第48話 異団の傭兵団③

★★★ヴァンロード★★★


 臆病でへっぴり腰で騎士を夢見る青年。

 年齢は低いけど、いっぱしの伯爵。


「いやーあれ無理でしょ」


 空を見上げる。

 巨大な骸骨の姿となり暴れているボーン卿。

 それをフォローするブレイク卿。

 最近勝手に、ブレイクも卿とつけている。


「あんな滅茶苦茶支離滅裂バトルに巻き込まれたら死ぬぜ」


 それに答える物はいない。


「はぁ、臆病風に吹かれるヴァンロードちゃんはもういないんだったな」


 ヴァンロードは覚えている。

 先程までペロンクと人間達をげらげら笑わせた事を。

 生きていると実感出来た事を。

 楽しいと思えた事を。


「あんなのが沢山出来たら俺様最高だね」


 空を見上げる。


 何度だって見上げてやるさ。


「レベル99999:飛翔マント」


 これはオメガ団長から授かったマント。

 このマントは無限に空を飛べる。

 そして風の力を借りて、翼は刃のように変形する。


「いっちょやりますか、アンデット王の空の覇者いきますよー」


 狙う相手は勇者イルカス。

 彼は地面を驚異的な速さで移動している。

 地面を踏みしめるだけで地震が起きている。

 まぁ地震を起こしているのはアンデット王の巨大状態とて同じ事だが。


 空を飛びあがると。


「ここじゃ舞台俳優スキルも無意味、出来るだけのフォローだけど。皆さんただ戦ってるだけじゃつまらないでしょ、BGM【世界の破滅】でもお聞きなさって」


 その世界に広がる音楽。

 ヴァンロードのスキルにより激しい曲が流される。

 皆それを聞きながら、戦うテンポが速くなっていく。


「さぁ、MUSICSTART」


 ★★★グスタファー★★★


 トロール村でいつも遊んでくれて守ってくれた人間の傭兵団の団長がいた。

 グスタファーは最後まで彼等に守られて、彼等は逝ってしまったけど。

 グスタファーには新しい仲間達が出来た。


「だんちょーの思いは新しい団長が引き継ぐんだ」


 声を尖らせて断言する。


「レベル99999:心のグローブ」


 そう呟き。


「大事にするよ、これにはだんちょー達の服が縫い込まれてる」


「皆が死んでいったことは無駄にはしない」


「もれは最高の料理人、もれは仲間達の為に料理を作るだけじゃなく。世界中の人に料理をつくる」


「だから、見ていてください、もれが死んだとしても生きたとしても」


 地面に足を突き踏ん張る。


「一心同体」

 

 発動条件は信念、空、地、山の力を無限に吸収していく。

 しかし暴飲暴食が発動するが種族スキルの小食でなんとかなる。


 レベル10兆。

 それがグスタファーの力。


 全身から光のエネルギーが放出される。

 熱がこもり爆発しそうになる。ぐつぐつと煮込んだように真っ赤になる。


 それを右手と左手の心のグローブに貯める。


「このグローブは心を貯めておけるんだ。力にだって防御力にだって」


 グローブに貯めた心は瞬時に体のあちこちに移動させ力となる。


 足に集中させる。


 ただしグローブから取り出した心は消滅する。また一心同体を集中させて心を増幅させる必要がある。


 超人的なスピードで勇者イルカスの顔面を殴る。


「かは」

 

 初めて勇者イルカスにダメージを与え、彼は建物を吹き飛ばして吹き飛んでいく。


「おっと」

 

 瞬時に勇者イルカスが飛来。

 グスタファーの腹に剣をめり込ませるが。


 お腹に心を移動させ防御とさせる。


「硬いな」


 勇者イルカスが一歩退く。


「チートスキルか、何のスキルだ? 鑑定させてって、骨うぜええええ」


 真横から巨大怪獣のごとくボーン卿が拳を振り回す。


「今の最高だ。グスタファー」


「えへへへ」


「ブレイクも見習え」


「なんでそこでわたしめが出るんだよボーン卿」


「やばああああい、とまらないいいい」


 空を飛翔していたヴァンロードが建物に突っ込んでいった。


「あはは」


 この場にいる人達は命がけの戦いを楽しんでいるのだろうか?


