第21話

 プププ、プロポーズをされましたわ!

 これ現実なの?

 私との婚約は、お父様が決めた事で、作戦がうまく行けば解消するものと思っていたのに、一向に解消しないから私が言わないとと思っていた。

 もしかして、これもお父様の計略?

 そう思って見てみれば、ルティロン様が私をあの嬉しそうに瞳で見つめていた。

 そう手合わせしていた時の瞳。


 ルティロン様の本心だわ。こんな私を好きになってくれたなんて!

 凄く嬉しい。手合わせがなくても会える……え、私ただ会いたいだけだったの?

 ふとルティロン様の顔を見れば、目が合う。それだけで、心臓がドキドキと大きな音を立てた。走り込みをしても心臓はこんな音を立てないわ。


 「そう言えば、俺達偽りではない姿同士で会うのって今日が初めてじゃないか?」


 ほほ笑んだと思ったらそんな事を言った。

 言われてみればそうね。どちらかが変装しているか、どちらも変装しているか。

 メロディーナとルティロン様という組み合わせは初めて!? えぇ、そんな事ってある? 数か月ほぼ毎日会っていたと言うのに!


 「それなのにこうやって婚約出来るなんて奇跡だね。ううん。運命だ!」

 「う、運命……」


 だと良いななんて思ってしまった。


 「あの……失礼します。奥様とお嬢様がお戻りになりました」


 使用人が知らせに来てくれた。

 私達は両手を握り見つめ合っていたので、声を掛けられた私は、顔をボッと赤らめた。

 そうしたら、ルティロン様ボソッと一言。


 「かわいいなぁ」


 って、零したのですけど。

 家族にすら可愛いなど言われた記憶がないのに! 凄く恥ずかしい。


 「行こうか」

 「は、はい」


 みんながいる場所へ戻ると、ラフリィード侯爵夫人とルティアン嬢がいた。

 ラフリィード侯爵夫人は、金髪に金の瞳でラフリィード侯爵よりキツイ印象ね。ルティアン嬢は、ルティロン様と双子と言うだけあって似ているような気もするけど、びっくりするほどではないわ。

 知っていれば、ルティロン様が変装していてもわかるわね。

 という事は、もうルティロン様がルティアン様に扮する事はなさそうだわ。

 そして、二人はラフリィード侯爵に似ているのね。髪色は違うけど雰囲気は。母親より父親似ね。


 「母上、ルティアン。俺達の婚約の顔合わせに来てくれてありがとう」

 「……一応、聞いたわ。本当にこのまま婚約するつもりなの?」


 ルティロン様が二人に言えば、私をチラッと見たルティアン嬢が言った。もしかして、反対なの?


 「はい。先ほどプロポーズをお受け頂きました」

 「え? 政略なのにそこまでしたの?」

 「いえ、きっかけはそうでしたが、好きになったのでこのまま結婚します!」


 って、きっぱりはっきり、みんなの前で宣言されたのですが!!

 お父様は、そんなに驚いていないところを見れば、ルティロン様の本心を知っていたのね。

 でもラフリィード侯爵は、驚いた顔つきだから知らなかったみたいね。


 「い、嫌ではなさそうだとは思っていたが、好いていたのか……」

 「はい。絶対に離しません!」


 ですから! そんな恥ずかしい宣言をしないでください。


 「あなた、思ったよりしたたかなのね」

 「やめなさい。ルティアン」


 ルティアン嬢が、ジド目で私を見て言うと、慌てた様子のラフリィード侯爵が娘をたしなめた。


 「言っておくけど、したたかなのは俺だから」


 ルティロン様が、そう真顔でルティアン嬢に言うからみんな、目を丸くしている。

 お父様もこの言葉セリフには驚いたみたいね。かく言う私も顔には出していないけど、この中で一番驚いている自信があるわ。

 ルティロン様が、したたかってどういう事なの!?


 「と、とりあえずは、座りなさい」


 大きなため息と共に、ラフリィード侯爵が言ってやっとこの場が落ちついた感じになった。

 ラフリィード侯爵夫人は何も言わないけど、どう思っているのかしら。


 一応、一通り自己紹介を終わらせ、結婚式の日取り決めになった。

 通常であれば、婚約をするなら一年以上経ってから結婚をする。すぐに結婚するのであれば、婚約をせずに婚姻を行い結婚式をするのがこの国では普通だったはずだわ。

 なので、学校を卒業したら結婚をする取り決めをして婚約を交わすなどね。


 私は、学校には通わないけど、ルティロン様は通うわよね? まだ編入なさってないみたいだけど。

 私は、あと三年契約通り騎士として過ごす。だから結婚は三年後ね。


 あと三年か。結婚をするなど思っていなかったからその後もずっと騎士でいるつもりだったわ。ちょっと寂しい気もするけど、この機会を逃したらもうきっと結婚できる相手が現れるかどうかわからないわ。


 し、しかもルティロン様は私を離さないと言うぐらい愛してくれている。

 ……私はどうだろう。この気持ちは好きという気持ちには間違いない。でもそれが、ルティロン様が想ってくれている想いと同じかがわからないわ。

 自分の気持ちがわからないなんて、私もまだまだね。

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