第3話 学校までの道のりは60分。とても短い。
俺と神楽は同い年の2年生で今日は4月の新学期、始業式の日だ。
「あ、直人、春休みの宿題、ちゃんと終わらせたの?」
「‥‥終わったよ。」
「嘘!そんな顔でバレないわけないでしょ。
何年、直人の幼馴染だと思ってるの?」
「だって仕方ないだろ!あんな意味のない宿題にやる気なんて出ないだろ。」
本当に意味がない。なんだよ読書感想文って。
「それでも、やらないといけないことでしょ。」
「‥‥それはそうだけど。」
ぐうの音も出ないど正論だった。
俺たちはいつも、こんなくだらないことを話して学校に通っている。
(はぁ、本当にこれが続けば良いのに。)
駅に向かって歩いている時だった。
「ぷっぷ!!」
俺が青信号になって横断歩道を渡ろうとすると、70歳くらいのおじいちゃんが急に発進してクラクションを鳴らす。
後、もう一歩足を出していれば確実に交通事故に遭っていた。最悪の場合、死に至っていたかもしれない。
「あっぶな!!」
「ちょっと!大丈夫!?」
「あ、あぁ、なんともないよ。
ただ、とんでもなく危なかったな。あはは笑」
笑って流そうとした時だった。神楽が口を開いた。
「もう!心配してるんだから、そんな風に適当に流さない!本当に大丈夫なの?」
神楽の目が俺をじっと心配そうに、確かめるように見てきた。
「ご、ごめん‥‥。何ともないので、大丈夫です‥‥。」
ズルいと思う。
(俺はこの子に一生敵わないかもしれない。)
本当にそう思う。きっと、この子に『あの子が光さんに馴れ馴れしいから殺して』と言われれば多分、俺は出来てしまう。
‥‥そんなこと絶対言われないけど。
10分程歩いて、駅から電車に乗って30分、またそこから歩いて、20分で俺たちの通う学校に到着だ。
(短い、後一時間は欲しい。)
そう考えるたびに分かる。
俺の中で、兄さんと神楽がどれだけ大きくなっているかが。
(2人がいなくなったら、俺はどうなっちゃうんだらう?)
そんな得体の知れない不安が俺を渦巻いた。
神楽『あの子が光さんに馴れ馴れしいから殺して』そんなヤンデレ神楽も面白そうですね。
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