第28話 エルフ王国の事情
「つまり、エルフ王国は人間に滅ぼされる以前から滅びそうになっていたと?」
「そうだなーそういう事になるなー」
幸運の女神チャクターは空中に浮遊しながら、コロポックルのような小さな体をしており、白い翼を生やしている。可愛い表情を作りながらこちらを見ている。
現在エルフ王とエルフ女王とその息子と娘が少し離れた荒野で話をしている。
魔王ルウガサーの膝元には横になっているペロンクがいて、そのペロンクを介抱しているのがリナテイクだった。
ガニーとゲニーも心配そうにあっちへ行ったりこっちへ戻ったり。
ボーン卿の靴を一生懸命磨くグール族のブレイク。
現在ブレイクの姿はガニーとゲニーの大爆発のバクサンというスキルによってダメージを受け、人型の小型人形になっている。
小型人形にとってボーン卿の靴は少し大きすぎたりするが、一生懸命磨く。
なぜなら少しでも変な事をしたら処分するからだ。
「エルフ王国は世界樹の木が無数にある事で発展した。そこから取れる世界終の葉っぱ、罪人の魔力を消耗させる事でだ。ただ。最近エルフ達は素晴らしい人が多く、罪人が増えなかった世界終の葉っぱの量産は事実上不可能。ではどのように稼ぐかを考えた訳だ」
「うむ」
「人間と交易をしようとした訳だ。人間側はそこのエルフ娘とエルフ息子を人質にしてな」
「うむ」
「エルフ王はそれを断った。腹いせにここまで滅ぼされたと言う訳だが、もとより人間はエルフを滅ぼす予定じゃったろうからな」
「なるほどな」
「さて、本当に化け物ぞろいの傭兵団になったのう、幸運の石は量産されてるから安心しろ、ダンジョンで大量だぞ」
「それは助かる」
「礼を言うなら、レベル8000のモンスターと住民のエルフ達、あとスケルトン達じゃな」
「そうだな」
「所でエルフ王がこっちに来るぞ」
目の前からチャクターが消滅すると、エルフ王が目を伏せた状態でやってくる。
「話は決まった。エルフの涙を提供する。それと娘を娘を守ってほしい、お前のダンジョンで」
「は?」
「なんでも言う、ドワーフ王の居場所だって言うから」
「落ち着け」
「娘を助けてほしい、感情がない。なぜなのか分からない、愛情を送れなかったのかもしれない、それでも娘は呪われているのかもしれない。分からないんだ」
そこには一人の父親であるエルフがいた。
鑑定すると名前が表示されている。
「なぁ、ジェイルド王よ、娘を預かろう、感情を取り戻す研究もする」
「おお」
「それなら俺も行くぞ」
声を上げたのは1人息子のエルフ王子。
名前をラルフ王子だった。
「ラルフよ」
「父上、この勇敢なる傭兵団は尋常じゃない強さ。この俺は強くなり民を守りたいのです。人間がすべて悪いとは言いません、ですがこのままでは虐殺されるだけです」
「じゃが」
「エルフレイク城は再建されさらに強化されるでしょう、後レベル8000の守り神というモンスターを配置していただく。父上、俺の役目は自由の墓場ダンジョンにあります」
「そうだな、わかった」
「これを受け取るのです」
そう言ったのはエルフ女王、鑑定するとナナシア女王だった。
エルフ王子はキャスバリアンという聖剣を授かっていた。
鑑定してみると謎要素が多い剣でレベルは100とされている。
「では、約束通り、エルフレイク城をさらに強化して再建させます。かかる日数は1週間です。それまで姫と王子は挨拶を済ましてください」
「はい、オメガ殿」
「はい、オメガ様」
鑑定してみると、姫の名前はリャナイ姫だった。
ラルフ王子とリャナイ姫は双子のようで年齢は20歳くらい。
オメガと同じくらいだった。
「ここまでしてくれたのだ。ドワーフ王の居場所を告げよう」
「はい」
「イベントリの中じゃ」
「はい?」
オメガは意表を突かれたように口を開けた。
「イベントリの中に行くにはイベントリを介してじゃ」
