知らずに超高難易度ダンジョンに潜っていたソロ専の俺、うっかり美少女ダンジョン配信者を助けてしまい師匠と呼ばれ大バズり。そして何故か俺まで配信者になってしまった~薩摩ラビットはもう逃げない〜
第01話 ソロ専の俺、ここを超難易度HELLと知らなかった
知らずに超高難易度ダンジョンに潜っていたソロ専の俺、うっかり美少女ダンジョン配信者を助けてしまい師匠と呼ばれ大バズり。そして何故か俺まで配信者になってしまった~薩摩ラビットはもう逃げない〜
西山暁之亮
シーズン1:薩摩ラビットはもう逃げない
第01話 ソロ専の俺、ここを超難易度HELLと知らなかった
なんやこのクソゲーと、そう吐き捨てるのは簡単だ。
ログアウトして現実世界に戻り、フルダイブ用のヘッドギアを放ればいい。
この俺、稲葉ハルトはそうやって途中で投げ出すのはあまり好まない。だからこのゲームをクリアするまでずっとやるつもりでいた。
例えば今、目の前にいるミノタウロス。牛頭でムッキムキのモンスター。ポージングしたなら「ナイスバルク!」と言いたいところだが、たかだか地下3階に出てくるようなやつじゃない気がする。
持っている斧の一撃は強烈無比。他のモンスターを巻き込んでバラバラにしてしまうほどの威力があった。食らったら一撃死だと思う。
普通こんなレベルの敵、ボスで配置するじゃんか。でもまさかの雑魚。油断しているとワラワラ集まってくる。
……絶対ゲームバランスおかしいよ、これ。百歩譲っても最下層で雑魚として出てくるならわかるけど序盤は意味がわからない。
「ここだ!」
ミノタウロスが斧を大きく振りかぶった時、俺は迷わずスキルを選択する。
「いくぞ! 【ラビットスモーク】!」
ちゅどん!
俺がカラーボールのようなものを地面に叩きつけると、煙が一気に広がる。
煙幕だ。視界に頼るモンスターなら良く効く。ミノタウロスは真っ白な視界の中で俺を完全に見失っていた。
『スキルボーナス:隠密+100%』
『
『
視界の端っこにシステムログが表示される。フルダイブ型ゲーム特有の表記だ。
今、俺が煙幕を張っている間は300%見つからないし、クリティカルダメージが二倍の状態になっている。
300%見つからないって何だよと言われたら、攻撃しても気づかれないと言えばわかるだろうか。
「そのまま見失っていてくれ……」
敵の背後に回る。うかうかしているとアイツが斧を振り回して、風圧で煙を吹き飛ばすかもしれない。その前に攻撃スキルでトドメを刺す。
「……ここだ! 【ヴォーパル・ブレード】!」
攻撃スキルを発動させると、俺の右手のショートソードがブン、と青白く輝く。まるでレーザーブレードのようだ。
『スキルボーナス:即死効果付与』
『スキルボーナス:即死率+50%』
『スキルボーナス:クリティカル率+100%』
『隠密ボーナス:即死率+30%』
『バックスタブボーナス:防御無視』
このゲームはバフゲーだ。だから攻撃スキルが少ない俺の
思い切って飛びかかる。俺の
剣を突き出す。ミノタウロスの背にヌルリと【ヴォーパル・ブレード】が刺さった。
「グォアアアアアアアアア!」
ミノタウロスが悲鳴を上げた。俺はすぐさま離脱する。ヤツの近くにいると、死ぬ間際の斧ぶん回しに巻き込まれてしまうからだ。
やがてミノタウロスは膝から崩れて倒れる。パァッと金色の光に包まれて消えると、ドロップアイテムが出現した。
ドロップアイテムは浮かぶ半透明のキューブで、レア度によって星がついている。触れてみると、アイテムストレージに追加されたのは黄色いタグのついた武器だった。
「またミノタウロスの斧。しかも⭐︎が一個」
肩を落とす。俺の
ちくしょうめええと叫んでも、この廃城のような階層に虚しく響くだけだった。
「やっぱりゲーマー拗らせて不遇な
さっきから言っている
ほとんどが動物の名前で、沢山あるが、そのうち一つだけ宿すことができる。宿すと
俺の宿している【ラビット】は撹乱や逃走、あとクリティカルヒットに特化した
いくらかマシなのがさっき使った【ヴォーパル・ブレード】。攻撃に即死効果が付与されて、必ずクリティカルになる。隠密状態だとさらにボーナスが加算されるというピーキーなスキルだ。
だからだろうか。【ラビット】はパーティー用には全く使えないだとか、攻撃スキルのクセが強いとか、いわゆる産廃のレッテルを貼られて散々な評価を受けている。
……らしい。
まあそりゃそうだよねと、使い込んでみてわかった。ソロ以外使い道がわからん。ワンチャン、逃げる時にパーティーが全員逃げ切れるというのは大きい。
……のか?
