたことも、メテヲさんの少々ピリついた口調も、何もかも頭から離れない。

 

 俺が足を引っ張ってしまったという事実が忘れられない。


 嫌なことはすぐ忘れる質であるにもかかわらず、何故だか脳裏にそれらがいつまでもこびり付いている。


 それがある限り、俺は眠れない。


 寝てしまえば、先程みた幻が、白の悪夢となって現実となるからだ。


 だから俺は、眠れない。

 気持ちが落ち着くまでは絶対に…。


「うぅ……くそ、…なめんじゃねぇ、クソがッ」


 どうしようもない現実に打ちのめされ、すすり泣きながらも、俺はマウスを持つ右手に力を込めた。


 反抗心に火をつけ、ABEXの練習を再開させる。


 大会本番まで時間がない。


 やらずに後悔より、やって後悔だ。


 みんなに怒られないため、悪夢を見ないため、頑張ろう。


 俺はそう意気込み、マッチングを開始した。


== それから更に2時間後 ==


「……ふぇ…ひとり?……なんでぇ?」


 ほぼ眠ったままABEXをやっていたラ、人数バグが発生した。


 キャラクター選択画面。

 普段なら3人ここに表示される。

 しかし、何故だか『豪王ラッシュ』という最近改名した俺の名前しか表示されていなかった。


 二人いない。


 トリオなのにソロでのマッチが開始された。


「……やりなおし…いや、一人でチャンピョン……うひひ、みんなに自慢…うぴッ」


 一瞬やり直そうかと思ったけど、一人でチャンピョン取れたらカッコイイし、娘達、SK、メテヲさんに褒めてもらえると思ったのでそのままゲームを続行。


 俺だってやればできるんだ。

 俺だって…うぴッ、うぴぴぴ。


「……くか、…あ、あれもう始まってる、ジャンプしなきゃ」


 首をカクカクさせながら、広大なエリア上空を横断するように飛行する機体から1人で降下。


 カジュアルは戦闘狂が多い。

 チャンピョンを狙う俺は、背中についた小型のジェットエンジンを吹かしながら周りを見渡し、安全な場所を探しながら飛ぶ。


「はれ?…なんか、ついてきてる…」


 降下を続けていると、何故だか俺を追いかける者が約一名。


 右左に旋回し、逃げようとするも、後ろをぴったりついてくる。


 俺はその様子をしばらく観察した後――…、


「味方…いたんら……よかったぁ」、と呟いた。


 キャラクター選択画面にはいなかったけど、ちゃんと後ろについてくるということは、つまりそういうこと。


 一人でチャンピョンは狙えなくなったけど、やっぱり仲間はいた方が心強い。


 俺はホッと安心しつつ、物資が豊富なエリアへと降り立った。


―――ブォオオッツ。


 俺のあとに遅れてジェット音。

 仲間も近くに降りてきたようだ。

 それも直ぐ近い所に。


 降下中、周りを見渡したけど、敵はいなかった。


 近くに敵がいない場合は、広めに物資を漁った方が効率的だとSKもメテヲさんも言っていた。

  

 恐らく味方はそれを知らない。

 知らないから俺と同じところ降りてきた。


 全くもって素人さんである。

 この試合、しっかりと俺がリードしてあげなきゃ。


 っふ、世話が焼けるぜ。


――ボカッ。


「…ぇ?なんで殴るの?やめて?え?」


 仲間がいきなり殴りかかってくる。

 俺はVCをオンにして、止めて、と怒る。やめてくれた。


「あぅ?…俺なんで瀕死のん?」


 味方からの攻撃だというのにシールドアーマーが壊れ、体力が大きく削れてしまっている。


 このままでは流れ弾一発でダウンだ。


 俺は不思議に思いながらも、味方に見守られながら回復していく。


―――ボカッ。

―――ボカッ。

―――ボカッ。


 味方に回復やら物資やらを貰いつつ、全回復。

 気を取り直して頑張ろうと奮い立つも、また味方に殴られる。


 真剣にゲームをやらない味方へ、俺はまた怒った。

 因みに声はちゃんと加工してるから大丈夫。

 いつかのときのようにヘマしないので安心してほしい。


―――ポトッ。

―――ポトッ。

―――ポトッ。


 怒ったらやめてくれた。

 回復も物資もくれた。

 

