第9話 迷信ゴウと逆行チェリー

 青年の方は黒い髪の毛であり真上に尖がっている。

 すらりとした体系でありながら体中にナイフを装備している。

 美少女の方は桃色の髪の毛をしており、髪の毛をおさげにしている。

 こちらもすらりとした体系でありながら、巨大な杖を装備している。

 どのくらい巨大かと言うとタンスまたは本棚クラスの大きさだ。


 青年のほうはちゃらちゃらしており、美少女の方はなよなよしている。

 鑑定した結果。


 なぜか異名までついてきて、迷信ゴウと逆行チェリーという事が判明。

 レベルは2人とも80であり、それでも自信満々といった雰囲気だ。

 ちなみにボーン卿のレベルは50レベルだ。

 それでも素晴らしい方だと思う。


「へぇー兵士サン達100名の足がなくなっちゃったかーそれは残念だ。鑑定したけどまじでレベル0かーそっちは50だし、楽勝だねーチェリー」


「うんー楽勝楽勝、うっちーからやっちゃっていい?」


「もちろんだよ、チェリーよ、レディーファーストだからねー」


「一つ聞きたい」


 オメガが尋ねると。


「おめーらは死ぬから質問してんじゃないでーす」


 逆行チェリーが後ろを向いた。

 次の瞬間後ろ向きで杖を振り出したではないか、それもとんでもない跳躍力を見せて。


 オメガの顔面に巨大な杖が炸裂する。

 後ろ向きな為、逆行チェリーはこちらを仕留めたと思っている。

 だが俺はびくともせずただ立ってるだけ。


「やったー?」


「嘘だろ」


「だから、雑魚ども、かかってくる前に質問に答えろ」


「ふざけるなー」


 迷信ゴウが体中のナイフを炸裂させる。

 

「俺っちの力は切り傷を与えれば迷信を実現させる。それも恐ろしい迷信を」


「残念だな切り傷ひとつつかないから」


 俺は全てのナイフを食らい、傷ひとつつかずに落ちたナイフを素手で握りつぶした。

 まるで粘土のように潰されたナイフに、唖然としている迷信ゴウ。


「あれーなんで死なないのー、ほれほれほれほれ」


 後ろ向きで何度も巨大な杖を叩き落とす逆行チェリー。

 しかし全部の攻撃を食らいながら、オメガは涼しい顔で立っている。


「お、お前は本当にドワーフなのか? 何かの悪魔ではないのか?」


「それはボーン卿に言われたくないですよーちょっと静かにしてね」


 オメガは逆行チェリーの首を後ろからつかみ、地面にぶん投げた。

 背丈の問題は逆行チェリーが少女であり小さいという事から大丈夫だった。


「えぐへええ」


 逆行チェリーが不気味な悲鳴を上げると。


「ひ、ひいいい、嘘だ。お前はレベル0なはず」


「正確にはレベル10000でさレベル9999以上は表示できないみたいなんだよね鑑定では、だから0」


「それ、まじなの?」


「で、お兄さんとしては質問に答えてくれる?」


「は、はい」


「えーと勇者候補生って何? なかなかブロック硬くてね」


「えーと勇者候補生とは33人の勇者であって、それぞれ力があって」


「勇者イルカス? 他の奴等が勇者ならなぜこいつだけ勇者イルカスなんだ?」


「えーと、その人は極秘事項でして」


「でも殺したぞ」


「はいいいいい」


「だから殺した」


「そうですか、極秘事項で他の32人にも情報伝わってないんです。俺っちとチェリーは最近なったばかりで」


「そうか、では死ぬか」


「ひいいいい」


「後の処理は任せるぞ、ボーン・スレイブ卿」


「うむ」


「俺は後ろの人間達を皆殺しにしてくる」


「ひいいいい」


 隊長と兵士100名が血相を抱えて後ろに逃げ始める。

 俺は狩人のように高速で飛来して、1人また1人と首を落としていった。

 狩る方と狩られる方が入れ替わった瞬間であった。


「た、たのむ、俺には息子と娘が」


「そうか、子供達に謝って死ね」


「家族がいるんだよ」


「この世界のどこにそんなルールがある。家族がいれば命は助かるルールなんてあるのか? こっちはそんなのないから次から次へと同胞が死ぬのを見てきた。お前だけがお前だけが助かる理由はなんだ? 教えてくれ」


「皇帝陛下、皇帝陛下が黙ってないぞ」


「そうか、それはとても嬉しい、俺は皇帝陛下って奴をお仕置きしたいんだよ」


「こいつ頭がいかれてるうううう」


 次の瞬間、高速の剣が飛来し1人の隊長の首がぼとりと落下した。


====★★★★====


「狩りか、迷信ゴウと逆行チェリーよ行け見逃してやる」


「え、でも」


「いぢの?」


「ああ、もう戻ってくるな」


「えへへ、ガイコツなら殺せるんだよねー」


「ただじゃかげらがないよー」


「そうか、そういう事なら、お前達が求める憑依玉とはわしの心臓と同化している。使いたくなかったがな」


 右手と左手を合わせ妻達の冥福を祈りながら、赤い炎に包まれた大剣が姿を現す。

 それを地面に突き刺す。

 数えきれないガイコツが召喚される。


「ただの骨でしょー」


「武器にするんだよねー」


「だが、それは違う。憑依玉とは自分を憑依させる。それも同じものを倍増させていく」


「え」


「うそだろ」


 その場にいるガイコツは数千体を超える。

 ボーン卿のレベルは50だ。

 50×1000は50000レベルとなり、1000体とボーン卿のレベルは50000となる。

 つまり1000体のガイコツ、いやアンデット1体1体がレベル50000という事だ。


「は、え、ひ、いいいいいいいいいいい、話が違うよおおおお、ごめんなさいいい」

「さっきのドワーフより最悪だわさ」


 2人は悲鳴もあげられず、アンデットの群れに押しつぶされ、引き裂かれ、ぐちゃぐちゃにされ、ばらばらにされ肉片にされ、存在そのものが消滅した。


 2人の男女の悲鳴が轟いていた。


 そこにオメガが戻ってくる。


「俺の力もチートだけど、お前もチートだな」


「それはお互い様であろう、さて、わしはこの屋敷から旅立とう」


「お、傭兵団に入るか」


「もちろんだ。世話になったしな、さて、お主がなぜレベル10000なのか教えてほし。たぶん憑依玉を使えば、わしを鑑定した奴もレベル0に見えるんだろうな、レベル9999以上鑑定で表示されないのは面倒だな」


「ま、普通にあり得ないけどねレベル9999超えるなんてさ」


「まぁな」


「ここに2人いるんだけどな」


「ふ、違いない」


 勇者候補生の残りは27名となった。

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