私が忘れても
霜石アラン
序章 砂のように
暗い所にいた。何もかも飲み込みそうな闇の中。なんで私はここにいるんだろう。
フッと目の前にハートの形をした砂の塊が現れる。
「あっ……」
頭に浮かんでくる様々な思い出。ここには来たことがある。……地獄とも天国とも言えるこの場所に。
そして、何が起こるか。……わかってしまった。
なんの前触れもなく、ハートの砂の塊が端から崩れていく。
「あ……ああ!!」
慌てて崩れていく砂をかき集める。だが、砂は指の隙間からこぼれていく。
「やめて……やめてよ」
私は祈る。失いたくなかった。母の笑顔。父の温かい手。兄の話。そして……。
「――あ……れ?」
思い出せない。あの人のこと。大切で、あんなにも好きだった人のこと。
砂の塊は完全に崩れて、闇に砂が飲み込まれる。
砂と一緒に記憶が消えていく。
「嫌、嫌だ。なんで?なんでなの……?」
消えないで。怖いよ。怖いよ。誰か……!!
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