 ちょっと真剣さが足りないけど、いい人である。


 たまにある嫌がらせかな、と思ったけどそうじゃないみたいだ。よかったよかった。


 俺はその後、味方から手厚くおもてなしをされながら、そのまま二人で行動した。


== 視点は変わり、迷惑行為トロール常習犯 ==


「…んあ?こいつなぜ反撃してこん?」


 アメリカ合衆国の南東部にある都市――アトランタ。


 その都市の中心部にある4つ星ホテルの最上階スイートルームにて、幼女が一人、知人のノートパソコンを借りながら、とあるゲームを真昼間からしていた。


 最近、ストリーマー界隈(特に日本)で流行りに流行っているそのゲームの名はABEX。


 FPSゲームおすすめの記事で、必ずと言っていいほど話題に上がる世界的にも人気なタイトルだ。


 用あってこの場にいる幼女は、暇を持て余していた。


 なので、暇つぶしがてらWi tubeで、日本でいうところのガワというものをかぶってゲーム配信をしていた。


 幼女はVTuberなのである。


 因みに幼女のリスナーのファンネームは、「ピノキオ」である。


 由来は、嘘つきで有名な、あの童話のピノキオである。


 初配信から今の今まで、嘘や適当なことばかりをコメントして、配信主である幼女を困らせることから、いつの間にかそう命名された。


 可愛らしいファンネームを用意していた幼女としては不本意な話である。


「なんか様子がおかしいのぅ…なんじゃこやつ。木偶の棒ならその場で屈伸か、回って見せろ」


≫指示に従わないということはピノキオではない?(米)。

≫いまだッ!後ろからやれ!!(米)。

≫なんか面白いからこのまま様子見で(米)。


 ゴースティング対策で偶々入った日本サーバー。


 そこで人数バグに遭遇し、ソロで出撃となった幼女は、偶然おなじ境遇となった様子のおかしい敵を前に、困惑の表情。


「こやつなんだかわちのこと味方と思うておらんか?」


≫それはないんじゃ?ダメージ与えちゃってるし…(米)。

≫ベイビーなのかな?(米)。

≫ベイビーベイビーで草(日)

≫とりあえず味方のフリして立ち回ってみては?(米)。


 目まぐるしい速度で流れているチャット欄のコメントを数秒見つめ、幼女はとりあえず様子見でもするか、と敵を生かすことに決めた。


 それから様子のおかしいオールドキャッスルと移動することしばし。


「や、やばいッ!!しぬぅう!!…誰かッ!!助けろぉお!!」

 

 幼女は他の敵と接敵。

 壁際で奇襲をかけられた。

 拙い指先の動きで必死に弾を避ける。


 しかし、体力は削られていく一方。

 幼女、万事休すかっ!?、と誰もが思ったその時――…、


―――ズドーーンッ!!。


 少し離れたところから、オールドキャッスルの必殺技アルティメットスキルが幼女の近くで炸裂した。


 アーマーも壊れ、肉もミリ。

 だがしかし、急遽構築された広めな盾で、ギリギリ幼女は助かった。


「くぅぉおおおッ!!あぶのうッ、あぶのうッ!!くはッ、くははは!!こやつ味方じゃ味方!!完全にわちの味方してくれ取るぞ!!くはははッ!!憂い奴よッ!くはっはっはー!!」


 戦闘音を聞きつけ、近くにやってきていた別チームと、奇襲を仕掛けてきた敵チームがその後、戦闘になり、どこぞのアタオカと幼女は二人してその場から無事退散。


 それから怒涛な展開は続き、走っては逃げ、撃っては逃げを繰り返す二人。


 両者ともに0キル0ダメ。

 ただ逃げるだけの状況が続いた。


 これはそういうゲームじゃないんだぞ(笑)、とリスナーから大量に指摘されつつ、幼女は実に楽し気な様子でその後も配信を続ける。


 その間にも、味方となった敵の奇行は絶えなかった。


 敵である幼女へアイテムを贈呈。

 銃を乱射しては敵を呼び、逃げる。

 謎にレレレしながら壁を撃つ。

 平地のど真ん中でしばらくボッ立ち。

 ハイド中にフラググレネードで自滅しかける。

 敵チームと一緒に仲良く物資を漁り、死にかける。


 それはもう、数えきれないほどの奇行を幼女とそのリスナーの前で見せてくれた。

 

