幕間の物語
幕間1 ウサギの妹
はいどーもこんにちは。
突然ですが黒羽ハルトの中の人の妹、稲葉ナナです。
最近お兄ちゃんが何故かシシマロと一緒の事務所に所属して、可愛くなって、そして人気者になってしまいました。
お兄ちゃんの可愛さは前から知っていたのに、皆が知ってしまいました。誇らしいのか、残念なのか。
ええ。そう。それまでお兄ちゃんの可愛さは独占していたのをここで告白します。
いやま、これ自分の日記だから誰に告白するつもりでもないんだけど、万が一ナナも有名人になったら?
この独白本も売れるかもしれないし?
とりあえず独白を続けよう。
さらに言うとお兄ちゃんをメカクレにしたのは何を隠そうこの私なのである。
というのも昔ハマっていたアニメのキャラクターでメカクレキャラがいて、不覚にも惚れてしまいまして。
顔立ちも体つきも似ているお兄ちゃんに三日三晩駄々をこねまくり、ついに折れたお兄ちゃんがメカクレをして、そのままというわけです。
本人は「俺、陰キャだからこれ楽だ」とか言ってたけどナナはわかってるぞ。やってみたらめっちゃ気に入ってたな?
んで可ますます可愛くなったので、コレはイケると思って。徐々に徐々にだけど、お兄ちゃんを可愛くしてしまおうという欲が生まれてきた。
ごめんねお兄ちゃん。
ナナね、お兄ちゃんの事女の子にしてやろうかと思ってた。ウヒヒヒ。
まずは上下ジャージマンからちょっとずつ服装を変えていって――と、思ってた矢先にああですよ。
一気に可愛くなっちゃいました。
お兄ちゃんだと思ってたんだけど、お姉ちゃんだったのかと錯覚してしまうほどだ。
そんなバカな小さい時にお風呂入ってちゃんとちんちん見たぞ。もしかして消えたのか? とわりとマジで性転換を疑った。TSってあるじゃん。アレですよアレ。
冗談はさておき、お兄ちゃんは男とか女とか超越した存在になっちゃった。
この辺り、産んだはずのお母さんも「確かに女の子みたいに可愛い顔だったけど」と首を傾げていた。
お父さんなんか戸籍謄本で性別まで確認してきて、ちょっと知り合いの寺で籠ってくるって言って滝に打たれてた。
帰ってきたらお兄ちゃんグッズを大量に買ってきたので、色々悟ったんだと思う。
そういえば『ダンジョンフレンズ』の社長さんは、
「息子さんは男とか女とかどうでもよくなる、次世代の超越したアイドルになる可能性を秘めている」
とか熱弁していたっけか。
ゲームの才能よりもここがものすんごい熱がこもってた。そこにシンパシーを感じて私もそっち側に回ってお父さんお母さんを説得したわけです。
シシマロに見初められて、というところが癪に障るのだけれども……今は感謝してる。『ダンジョンフレンズ』ありがとう。お兄ちゃんを可愛くしてくれてありがとう。
てか何、あのすんばらしい衣装デザイン。
鼻血もんだよ。
あんなの脱がないエッチだよ。
大人って汚い。
いいぞもっとやれ。
ただ、あともう少し短パンの丈を1インチ下にしてほしい。
ああ、短パン。
スカートでいう絶対領域だ。
太ももの半分からちょっと下あたりが好み。
この辺りは多分、デザインした人と趣味が合わないんだろうと思う。
出会った瞬間、解釈違いで殴り合える自信がある。
そうそう、学校でもみんなお兄ちゃんの話ばかり。
「ね、アレってナナのお兄さんだよね?」
「お兄さん、なんだよね?」
「あの、サイン欲しいんだけど……どうかなぁ」
「この前シティで見たけど可愛かった」
「いいなあナナは。あんな可愛いお姉ちゃんがいて」
「違うハルトきゅんは男だろ」
「あんなに可愛いのは男だろ」
「男とは……女とは……そうか、わかってきたぞ……」
と、みんなお兄ちゃんの可愛さを理解しつつも混乱していた。
あたりまえだ。ナナだって混乱する。
なので、たま〜に帰ってくる時に股間を蹴り上げて確認している。
もちろん本気で蹴ってない。けどお兄ちゃんはちゃんと回避したり受け止めたりして「何すんだ!」って本気で怒る。
その反応を鑑みるに、ちゃんとついてる。ちんちんついてる。ナイスちんちん。オッケー。ちゃんとお兄ちゃんだ。
そういえばお兄ちゃんのあの体の動かし方なんだろう。武道とか習ってないはずなのにすんなり避けられる。あと足音がやたら静かで、気づいたら背中に回られてるのもビックリする。
そのあたり聞いてみたら「
あれ、配信業じゃなかったっけ?
