物語は少し先の未来、メタバースが発展し仕事や学校教育、恋愛からなる結婚も仮想世界で出来るようになり、人々の生き方は移り変わりつつあった。そんな近未来で、大学受験に失敗し路頭に迷っていた主人公が『グラウンド・オルタナス』というメタバースで構築されたゲーム世界で仕事を始め、仲間との出逢いや過酷な戦いを通じて次第に英雄として成長していく展開が丁寧に描かれています。
メタバースの世界が現実世界よりも理想である。そんな理想世界への依存、それが何時しか問題となり、現実の世界をも巻き込む事件へと進んでいく様は他人事には思えず、私達が生きる現実の未来でもメタバースを始めとした人類技術の発展が世界を滅ぼす結果を生みかねないと、ある種の問題提起を成されている作品なのだと感銘を受けました。
作者様の博識からなる世界情勢の詳細や考察は思わず感嘆の声が漏れるほどで、読んでいでとても勉強になりました。何よりRPGという世界観はやはり王道、それ故に好奇心がそそられます。
グラウンド・オルタナスが迎える結末、それは幸か不幸か、その行方をこれから作品を開く読者の方々が己の眼で見届けて頂きたいと切に願います。