いやまぁ知らんけど。
実は俺、攻略Wikiとか見ていない。
SNSや配信動画も基本的にネタバレ回避している。
何故なら楽しみをとっておきたいからと、やっぱりゲーマーの血が騒ぐからだ。
特にこの世界的に人気なフルダイブ型ダンジョン攻略RPG『インビシブルフロンティア』は、そのあまりの造り込みのあまりの素晴らしさに、攻略を見るのが失礼なような気がしたからだ。
とはいえ普通なら地下30階以上、トッププレイヤーはもう地下100階に到達している中、たかだか3階でつまずいでいるのは情けない気もする。
「てか、こんなに難しいのになんで人気なんだ? なんでみんな簡単に30階とか行けるんだ??」
もしかして俺、ゲーマーを称してるのにゲーム下手だったということだろうか。
学校では陰キャで、とりたてて特徴も無く前髪だけ伸ばしてメカクレ気取ってる一般高校男子が唯一得意だと思ってたゲームの腕前が、世界から見たらクソ雑魚ナメクジ級だったってこと?
やだ恥ずかしい。死にたい。
「……せめて
獅子崎マロンとは、俺が推しているトッププレイヤーでありゲーム配信者のこと。
ゴリゴリな攻撃偏重の
ネタバレしない範囲で動画を見ても、双剣で踊るように闘うのはカッコよかった。
顔も可愛いし、装備もめっちゃ可愛いから思わず見入ってしまう。
テテーン♪
急に軽快な音と、ブワッと浴びせられる光。レベルアップのようだ。
「レベル上がっても素早さしか上がらないしな……あれ?
目の前に表示されたのは
選べるのは二つに一つ。一つは【キラーラビット】とあった。ステータスのアイコンに表示されているのはパーカーフードを被り、ナイフを咥えたおっかない顔のウサギのアイコンだ。
「はあ。即死効果がつくスキルが増えるのか。でもこれ、ボスとかには効かないよな?」
即死はボスに効かない。これゲームの常識。となると雑魚戦は快適だけどボス戦で役立たず。ソロならもう詰みということだ。
「もう一つは……何これ。【サツマラビット】? アイコン怖ッ」
まだ【キラーラビット】の方は可愛げがある。サツマの方は何故か日本の兜を被った般若の形相のウサギの首に、日本刀がクロスしていた。
「説明もいい加減だな。『語るは女々しか』……いやいや。語れよ。何だよ一体」
だめだこりゃ。
やっぱり攻略見よう。無理だ。
このゲーム情報多すぎて一人の力じゃ処理しきれない。手探りだといつまで経っても先に進めない。いいよヘタレゲーマーで。いや、ちょっと悔しいけどさ。
てか何だこの【チェスト】ってこうげきスキルは。何となく【ヴォーパル・ブレード】の進化系攻撃スキルってのはわかる。でも説明が『チェストはチェストじゃ!』って一行しか書かれていない。多分進化して実際に身につけないと開示されないヤツこれ。
まあいつでも切り替えられるらしいから、あとでゆっくり調べておこうかな……
「ひぃぃぃやぁぁぁぁ! 助けてぇぇぇ!」
やかましい声が聞こえてきた。女の子の声だ。複数の足音から察するに、勝てないモンスターを沢山連れて逃げているのだろう。初心者あるあるだね。
てか、地味に初めて出会った他のプレイヤーのような気がするけど……?
「なんか聞いたことある声だな……てぇ!? 獅子崎マロン!?」
「へぇ!? なんでこんな所にプレイヤーが!? ここ超高難易度なのに!?」
―――――――――兎―――――――――
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―――――――――兎―――――――――
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