 グスタファーは疑問に感じた。


★★★レインボー★★★


「そうですか、皆さん死にましたか」


「ああ、そうだな」


 白髪の長髪をして、爪楊枝を口にはさんでいる。腰に帯剣している。

 空間を斬る達人だ。

 それが剣の武帝ツイフォン。


「時代も変わりました。かつては古代魔王を復活させるあなた達を止める為に魔法族は戦いましたが」


「今では、古代魔王の後継者が決まりそれをコントロールしている」


「この時代では始まりは皇帝陛下ですが」


「とっくの昔から始まっていたのかもしれんなー」


「7人分の英雄で足りるでしょうか」


「足りなければ、我が死ぬだけだ」


「それはいけません」


「なぜだレインボー、我はそなた等に殺されたのだぞ」


「まぁ、あなた達は悪くはないです。ほぼ悪いのは殺戮王です、ツイフォンあなたは家族を人質にとられていましたねー」


「ああ」


「その家族がもういないのに、なぜ殺戮王に?」


「逆らえなかった」


「そうですねー人は恐怖には勝てませんから、まぁもういない人の話はしてもしょうがないでしょう。ツイフォン、ワタクシの相棒になりませんか」


「それはどういう」


「その剣、カガクの剣という秘宝でしょうが、ワタクシを使えば二刀に出来るでしょう、たまに使う片方の剣は普通の剣でしょう?」


「ああ、そうだ。死にかけていた時に拾った」


「ワタクシを使いなさい、剣だけで色々な武器になるのは難しい戦いなのですよ、魔法族とは人に使われて本来の力となるのです」


「そうか、それも悪くないな、頼らせてもらおうか相棒」


「もちろんです」


 魔法族レインボーは剣の姿をしている。だがかつての戦った英雄達の武器の姿にもなれる。彼の記憶にはありとあらゆる武器を扱う物達のシミュレーションがなされている。


「こ、これは」


「頭に流れ込んでいきます。これがワタクシのシミュレーションした記憶です」


「す、すごい」


「レベルという概念はなく、技術だけの世界です、ようこそ技術の世界へ」


「これなら」


 ツイフォンはカガクの剣とレインボーの剣を構える。

 そこに二刀流の剣士が生まれた。


「体が動く!」


 瞬時に地面を蹴り上げて、居合斬りの構えの状態で空中を疾駆する。


「ってはや」


 勇者イルカスの間合いに入り。


「絶対防壁っと」


 勇者イルカスのスキル。

 だがそれはカガクの剣には通用せず。


「我が斬ったのは空間であり、物理ではない」


 絶対防壁が両断され片腕が吹き飛ばされる。

 勇者イルカスの悲鳴があがる。


「ぐああ、あなんかデジャブだけど、【痛み遮断】と後、【自己再生】【効果10倍】っと」


 一瞬で腕が生える。


「まったく、誰が斬撃が終わったなどと、遅れてくる斬撃」


 レインボーの剣が遅れてくる斬撃になり。

 次は勇者イルカスの首を飛ばすのだが。


「はい、【無限転生】と【座標】はここっと」


 瞬時に死体は転がり、隣に勇者イルカスが現れる。


「まじか」


 ツイフォンは唖然とする。


「ふむ、無限転生ですか」


 レインボーが思案し。


「無限転生を倒す方法はあなたの世界にあるのでしょう? 日本と言う場所の」


「な、なんだと」


「図星のようです。ツイフォン、異世界斬りにて日本に行きます。皆さんは足止めよろしく」


「ふ、ふざけるなあそこは滅びた」


「滅びても世界はあるんですよ? ツイフォンあなたなら出来ます」


「うむ」


 ツイフォンが剣を構える。

 次の瞬間異空間を切り上げる。

 

「勇者イルカスが無限転生を使ったので、日本と呼ばれる場所にシンクロしているはずです」


「そうか」


「このやろう」


 ようやく余裕ぶっかましていた勇者イルカスが真っ青になり。

 走ってくるそれも信じられないスピードで。


 その時何かが勇者イルカスに衝突して爆発した。

 真横に吹き飛ばされていく。

 その威力は一点集中型の爆弾そのものだった。

 真横にモクモクと煙が噴出する。


「少し行ってくる」


「皆さん頑張ってください」


 その時、日本の道は閉ざされた。


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