第26話

 一か月なんてあっという間だった。とうとう私達は結婚式を迎えます!


 世間には、私達が劇的な出会いをしたという噂が流れている。

 ルティロン様が、剣術の訓練をこっそりしたくて一般部隊に通っていた。そこにこっそりと父親に会いに来ていた私と出会う。二人は一瞬で恋に落ち、私達は親に隠れてこっそりと逢瀬を重ねる。

 だがとうとうそれが知れた。

 驚いたラフリィード侯爵夫人は娘のルティアンを連れ帰国。


 これで、ルティアン嬢が騎士と逢瀬を重ねていたというのはデマとなる。

 そして、隊員と手合わせにと言う風を装い、ルティロン様が私に会いに一般部隊に通っていたのも周知になった。

 ロデとの手合わせは、その為に行われていたという事に。


 外国語が出来る者という条件をクリアした私は、ラフリィード侯爵家に認められすぐさま籍を入れた。

 そして、あたかも最初から結婚は決まっていましたのよと、後に王城にて結婚式を執り行う。

 結婚式の一か月前に招待状を送っておいて、前々から決まっていたなどと何を言うという所だけど、それはわざと。


 外交官を行っているラフリィード侯爵家は、王城内にある会場を借りられる程の権力を持っていると見せつける為。

 ハルサッグ伯爵家は、一般部隊の副隊長だが精鋭部隊第一クラスを動かせるぐらいの権力があると見せつける為。


 と言っても精鋭部隊は騎士学校卒業生が就く部隊。貴族の子息の集まり。そこでトップクラスの者達の部隊だけど。どちらかと言うと、お父様の前所属の特殊部隊の方が凄腕。

 私から言わせれば、一般部隊は平民がなっているから下という事はない。だから別に一般部隊でもよかったのだけど、そうしなかったのには理由が二つある。


 一つは、貴族の結婚式を平民の部隊が守るのは世間的に好ましくないという、くだらない理由。

 もう一つは、私の素性が知れる可能性があるから。

 私の顔は、ルティロン様並みに知れていない。ほぼロデとして過ごしていたからだけど。

 結婚式では、化粧もしっかり施してもらって別人にして頂くので、ロデと結びつく事はないだろうけど、可能性を排除するのは当たり前の事。


 それにしても本当に一か月で、準備してしまったのね!

 王家の力は凄いわ。王城で行うので私達が出来た事って実は、を用意する事だけだったのよ。

 招待状も陛下の一言がなぜかあり、この結婚式で事を起こした場合は直ちに牢屋行みたいな事を書いてあった。

 もうそれだけで、王のお墨付きを得た両家となり、外交官としての権力も副隊長としての権力もおまけとなってしまったのです。


 豪華絢爛の結婚式は、私達の入場と共に始まった。

 よく一か月で仕上げたモノだと思う。白にブルーが混ざった透き通るような青を再現したドレスに、ルティロン様の髪色である金色の刺繡が施されている。

 ロデを連想しないように、髪はハーフアップにしてもらった。

 髪飾りは、恐れ多くも陛下にお祝いに頂いた王家の色、銀で作られていて、私の茶色い髪によく映えている。


 ルティロン様が着ているタキシードは、私と同じ色合いで茶色で縁取りされておりネクタイが私の髪色と同じ茶色。

 胸には、金の花と茶色の花をあしらったブートニアが付いている。これも陛下から頂いたもの。

 私達は絶対に離婚できませんよね! まあ犯罪に手を染めでもしない限りは、そんな事は起こりそうもありませんが……。


 ルティロン様に振り向けは、愛おしそうに私を見ている。

 目が合えば、「凄く綺麗だ」と今日何度も聞いた言葉を囁く。体温が上昇し、暑くてのぼせそうです。


 私達は、挨拶を終えるとダンスを披露。

 人前で踊るのは実は、これが初めて。今まで無いほどの緊張の中、踊った。

 その後、みんなも踊り始めた。


 私達や両親へ各々祝辞を述べに来てくれる。知らない人達ばかりだけどね。もちろんその後に、陛下への挨拶も欠かさない皆さん。


 ルティロン様のお友達が私達の周りに集まり、祝ってくれた。

 ほぼロデとして生活していたので、私にはそんな友達がいない。少し羨ましい。

 会話は、ケイハース皇国語で行われていた。そうよね。ルティロン様は、ケイハース皇国で育ったのですもの。お友達もケイハース皇国の人達。


 『ルティロン。おめでとう。ところでブオンテッジ公爵令嬢は大丈夫なのか?』

 『ちょ……ここでそれを』

 「違う、彼女とは何でもないから」


 何も言っていないのに慌ててルティロン様が言い訳をしてきた。ちょっと怪しい。

 でも婚約者とかならご両親が私と結婚をさせるわけないのだから女友達なのでしょう。


 『はい。信じております』

 『あ、ごめん。彼女、言葉わかるんだ……』


 と少し、申し訳なさそうにする友達。


 『当たり前だ。彼女は優秀なんだ』


 とルティロン様は、胸を張って得意顔。


 『はいはい。ご馳走様』


 もうまた、恥ずかしいのでやめてほしい。私の自慢は!

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