 何気に先導してくれているような動きが所々散見されたため、いつからかこの奇行種のことを、みんなして司令官コマンダーと呼ぶようになった。


 この何とも珍妙な行動ばかりする味方(敵)に、幼女もそのリスナーも、面白がってコマンダー、コマンダーと連呼する。


 みんなコマンダーにメロメロだ。


 そして気付けばゲームも終盤。

 残すところ部隊が4チームといったところまできた。


 なんだかんだコマンダーと共に幼女が生き残っているという事実に、リスナーは大盛り上がり。


 5万人から始まったライブ配信。

 気づけば視聴者は15万人を突破した。


 恐るべき数字である。


 この幼女、ただものではない。


≫これはもうチャンピョンを取らなきゃな(米)。

≫コマンダーはリスナーなのかい?(米)。

≫killログ流れんから特定できん(伊)。

≫なにこの状況ww(日)。

≫てかオフコラボの件、まだ気づいてないの?(独)。


「よしっ!!殺し合え!!やれっ!いけいけ!!」


 4チームの内、崖下の建物に引きこもっていた2チームが、最終リングで移動を余儀なくされ、その際に交戦する。


 幼女はコマンダーと共に、それを崖の上から高みの見物。


 ここまで来たら、勝ったな風呂入ってくる状態である。


「うおっ!どうしたッ、どこ行くぅ!!コマンダーーー!!」


 崖の上でチマチマと交戦する2チームへ「くくくっ」と嫌がらせをしていたら、横にいたはずのコマンダーが、必殺技アルティメットスキルを発動させ、混戦状態である崖下へと突貫していった。


 この奇行にしてコマンダー在り。


 幼女とその15万のリスナーは、大いに笑い転げる。


――残りチーム2――


「マジかッ!!?リング外に全部吹き飛ばしおったぞ!!木偶の棒共みたか!!?くは、くはははは!!これは愉快愉快!!なんと豪快で爽快で愉快な男かっ!!コマンダーは!!くははは!!」


