10/17 カメムシ戦記
どうもお久しぶりです。先日、といっても去年の十月なので三ヶ月前の日記を今書くんですが、IQの高いカメムシと戦いました。カメムシVS我が家の戦記です。
事の発端は夜中、お風呂上がりに脱衣所でブウウーーーン……という音がしたことでした。しばらくすると収まったので「なんだ『ドグラ・マグラ』か」と気にせず寝巻を着終えたんですが、やっぱりブウウウーーーン……と聞こえてくるんですよね。
ここでの最大の失敗は眼鏡をかけずにあたりを見回したことです。私の視力は自慢じゃないですが手のひら一つ分以上離れると何もかもぼやける程度のものです。でも洗面所の扉の近く、壁に小さな緑色のものがはりついているのは分かるわけです。
それで気付いたんですよ。「これ『ドグラ・マグラ』じゃなくてカメムシやん」と。
服を着ているのは幸いとして、眼鏡に手を伸ばせば今まで活発に飛び回っていたカメムシが刺激されてまた飛ぶ可能性がある。次飛ばれればどこに行くか今の視力では追えないかもしれない。なによりまずいのは洗面所の扉が少し開いていたことです。
この洗面所内から逃せば、他の部屋のどこに入り込むか分からない。
洗面所内で始末しなければならない。
そう考えて、カメムシが飛ぶ前に洗面所から出て素早く扉を閉めたわけなんですが、中から活発に飛び回るカメムシの羽音がめちゃくちゃ聞こえてくる。恐らく干していたタオルにくっついて入ってきたんでしょうが、またタオルに潜り込まれたら厄介この上ない。
とりあえず予備の眼鏡をかけて視力を取り戻しました。眼鏡ってすごい、視界がクリアになっただけで不安が激減する。でも手持ちの武器がゴキジェットしかないと。カメムシに効くんかなと。そこで「夜風に当たりに行ってくる」とドラマのようなセリフを残して家を出た家族に電話をかけたんですよ。「コンビニに虫退治のスプレーとかがあったら買ってきて」と。
帰ってきた家族は「急に電話が来たから強盗にでも入られたのかと……」と言ってましたが、電話をかけさせてくれる強盗がどこにいるんですか。安心してくださいカメムシです。
コンビニに虫退治のスプレーがなかったので、こちらの武器はゴキジェットと新聞のみ。家族が「ゴキジェットはカメムシに効くん?」ときいてきたけれども、「分からないけど、前に部屋中にゴキジェットを噴射したところ吸い込んだ自分が体調を崩した。自分に効くならカメムシにも効く」としか答えようがありませんでした。
とりあえず作戦としては、ゴキジェットでうまくカメムシを弱らせる。ポトリと落ちるか、動く力を失ったところで、新聞紙でくるむ。いきなり潰す案は却下しました。臭くなるので。
ふたりしてそろそろと洗面所のドアを開け、カメムシの姿を探す。さっきまでブンブンと勢いよく飛び回る音がしていたけれども、今は消えたかのように静かです。というかほんとうに消えたのではというほどどこにも見当たらない。
扉の隙間から逃げ出される心配をしながら探していると、家族が「あっ」と天井をさしました。
カメムシは火災報知器にはりついていたのです。
内心歯噛みをしました。ゴキジェットを下手に噴射すれば、火災報知器が反応してご近所をたたき起こすことになる。すでに零時を回っている。それだけは避けなければならない。
ためらっているうちに、カメムシはさらに安全策を取りました。火災報知器の隙間に入り込み、完全に身を隠したのです。
家族がつぶやきました。
「……あのカメムシ、IQ高いぞ。俺らと同じくらいや……」
カメムシが自分たち並なのか、自分たちがカメムシ並なのか。せめて前者だと思いたい。
「火災報知器が鳴らない程度に軽くかけて、逃げ出させよう」という作戦になりました。ゴキジェットを持っているのは私なので、しぜん狙撃役となります。(私はシモ・ヘイヘだ……伝説の狙撃手なんだ……)と精神集中をしました。
意を決してトリガーを引くと、火災報知器の三十センチくらい下にゴキジェットの煙が発射されました。
私は狙撃手になれませんでした。
それでも煙が上の方にいったのか、幸いにもカメムシが這い出してきました。こうなったらこっちのものです。弱りかけたカメムシに何度かこう、シュッシュッとゴキジェットを吹きかけて、ポトリと落ちたところを家族が新聞紙でくるみました。
カメムシVS我が家、無事勝利となったわけです。
すべてが終わったあと、家族がふと言いました。
「あのカメムシは賢かった。IQ3くらいはあった。でもこっちはIQ2がふたりいたから、足してIQ4で勝てた」
合計IQ4の家族もカメムシに勝てるのです。
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