第13話 ~墓前~
親友の死から30年。
毎年、命日には親友の墓前に立っている。
いつものように、花と「僕もごめん」とひとこと添えて、手を合わせる。
今も、親友からの最後の思念は届いている。
通夜の夜、斎場から立ち去った3人のその後の人生を伝え聞いた。
一人は、若くして文壇に上がったものの、執筆活動に行きづまり、追い詰められて20代半ばで首を吊って自殺したそうだ。
もう一人は、医者になった後、ある手術で失敗し、医療ミスで訴えられて医師を辞め、薬物中毒で廃人のような人生を送った末に、四十前に死んだという。
最後の一人は、大学在学中に弁護士資格をとり、企業弁護士として活躍していたが、今も行方知れずとのこと。
近しい人達の間では、ある反社会的組織の金に手を付けたと疑われ、コンクリート詰めにされて海に沈められたまま、まだ見つかっていない、と噂されている。
彼らは、何の思念も残せずに、混沌の中に消えていた。
そして、今、僕に親友と呼べる友はいない。
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