なんで軍隊?
餓狼な感じでバーンナッコーするの?
深く聞いてもリアルトレースボーナスがふんちゃらかんちゃらとか言ってよく分からないから、「なーほーねー」って頷いておいた。よーするにバトルで有利って事らしい。
バトル、か。そう、あの事件とか、レモンちゃんと戦ってた時とか。その時だけはお兄ちゃんだった。
あのド汚い戦い方はお兄ちゃん。昔からゲームになったら容赦がなかった。何度も泣かされて、何度もお父さんお母さんに叱られてた。
けど、だんだんとああいうのも一つの突き詰めた道なんだなーと思ってきた。勝つために手段を選ばない、勝つまでジッと耐えて時には逃げて、最後はちゃんと勝利をもぎ取っていくっていうあの姿。ちょっと好きだったりする。
そんなことをしていたら『インビシブルフロンティア』まで救ってしまって、英雄とまで言われるようになった。
可愛さにも磨きがかかって、もう普通にナナよりも可愛い。
時々お土産とかプレゼントが送られてくるんだけど、段々お菓子とかから流行のコスメとかになってきて「やっぱりお姉ちゃんやないかい!」って一人でツッコンでたっけ。
ただそこからちょっとの間、報道陣とかが来て、ナナも追いかけられた事があった。
お父さんもお母さんもそうだったらしい。どっちも自営業で……いまだに何やってるかわかんないんだけど……仕事にならねーってボヤいてたっけ。
そしたらあの社長さんがまたしても頭を下げにきて、ハワイ旅行をプレゼントしてくれた。そりゃもうすぐ行ったよね。夏休みに入る頃だったからちょうどよかった。
お兄ちゃんにラインしたら「俺は軟禁状態なのに!」って怒ってた。ただ送ってきた写真がハーレム状態なのがイラッとした。大丈夫かなお兄ちゃん。襲われてないかな。ちんちんムキムキされてないかな。もげればいいのに。
お父さんはその写真を見た瞬間、血の涙を流して「まだお前には早いが、羨ましい」って叫んでて、お母さんにどつかれてた。ただすぐ仲直りしてた。この二人ずっとイチャイチャしてるんだよね。お兄ちゃん何とかして。
ちなみに護衛もつけてくれると言ってたけど、その人見えてる肌が全部傷だらけで超怖かった。
ただ話してみたら優しかった。なんでもお兄ちゃんたちのドライバーの一人で、武術師範でもあるとかなんとか。
お兄ちゃん、マジで何を習ってるの? パワーなウェイブできそう?
そんなわけで、今はワイキキビーチが見えるスウィートルームで日記を書いてる。お父さんもお母さんもはっちゃけてる。めっちゃイチャイチャしてる。ねえナナのこと忘れてない?
まあいいか。幸せってことで。
お兄ちゃん様様だ。私が最初に可愛さを知ってたんだぞ、というのもあるけど。みんながお兄ちゃんの可愛さに気づいてくれてよかったと思う。
なんか羨ましいなぁ。
ナナも目指してみようかな、配信者。
なんでも「ウチには妹系がいない」とか、何とか。
それとお兄ちゃんに負けず劣らずクる顔をしてるって言ってた。
クる顔って何だ。
あのハァハァしてた顔ちょっと怖かった。
一昔前、まだ小学校の頃に持ってた防犯ブザーがあったら躊躇なく引っ張ってた。そういう顔だった。
―――――――――兎―――――――――
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―――――――――兎―――――――――
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