≫Wow!!OMG!!(米)。

≫これはクレイジーだッ!!(米)。

≫コマンダーーーー(米)!!。

≫リリー!これはもうコマンダーに勝利を捧げよう!!(米)。


「ぬッ、やばい!!コマンダーがリングに巻き込まれ始めおった!!」


 幼女は「こうしちゃおれんッ!!」と続けて叫び、温存しておいたフラググレネードを全部使って自爆を決行。


 ゲーム終了。

 勝者、コマンダー。


 リング外に巻き込まれたコマンダーは、「やったッ!!」と言わんばかりに空へと弾丸を放ち、嬉し気のご様子。


 そんな彼を見て、幼女もそのリスナーもほっこり満足げだ。


「くくく、しっかりとチャンピョンの名をこの目に焼き付けておかねばな」


 ABEXはチャンピョンを取ると、操作していたキャラと共にプレイヤー名がチャンピョン部隊として宣伝される仕様になっている。


 幼女やリスナーは、コマンダーの本当の名前を脳裏に焼き付けようと、画面を食い入るように見つめて、その瞬間を待つ。


 コマンダー大人気である。


≫コマンダー、君は一体何者なんだい?(米)。

≫コマンダーはコマンダー、何者でもないよ(独)。

≫この試合、本当にクレイジーだったLOL(米)。

≫コマンダーに栄光あれ(露)。


【豪王ラッシュ】


 チャンピョン部隊(一人)。

 その頭上に記される日本語名。

 幼女と15万人は、食い入るようにそれを見つめた。


≫ワオ、日本人!?これはクールだね!(米)。

≫コマンダーありがとう!!(米)。

≫名前は覚えた、見かけたら全力で守るよ(独)。

≫最高におもしろかった(露)。

≫んぁ?この名前どっかで…(日)。

≫こいつあのアタオカやんけ!!ww(日)。

≫ん?日本人が知ってるっぽい。割と有名な人なのかな?(中)。


「むむ、おぬしらコマンダーのこと知っておるのか?」


 盛大に盛り上がるチャット欄。

 何やら豪王ラッシュを知っている者がちらほら。


 幼女はその優れた動体視力で気になるコメントを拾い、コマンダーが何者なのかと話をふる。


「日本のVTuber…ラッシュ…とな?」


 それらしい答えが返ってきて、幼女はスマホを手に取り、その名前をネットで検索。すると出るは出るはラッシュというVTuberの悪い情報。


 やれ『アタオカ』だの、やれ『最底辺のVTuber』だの、やれ『日本の恥』だの、散々な言われ方をしているコマンダーの日本のネット記事。


「……ふんっ」


 幼女はお気に入りの玩具を馬鹿にされた時の様な不快感を覚えながらも、その記事をスラスラと読み進めていく。


 何かの拍子でコラボとかできないものかと、軽めに思案しながら。


「むむ、日本のVTuberが主催するABEXの非公式の大会に超新星、参戦…とな?」


 色々と情報を探っている間に、幼女は本筋とはあまり関係性のなさそうな記事に目を止める。そして、気の向くままにその内容を読み進めていくこと数分。


「ななな、なにぃいい!!?」


 幼女は驚き、叫んだ。


 そしてもう一度、手に持ったスマホを凝視し、驚き仰天した記事の詳細を再び確認する。


 日本のネット記事にはこう記されていた。


『9月2日に開催される個人VTuber最協エベ祭り、日本一のVTuber二成琉琉が参戦を表明。尚、8月29日に行われる予定のVTuber四天王とのオフコラボは、『大会に集中したいからいかない』と配信中に明言。それと同時に、ドッキリ企画を提案。内容は世界一のVTuber、フリー・フェンリーへの悪戯。オフコラボがキャンセルになったことを伏せ、かの幼女をホテルで放置するという話だ。弄られキャラ、愛されキャラと名高いフリー・フェンリー。彼女が最推しである私としては、可哀そうと思う以上に、いいぞもっとやれという気持ちがとても大きい。彼女のリスナー、ピノキオとして、私も一つかの超新星に尽力しようと思う所存。嘘は我々の十八番である。』


 幼女はまじまじと記事の内容を見つめ、はっとした様子でノートパソコンの画面に映るチャット欄を見つめて問いかける。


「おい!!オフコラボが無いってホントか!!?」


≫あ(独)。

≫あ(露)。

≫騙されないで!リリー!それは嘘よ!!(米(漢))。

≫何を言っているんだい?ははは(米)。

≫デマ記事にたぶらかされるでないッ、神狼が聞いてあきれるわッ(日)。

≫それはそうと、Mrコマンダーにフレンド登録依頼しなくていいのかい?(米)。


 手を変え品を変え、その後も幼女を言いくるめるピノキオ陣営。


 時たま真実が織り交ざるも、9割の嘘でそれを塗り替える。


 いつしか怒りも忘れ、幼女は「なんじゃ、デマかのぉ~」なんて口にした。馬鹿である。ちょろいのである。


「む、そういえばフレンド依頼してなかったのう」


 幼女は先程の怒りもどこぞに消え、機嫌を直してコマンダーこと豪王ラッシュへフレンド依頼を送った。


 すぐ承認された。


 招待を送る。


 しばらくしてパーティーに豪王ラッシュが追加された。


「くはは、この自由フリー神狼フェンリルわちが、コマンダーを最上級のランクプレデターへと押し上げてやろうではないかッ!!くははッ、くははは、はーーはっはっは!!」


 チャンネル登録者8080万人。

 世界一のVTuber、フリー・フェンリー。


 白銀のきめ細かな長髪。

 澄み切った青空の様な瞳。

 人にはない獣耳とモフモフ尻尾。

 幼くも見目麗しい相貌はまさに芸術。

 

 丁寧に意匠を施された白のワンピースを着こむその姿は、天使と見間違えても無理はない程に愛らしくも神々しい。


 ガワそっくりな容姿・・を持つその幼女は、その後も大きな耳をピコピコ動かし、ワンピースから覗く白銀のモフモフしたものを盛大に振りながら、日本の最底辺に位置するVTuberと共に、ABEXを10数時間ほどプレイし続けるのであった。


 因みにその間も、ラッシュの奇行は絶えなかったという話だ。


 むしろ、回を増すごとにそれが悪化していき、それが最後まで続いたという。


 フリー・フェンリーもピノキオたちも、その結果に大変満足し、流石はコマンダーだと、彼らは豪王ラッシュを褒め称えた。


 一方、コマンダー改め、豪王ラッシュとはというと――…、


「てんしゃぁこおここ極まれりぃ、こうげつにしちて、ちし王はさいきょふぅなりぃいいいいいーーーーーぃい゛!!!!」


 極度の寝不足と緊張と初チャンピョンを取れたという喜びで、キチガイ化していた。


 キチガイ化したラッシュは簡単には止まらない。


 このままスクリム2日目、突入である。


―――次回予告――


アドレナリンどばどばラッシュ!。

 

ガンギマリなラッシュが遂に爆誕!!。


フリー・フェンリー(他人)と共に寝る間も惜しんで練習した成果、スクリム2日目で発揮できるのか!?。


次回【バーサーカーモード】


閑話で【とある掲示板】と【ストーカー少年の日記】も今週中に出来たら投稿!。




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