「意味が」
「ドワーフ族の種族スキルはイベントリじゃ、試した事はなかろう、イベントリに入るという事。入ってみよ、お主が望むならドワーフ王の居場所に導いてくれる」
「そうですか」
「それにしてもオメガよ、王家の血筋なのか?」
「どういう」
「両親は誰じゃ?」
「意味がわからないんだが」
「そうか、聞かなかったことにしてくれ」
「俺には父親も母親もいたような気もするしいなかったような気もする。自然と1人になっていた」
「ふむ、わしはドワーフ王とは親友でな、まぁ、雰囲気がお前とそっくりでな」
「それはきっとドワーフだからだ」
「これは一本取られたわい」
「すぐに再建したいが、エルフの涙をくれ」
「もちろんだ」
エルフ王は小瓶を手にオメガの手元に渡した。
オメガは素早くペロンクの元に走り、口の中にリャナイ姫の涙を入れた。
「エルフの涙は選ばれたエルフの乙女にしか宿らない、全てを癒す力。その力は世界終の葉っぱを超える。さぁ、目覚めよペロンク」
チャクターがそう呟くと。
辺りは静けさに包まれていた。
気付けば満月の夜だった。
黄色いお月様が色濃くこの大地を支配しているだろう。
ペロンクの体が突如として変化をたどる。
めきめきと筋肉が引き裂かれ、次の瞬間には髪の毛が腰辺りまで伸びてくる。
コボルトのような犬の姿ではなく、オオカミ人間のそれになっていく。
「どういう事だ」
オメガが悲痛な叫び声を上げる。
次にまた異変が生じる。
大きくなった体をしているペロンクの体はさらに縮こまる。
オオカミ人間の体をしているのだが体は小さくなっていく。
コボルトなんだがオオカミ人間なんだかよく分からず。
犬歯は鋭く尖がっている。
「!」
大きなびっくりするような顔をして辺りを見回すミニチュアオオカミ人間。
ドワーフよりも頭1つ分小さいくらいだろう。
「これは、どういうことなのですか、頭の中でオオカミが語り掛けてきたから、一生懸命に話をしました。いつしか楽しくなって、体が合わさって、暖かい水が口中に、とても何も感じない水」
「ぎゃはははははははは」
ペロンクの言葉に最初に笑ったのは赤い鱗のリザードマンのガニーであった。
「あたいは心配したんだけどねーどうやら取り越し苦労って奴さね、でもいけてるよ、オオカミ人間の小型バージョンもさ、ペロンクイメチェンおめでとう、ぎゃははははは」
「ぷ」
「あはははははは」
魔王ルウガサーが我慢しながら笑い。
リナテイクは抑えきれずに笑う。
ゲニーはとりあえずペロンクを抱きしめて、ボーン卿とブレイクは腕組みしてそれを眺めている。
「ふぅ、よかった」
オメガはそこの場に尻餅をついた。
「よくないですよーなんですかーこの顔はです」
ペロンクはリナテイクから手鏡を渡され、それを見て涙を流していた。
オオカミ人間そのもののが目から涙を流すとなんかシュールであった。
「うおおおおおんって叫べばいいんですかー、これじゃあー道化師として怖い道化じゃないかー」
ペロンクの悲鳴はエルフ王とエルフ女王とラルフ王子も爆笑させ、リャナイ姫は無表情を保っていた。
「エルフ王よ、いや、ジェイルド王よ感謝するぞ、仲間が助かった」
「お主の仲間に対する愛は凄いな、よかったよ、オオカミ人間化しなくて」
「ああ、本当に良かった」
「これからペロンク君はオオカミ人間化しても大丈夫だろう」
「そうだな、あの涙がバランスをとってくれるのだろう、それで、ぷは、あの顔だからな」
「それはおめでとうと言おう、ぷはははは」
「うおおおおおおお」
ペロンクの絶叫が迸った。
「ではエルフレイク城の建設を始める。俺とボーン卿とブレイクで動く、他は休憩してくれ」
【御意】
その場が動き出した。
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