親友がTSしてたんだけど再会したら共同生活ってマジ?

二村 三

第1話 再会!

引越しの段ボールを持ち上げると段ボールの隙間から写真立てが落ちた。



そこには小学生5年生まで一緒に遊んでいた親友、大分ゆうきが写っていた。

写真は森の中で撮られ、ゆうきは虫網を持って隣に立つ俺、京町京太郎に肩を組んではち切れんばかり笑みを浮かべていた。それと対照的に俺は少し自信がないように肩をすくめている。



「懐かしいな」



俺は写真立てを拾い上げ段ボールの中に戻した。



ゆうきとはいつも一緒で、学校の登下校はもちろん。裏山の森で遊んだり、半裸で川で遊んだり、木に登ってクワガタを捕まえたりした。


思い出の中の俺はどこに行くのもゆうきの後ろを追っていた。虫取り網を持って麦わら帽子を被り、鼻の頭の上には絆創膏をつけたゆうき、一緒に風呂に入って、疲れてクタクタになったら同じ布団で寝たゆうき、そんな夏の思い出がふと頭に蘇る。



「あっ、メッセージ来てる」


『そろそろ着くぞ!』



スマートフォン(この後の文ではスマホと略語で示す)の画面を覗くと、ゆうきの後には『はっはっ』と嬉しそうに左右に飛び回る柴犬のスタンプが押されていた。



彼が小学生5年生になって学校を転校してから、7年が立った。つい最近まで手紙だけのやり取りだけで1年に3回くらいたわいもない近所を報告し合うだけだった。



もちろん俺は会いに行こうと思って電話番号や住所を聞いたりもしたが、ゆうきからいつも忙しくて会えないと返事をもらっていたので、無理に聞こうとは思わなかった。



しかし、高校を卒業して学生服の第二ボタンも貰われることもなく、春休みに突入した俺の元に、突然、手紙でゆうきからメッセージのIDが送られてきた。



大学入学が決まったのと同時に念願のスマホデビューを果たしていた俺は、高校の友達を登録することなく、家族以外にメンバーいないメッセージグループに早速ゆうき登録した。



すると、すぐにゆうきからメッセージが来た。


どうやらゆうきは俺と同じ大学を受験していたらしく、春から同じ大学に通うみたいだ。



俺が春からは1人暮らしをすることを話すと、ゆうきからルームシェアを提案された。



学生ということで懐事情も厳しい俺は家賃の折半という言葉に惹かれて快く承諾した。



部屋は一つしかないが10畳の大きめな部屋を借りたので、2人で共同生活を送るのに問題はないだろう。



なぜなら、ゆうきと俺の間にはプライバシーという言葉は存在しなかった。


子どもの頃は平気にお互いの部屋に上がり込んで寝泊まりしていたし、立ちションも隣同士でするほど信頼関係は強固だった。(普通立ちションをする時はお互いのブツを見せないように距離を置く。トイレが空いてるのにあえて知らない人に隣でされると、コイツホモか? と一定の男子は疑念を抱くことがある)



それに河川で拾ったお宝本を一緒に読み、感想を言い合えるほど絆は強かった。ゆうきは巨乳派で貧乳派の俺とは好みが違ったが互いの好みを尊重し合えるほどベストフレンドだった。



人生で最高の友人といえばゆうきだろう。



もう、彼以外で親友を作るなんて考えられない。



だから俺はゆうきとの大学生活を楽しみにしていた。



そんなウッキウキな気分でゆうきの到着を部屋で待っていた。



『着いた』



そうスマホの画面に表示され、チャイムがなる。



7年も会っていなかった親友。



「おーい! ゆうき!! 久しぶりだな! 心の友よ!! …………えっ?」



「よ、よう! 久しぶり元気にしてたか?」



「…………」



「…………」



俺の目の前には親友ではなく、なぜか恥ずかしそうに赤くなった頬をかく俺の性癖にドストライクな小動物系美少女が立っていた。



「だれ?」



俺は思わずそう口に出していた。

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