第三章「それぞれの勘違い」4
落ち着いた表情で帰って来た男三人を、ケイトはただ一言「お帰り」と言って労った。しかしその目は、少し腫れていて。精一杯強がっている彼女に掛ける言葉は、今のシズクには見つからなかった。
ただ、「ただいま。ありがとう」とだけ伝えると、ふっとその口元が緩んだのを見て、シズクの方が感情を抑えることが出来なかったくらいだ。
飲みかけのコウとリュウトのアイスコーヒーには、もう氷は残っていなくて。その溶けた様子がまるで、リュウトの今の心のように思えた。
「さーてと、俺はもう一杯飲み直してから行こかなー。さすがに付き合いたてのカップルの邪魔したあないしー」
大袈裟なまでの嫌味っぽい台詞を吐いて笑うリュウトに、ケイトも「それもそうだな。私もお供しよう」と同意した。
「そういうことなら、ここからは少し……別行動にしようか。シズクも、それで良い?」
「うん。じゃあ十七時に門の前で集合で」
カフェの壁に掛かった時計は、十四時になろうかというところだった。
腰を落ち着かせた二人の提案(強がり)に乗って、シズクはコウと二人でカフェを出た。
もちろん、今回は飲み物代のお金を置いて。あの恋人の聖地を出る時からずっと、コウはシズクと手を繋いでくれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます