第11話 動き出す戦乱
ドワーフ族のオメガはいつの間にか殺気を操る事が出来るようになっていた。
レベル10000を超えた辺りからコントロール可能となっている。
目の前にいる数十名のサーカス団員達。
団長は威張り散らして唾を吐き出している。
オメガのステータスは超越している。
それはレベル10000という事もあるからだ。
ドワーフ族の走るスピードはとてつもなく遅い。
しかしここにとてつもなく早く走るドワーフがいる。
それがオメガだ。
高速の剣との相性はぴったりだが、動きづらい無敵の鎧を装備していても動けるのだから、無敵の鎧を外すとどうなるのかオメガは試してみたいと思っている。
そんな事を考えていたら、サーカス団員の胴体が両断されて落下していた。
「た、助けてくれー化け物がいるー」
団長がしりもちをついてテントの元へと体を引きずって逃げていく。
「待ってください聞きたいことがあります」
ペロンクがドワーフよりも小さい体で精一杯手をあげた。
「いいだろう、これはペロンク君の問題だからね」
ペロンクは這って逃げる団長の眼の前に仁王立ちすると。
「団長は父さんの道化師ぶりどう思いますか!」
「はぁ? あんなのは誰でも出来るんだよ」
「そうですかね、父さんはどんなに下手な道化ぶりだとしても、観客がバカにしたとしても、彼等のストレスって奴はなくなっていったんじゃないんですかね、そうして父さんはぼこぼこにされたけど、それでも父さんは人間の事を思っていたんじゃないんですかね」
「はん、コボルト族が人間の事を? 人間の奴隷で終わればいいだろう」
「いつか、人間と異種族が手を取り合える。そんな道化になりたい、でもあなたのような人はいてはいけないんです」
「や、やめてくれ、たのむうううう」
ペロンクはにんまりと微笑んで無数のトランプを団長の体のあちこちにはりつけた。
トランプに吸い込まれた体の一部は別なトランプから吐き出される。
その結果。団長の体はトランプのカードのマークだらけの穴ぼこになった。
血はとめどなく流れ、まるで吸血蝙蝠に襲われたかのようにしなびなとしていた。
「はい、終わりです。ぼくはこれからどうやって生きていけばいいんでしょうかねぇ」
「それなら傭兵団が歓迎するよ」
「傭兵団?」
「そこの道化師を募集していてね」
「それはナイスタイミングです。ぼく父さんのようにぃ、父さんのようなぁ、道化師ですから、うぅ」
「いっぱい泣けばいいさ、ただメンバーは変わり者だから気を付けてくれ」
「それはぼくも同じ事ですから、安心してください、なぜならコボルト族で道化師ですから、一般用語ではピエロって言うんです」
「ああ、知ってるさ、この街から出よう、勇者候補生に見つかると殺すのがめんどい」
「それ知ってます。よくサーカス団に見に来てました」
「ほう、顔は覚えてる?」
「1人だけなら」
「よし、手を繋いでくれ、拠点へ案内する」
「はいです」
辺りは静けさに包まれており、暖かい空気を冷たい空気に切り替えてくれた。
その刹那、2人のドワーフとコボルトは消滅した。
そこに広がるのは死体だらけ。
「へぇ、ドワーフってあんなにつえーんだ」
1人の少年がそれを見ていた。
====1階層ダンジョンボスの間====
ダンジョンボスの間は玉座ではなく、巨大な円卓のテーブルとなっている。
それぞれの椅子にはオメガ、ガニー、ゲニー、ルウガサー、ボーン卿、ペロンクが座っている。
「自己紹介も終わったことだ。現在状況を確認したい。俺が2人の勧誘にテレポートしている3日間、ダンジョンはどのような状況になった?」
「はい、各階層にレベル8000のモンスターを召喚していました。レベル9999の武具は全部使い果たしたので、次の補充をお願いしたいです。素材は各階層にあると思われますが全てを把握している訳ではありません」
「魔王ルウガサーありがとう」
「8階層の海ではあっという間に魚の大群だ。食料には困らないだろう。このダンジョンは成長のスピードが速いようさね」
「僕は観察してましたー」
「ありがとうガニーゲニー」
「5階層の迷宮をわしに預けてもらえんかのう、迷宮からとれる素材を提供できるかもしれない」
「それは本当ですか」
「うむ、わしのスキル:骨召喚と憑依玉をうまく使えば出来るじゃろう」
「なぜ、迷宮なのですか?」
「迷路の方が何かと便利だ。暗闇でもいけるし、何より、屋敷に1000年いたものだから狭い所の方が落ち着くのじゃよ」
「それなら、お願いします」
「あーぼくは街で道化師やって皆を笑わせたいです」
「それは嬉しいがまだ住民いないんだよ」
「なんですとー」
「これから異種族の人や困ってる人族を保護していく予定だ」
「人ですか?」
「そうだ。お前の発言を聞いてなんとなく選別の意味を考えた」
「はい」
「まぁ人間はほぼ殲滅だがな」
「はは」
ペロンク君は失笑しながら笑っていた。
「事後報告から今後どうするかの話になってしまったが、まずはレベル8000のモンスターの部位破壊でボーン卿とペロンク君のレベルを10000にしちゃおうか」
「それは頼もしいのう、てか部位破壊てなんじゃ」
「なんか面白そうだけど、レベル8000て殺される気がしますぅー」
オメガは心の底から笑う。
レベル8000のモンスターの素材となる部分を破壊するだけのチート級レベリング。
もちろん魔王ルウガサーのモンスターの言語を理解する力が必用となる。
2人が魔王ルウガサーに案内されているのを眺めながら。オメガはゆっくりと椅子にもたれた。
気づけばすやすやと深い眠りに入っていた。
父親の姿と母親の姿、いつからいなかったのだろうか。
気づけば1人だったけど、ドワーフの村では大勢の仲間がいた。
でもそのほとんどが死んだり精神に異常をきたした。
それは人間がドワーフ族を奴隷として酷い扱い方をしたからだ。
父親の姿も母親の姿も覚えていない。
それでも仲間だけは、ふと気づくとそこには新しい仲間が出来上がっていて。
亡くなっていった者は取り戻す事が出来ない。
それでも新しく出来上がった者なら守る事が出来る。
そしてきっと守られるのだろう。
そんな自問自答を夢の中でしていた気がする。
ふと気づくとテーブルの上にこぢんまりと、幸運の女神であるチャクターが背中の羽をひらひらさせながらこちらをじっと見ていた。
「ふむ、こちらに人間の軍勢が10万に向かっているそうだ。勇者候補生は5人いるそうだ。その中になぜか勇者イルカスがいたのう」
「は?」
「先ほど死体を見てきたがちゃんとあったな」
「双子?」
「いや鑑定したら本人じゃ」
「意味が分からないんだが、鑑定した時だって謎スキルはなかったし」
「いいか、目で見る物全てを信じるな、スキルはいくらでも隠せるし、騙せる」
「聞いたことがあるし、勇者イルカスは極秘事項級らしいからな、だから勇者という異名がついているのだろう、勇者候補生の33名の中でな」
「素晴らしい推測じゃ、じゃがそれも危険じゃ、実際は見て考え結論を出すんじゃ」
「そうするよ、それでどのくらいの距離だ」
「今ダンジョンの入り口で立ち往生しておるな」
「そうか、皆をそれぞれのポジションに配置で連絡してくれ」
「了解したぞ」
オメガの脳裏に人間達との戦争が近づいている事が浮かんだ。
「まて、皆に伝えてくれ自由の墓場にやってくるからには墓場にエスコートしてあげないとなと」
「くく、そうしよう」
その日、人間達は10万人の兵力を使って、魔王ルウガサー討伐に向かった。
オメガ達は彼等を墓場にエスコートするだけだった。
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