霊能者だって活躍したい!

Nさん

第1話 いざ、遠足へ!

「スーザン!また明日ね!」

そう言ってアンナは電車を降りていった。

「ふぅ。」

大きく息をつく。こうなる事は予想出来たはずなのに、私には何も出来なかった。

こんな思いをするなら、この役職なんて要らなかったな。神父様も残酷なことをしてくれるものだ。

私は1人そんな事を考える。電車はそんな私を乗せて、無機質に走るだけだった。

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今日は遠足の日だ。

私たちは学校からバスに乗って、近くの遊園地に遊びに行く。帰りは各々現地解散する予定だ。

行きのバスの中はある話題で持ちきりだった。私たちの学校では、ある年齢になると、神父様から一人に1つの役職が与えられる。そしてまさに昨日、みんなが役職を頂いたばかりなのだ。よってクラスメイトのテンションが高いのも頷ける。

だから前の席から、「俺は"狩人"だったぜ!今日は俺がみんなを守るからな!」なんてはしゃいだ声が聞こえるのも、今日に関しては仕方ない。いや、マイクはいつもうるさいから関係ないか。ちなみに"狩人"とは、他の人を危険から守ったりする役職だった気がする。通路を挟んで向こうの席では、サンドラがやたらとジェシカにすりすりしていた。ジェシカはそれを優しく見つめている。あの2人は本当に仲が良い。今や学校全体でも有名な、双子の姉妹である。


「.......はぁ」

ため息が思わず出てしまった。すかさず隣から声がかかる。

「どうしたのさアンナ、ため息なんてついちゃって。」

「いや聞いてよスーザン!私の役職は"霊能者"だったんだよ!」

「良いじゃない。なんの能力もないよりは。」

彼女はチラッと男子の方に目を向ける。

「だって死んだ人と会話しても面白くないじゃん!」

「えー、そうかな。私はできるなら、死んだおじいちゃんと話してみたいな。」

「それは自分が"霊能者"じゃないから言えるんだよ!せっかく楽しみにしてたのに....もっとかっこいいやつが良かった!」

だって入学した時から楽しみにしてたのだから。

「むー、そんなものか。」

「そう言えばスーザンの役職はなんだったの?」

「私?私はね.....」

「着いたぞー!順番に降りて整列しろー!」

先生の声がかかり、みんなが足早にバスを降りる。そう言えばスーザンの役職聞けなかった。後で聞こーっと。


「よし、注意事項は以上だ。あとは自由に楽しむように!では解散!」

先生の声と共に、我先にと散り散りになっていくクラスメイト達。私も役職のことなんて忘れて、全力で楽しむことにした。

「スーザン!行くよー!」

隣にいる親友に声をかける。スーザンはクラスメイトの様子をしきり気にしている様子だった。どうしたんだろう。

少しだけ気にしつつ、私は親友の手を引いた。


そこからの一日はあっという間だった。ジェットコースターにも乗ったしお化け屋敷にも入った。可愛くて美味しいものも沢山食べた。

お昼に1度地震が起きて騒ぎにはなったけれど、ご飯中だった事もあって影響はあまりなかった。運行中止になった乗り物もあるみたいだけど、目当てではなかったし。

日も暮れる頃になり、そろそろ帰ろうかなんて考える。隣を歩くスーザンは、スマホ片手に少し青ざめた表情をしているみたいだ。多分疲れたんだろうな。可哀想に。

同情しつつ、「自分のせいだろ」とセルフツッコミを入れる。私が一日中連れ回したのだから無理もない。

その時前方に見知った顔が見えた。クラスメイトのジェシカだ。あれ、でも妙だな。気になって話しかけてみる。

「ねぇ、どうして1人なの?」

そう、いつも一緒の仲良し姉妹のはずなのだ。でも何故か、サンドラがいない。

隣のスーザンは青ざめた表情のまま、不思議そうに首を傾げている。ジェシカは無言のまま遊園地の外を指差した。何か事情があるみたいだ。スーザンは何も言わない。

「スーザン!帰るよ!」

親友の手を引く。姉妹の事情は分からないけれど、もし私に出来ることがあるなら協力してあげたい。

私たちは遊園地を出ると、急いで電車に乗り込んだ。


「いやアンナ、あんたの家こっちじゃないだろ。」

隣で親友が困惑している。それもそのはず、私とスーザンの家は反対方向なのだ。

「いやいや!明日休みだしさ!途中まで送るよ!それにサンドラのこともあるしさ!」

途端にスーザンは表情を歪ませる。

「アンナ。いつそれを?」

「いやいや、さっきだよ!」

そう笑いながらジェシカの方を振り返る。ジェシカは無表情のまま何も言わない。

「.....アンナは明るいな。クラスメイトが死んだって言うのに。」

........。

............

.................は?

思考が停止する。意味がわからない。

いや、急展開過ぎるでしょ。そっとジェシカの方を向く。ジェシカはやはり何も言わない。

え、これってサンドラが死んだって事だよね?どうして?いつ?どこで?

そしてスーザンはいつからその事を知っていたの?

頭の中を沢山の疑問符が、一瞬にして駆け巡る。

スーザンはこれ以上何も話す気はないようだ。

するとその時、ジェシカが窓の外を指差した。つられて見てみると、線路沿いを歩くサンドラの姿があった。

.....あれ?サンドラが死んだんじゃないのかな?

死んだ人間が見えるだなんておかしな話だ。

そう思うと同時に私は自分の役職を思い出す。"霊能者"なんだから、霊が見えたって不思議じゃないはずだ。そして確信する。私の役目はきっとこれに違いない。

「スーザン!やっぱりここまでにする!また明日ね!」

私はジェシカを連れて、慌てて電車を降りた。さあ、急いでジェシカとサンドラを会わせないとっ!

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