第51話 皇帝陛下の覚悟
皇帝陛下として生まれた。
子供の頃からごく普通の子供だった。10歳を迎える頃に【世界目】というスキルを習得した。
不思議な事が起きた。
別な世界の自分の目とシンクロする事が出来た。
その自分と対話する事が出来た。
1つまた1つと世界や33人いる自分が死んでいく。
年齢や性別はまちまちで、その度に心が崩壊しそうになる。
何度も死を覚悟した。
だが大抵の世界を壊しているのは異種族と呼ばれる人達だった。
皇帝陛下は異種族に恨みを抱くようになった。
自分自身が33人いて、自分自身が死んでいく。
全ては異種族のせいだと。
そして出会ってしまった。
日本にいた自分はある研究機関に属していた。
それが入島粕田との出会いだった。
彼は日本では謎の超能力者として扱われ、度重なる人体実験を行われていた。
ある時、彼は逃亡し、片端から人々を殺し始め、世界は滅亡した。
その時に日本にいたもう一人の皇帝陛下も死亡したが、全然構わなかった。
何の因果か、彼が辿り着いた無限転生の先は皇帝陛下がいた城の玉座という訳だ。
「勇者イルカス、まだ終わっていないですよ、最後の最後まで諦めないんでしょ、人体実験受けていた時だって何度でも立ち上がったでしょ」
「そうだったな、そうだったよ、なんで忘れて、もう死ねないくらいで何だよ、それが普通だろうがよ」
「その意気です」
「皇帝陛下、初めてだけど共闘といこうか」
「はい」
赤ん坊姿の皇帝陛下と立ち上がった勇者イルカスが剣の武帝ツイフォンと魔法族のレインボーに立ちふさがる。
★★★ ★★★
「非常にまずいですね」
ツイフォンが呟くと。
「皇帝陛下がレベル33億で勇者イルカスが100兆ですか、もう無理ですね」
「いやいや、レインボーあなたが諦めてどうするんですか」
「そうだとしても、ああ、あなた達がいましたね」
ボーン卿がゆっくりと起き上がり意識朦朧なのか空を見上げている。
ブレイクも小さな人形の姿になっており、ふらりふらりとしている。
ヴァンロードも翼をふわふわとさせながらこちらにやってきて。
グスタファーはぐったりとしている。
ガニーとゲニーが立ち上がり。
「では使いましょう、魔法族の種族スキルの1つを」
「やるんですね、我らを滅ぼした」
「ああ、生命の武器化。皆さん、しばらく武器になってもらいますよ、ツイフォンがさばきますので」
全員が意識朦朧としている。
「では、いきますか」
光が輝いた。
世界が終わるのではないかとツイフォンは思った。
レインボーの色が虹色に輝いた。
光は唐突に収まる事を知らない。
何度も何度も輝き。
ボーン卿は1本の骨の大剣となり、ブレイクはルビーのナイフとなり、ヴァンロードは翼の生えた斧となり、グスタファーは巨大な棍棒となる。
ガニーとゲニーが2本の赤と青の双剣となる。
「これを我に扱えと? レインボー」
「以心伝心とはこういう事でしょう」
レインボーの感覚がツイフォンに流れ込んでくる。
【種族スキル1:生命武器化:種族スキル2:以心伝心】
生命武器化は生命を一時的に武器にする。
一心同体は武器化した武器を持たずに操作する事が出来る。
「これは凄い」
ツイフォンは6本の武器を触れずに浮遊させる事に成功する。
右手にはレインボーの剣を握りしめている。
勇者イルカスと皇帝陛下が地を蹴った。
皇帝陛下の単調な高速移動。
ツイフォンは身軽な動きでその攻撃を避ける事に成功するが。
勇者イルカスのスキル攻撃【無限破壊】の斬撃により、ツイフォンの体は瞬時に爆発したかに見えた。
そこには巨大なグスタファーの棍棒が浮遊していた。
その防御力は圧倒的。
グスタファーのスキル:一心同体が発動している。
空地山の力を無限に吸収している為圧倒的な防御力を誇る棍棒。
勇者イルカスは即座に判断を切り替え。
右手と左手からスキル:ライゴウの剣を召喚する。
雷に包まれたその剣で振り落とす雷撃にツイフォンはブレイクのルビーに輝くナイフで雷撃を斬り刻む。
ブレイクのスキル:ネクロサイセイによりナイフは崩壊するが再生する。
その度に雷撃を退き、ライゴウの剣を破壊する事に成功する。
「この野郎」
勇者イルカスが罵り声あげる。
「スキル:火炎落とし」
ガニーとゲニーの双剣で爆破する。
2人のスキル:ボマーを活用する。
「スキル:無重力」
ヴァンロードの翼の生えた斧で撃退する。
スキル:舞台俳優を発動させ、成りきる事により無重力を自由がままに飛ぶ。
「スキル:惨劇」
ボーン卿の抜刀斬りとツイフォンの居合斬りを合わせて、惨劇の斬撃を退ける。
「スキル:無差別発射、スキル:身体強化、スキル:半重力、スキル:ファイアー破壊、スキル:強重力、スキル:心肺停止、スキル:幻覚症状、スキル:破壊衝動、スキル、スキルスキルスキル」
「はぁはぁはぁ」
「無理だ」
皇帝陛下と勇者イルカスは地面にへばっていた。
人間王国の景色。城以外全て土となる。
建物は崩壊し、先程見てきた日本よりひどい。
日本では建物がいくつか残っていた。
まぁ惑星事斬ってしまったのだが。
だが人間王国は城を残して全て土となる。
皇帝陛下も勇者イルカスもそれは分かっていた。
なぜならそこに人間がいるから。
しかし地面が揺れ動く。
風が瞬き。
苦しみの中から何かが這い上がるようにして。
2人が地面の奥底から出てくる。
1人はダークドワーフであり、古代魔王のオメガ。
1人はダークエルフであり、ダンツィの親友ジンガダン。
ダンツィはかつての古代魔王だった。
「うそだろ」
勇者イルカスは唖然とする。
「レベル∞て」
「しかも2人ですか」
皇帝陛下がのたまう。
「ですが、ジンガダンは人間を滅ぼす為、オメガは何の為に」
「人間と異種族を助ける為ですよ」
その時、レインボーが声を上げた。
ツイフォンが頷く。
「もう止めましょう、皇帝陛下よ、あなたは異種族を敵視していますが、オメガ団長は人間も異種族も助ける気持ちですよ」
「そうですか、やはり古代魔王オメガは例外という事ですね、がはがは」
赤ん坊の口から赤黒い血が流れた。
隣では勇者イルカスが皇帝陛下を支えている。
「もう無理ですね、2人のエネルギーも使いました。おいらで最後です。勇者イルカス、あなたに謝りたい事が」
「なにを」
「あなたがスキル持ちだと言われ人体実験されてる時、何も出来ませんでした。ただ見ている事しか、脱獄する手はずを整えてあげる事しか」
「いいんだ。皇帝陛下」
「では人間を頼みますよ」
赤ん坊の体が消滅していき、空に光の柱を作り、白い羽が落下してくる。
「勇者イルカス」
「ああ、分かってる。今は見守ろう」
勇者イルカスは頷き、次の瞬間、武器となっていた仲間達が肉体へと戻る。
魔王ルウガサーと道化ペロンクと転職リナテイクがこちらにやってきた。
「一時避難を」
「トランプに入ってねー」
「ホーリーアローで」
次の瞬間とてつもない爆発が轟き、そこから城以外吹き飛んだ。
城には圧倒的防壁が貼られていた。
それは勇者イルカスの魔法だった。
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