番外編 イフストーリー〜赤音の大学生活〜

 私には、異世界でも、人間世界でも、最強の騎士であり、大学生の幼馴染がいる。

 その名も、真君。

 彼は、極度の変わり者。


 真君を支えたのは私だけど、なぜか真君は私のことを好きにならない。

 私は、小さい頃から真君が好きで、こんなライトノベルみたいなハーレムを送るよりも、私に一途でいてほしくても、彼にはそれが伝わらない。


 私の名前は、西園寺さいおんじ赤音あかね

 男子大生の幼馴染に思いを寄せ女子大生。

 身長は高くもなければ低くもない、150センチ代後半。

 真君の従兄の勇気さんにどんなに言い寄られても、私の本命は真君に決まっていて、浮気男なんて相手にしない。


「俺、好きな人ができちゃった」

 

「今度は、どんな人?」


 他人に思いを寄せるとかはしないでほしい。

 だけど、あいつは告白しても、振られる。


「先輩だよ。

スポーツサークルの体育先輩」


 あいつか。


「巨乳じゃないけど、いいのか?」


「巨乳なんて、浮気されるだけだし。

勇気にとられるから、いやなの」


 その言葉に、私も巨乳だから、傷つくところがある。


「あかねちゃん、今は貧乳の時代なの」


 女性のことを、胸で判断しているのかな?

 本人は自覚がないのだろうけど、思ったことをそのまま言葉にしてしまう傾向があるから、それが相手を無意識に傷つけてしまうことがある。


「だから、一緒にサークル入ろう。

赤音ちゃんにも、体育先輩の良さを知ってもらいたいから」


「入るって、そのサークル、真君はできるの?」


「できるかできないかじゃない、やるかやらないかだよ」


 私は、真君が弟みたいでほっとけないから、面倒を見てしまうところがある。

 結構、無謀なところがあるって、わかるでしょ?



 私と、真君は、異世界の大学にいる。

 その理由としては、話すと長くなるけど、私も真君も、二人で同じ学校に行った方が安心するというのが一番、大きいかもしれない。


 私は、水色とも呼べるような赤髪ショートヘアーで、真君に片思いをする幼馴染で、性格は自分で言うのもなんだけど、世話焼き女房。

 同じ大学の男子たちからは「お色気要員」と呼ばれるほど、自他ともにスタイルはいい方だけど、真君には全然見向きもされない。

 露出が多い服をあえて着ているのに、真君はそれでも他の女性のところに目がいく。


 私と誠君で、サークルに向かった。

 

 先輩の名前は、モーション先輩だ。

 誠君の片思いの相手。


 真君は惚れっぽくて、すぐにいろいろな女性を好きになり、勇気さんにとられる。

 でも、まあ、また失敗に終わることは目に見えている。

 私が真君を好きなら、告白すればいいだけかもしれないけど、真君には最悪の人がいる。


 嫉妬深いカンツォーネさんは、だれかが幸せが成就することが気に入らなくて、恋人がいる人や、異性から人気がある人を見つけては、攻撃をする。

 それに、勇気さんも、従弟に好きな人がいるということも黙ってられないらしくて、すぐに自分の物にしては、妊娠が判明したら、姿を消すことの繰り返し。


「真君、モーション先輩にも迷惑がかかるよ・・・」


「それでも、好きになった人のことを全力で守りたいから・・・・」


「え?」


 真君、その言葉は私だけに向けてほしかった。

 いくつもの女性を好きになっては、かっこいい言葉を使う。


 だけど、それを素直に歓迎できない自分がいる。

 真君が大切にするのは、私だけでいいなんてわがままかな?


「モーション先輩、おはようございます」

「ああ、おはよう、まこっち」


「まこっち!?」


「そう、実は僕は先輩からあだ名で呼ばれているの」


 真君は、嬉しそうだけど、私だって、まこっちで呼びたいよ。

 最初は「井藤君」と苗字でしか呼べなかったけど、頑張って「真君」と下の名前で呼べるようになれたの。


 モーション先輩は、スタイルもよくて、髪が長い。

 私ももう少し細ければ、髪も長ければいいのかな?


 私は失恋をきっかけに、ショートカットにしたけれど、真君はすぐに別れた。

 もちろん、真君が別れた理由なんて、勇気さんにとられたからだけどね。


「赤音も、ちゃんと挨拶して」


「お・・・・おはようございます」


「おはよう、たしか赤音ちゃんだっけ?」


「はい、そうです。

これから、よろしくお願いします」


 モーション先輩の笑顔・・・・すごく素敵。

 同じ女性同士でも、惚れ惚れしちゃう。


「モーション先輩、この笑顔、すごく素敵です」


 真君が言ったけれど、私の嫉妬が胸の中で湧き上がることが自分でもわかったけど、多分、真君にもモーション先輩にも、その気持ちは伝わっていない。


「そんなことないですよ。

それより、まこっちは、赤音ちゃんのことをもう少し、気にかけた方がいいんじゃない?」


「どういうことですか?」


「さあ、どういうことだろうね」


 モーション先輩は、私にウィンクした。


 もしかして、モーション先輩は私の気持ちに気づいてくれた?


 モーション先輩が「あかねちゃんと二人だけで話がしたい」と、真君に伝え、私を体育館倉庫の裏に呼び出した。


「モーション先輩?」


「赤音ちゃん、やっぱり、幼馴染であるまこっちのことが好きなんだね?」


 モーション先輩は、真剣な顔だった。


「はい。


ですが、真君が好きなのは、モーション先輩って聞きました」


「あたしも、幼馴染がいるから、その気持ちはわかるんだ。


大好きだった幼馴染はあたしの気持ちに気づくことなく、他の女とくっついて、家庭を持ってしまったけれど、赤音ちゃんには、まこっちが本気で好きなら、あたしのことを気にせず、ぶつかってほしいんだ。


後悔しないようにね。


幼馴染に失恋したら、辛いだけだから・・・・。



まこっちも、気づいてないだけで、もしかしたら、赤音ちゃんが好きかもしれないって思うところがあるんだ。



これは、赤音ちゃんのためでもあるし、まこっちのたまでもあるんだ」


「真君は、わたしの思いなんて、これぽっちも気づいてくれないです・・・・」


「まこっちの気持ちについては、あたしの勘でしかないけれど、だけど、赤音ちゃんがまこっちを好きな気持ちは本物だと思う・・・・」


「先輩、ずるいです・・・・。


私も、まこっちって呼びたいです」



「呼びたいなら、呼べばいい」


「え?」


「赤音ちゃんは、可能であるはずのことを、自分で不可能にしている気がするんだ。


幼馴染なんだから、まこっちって呼んでも、何も失礼なことはないんじゃないのか?」


「それは・・・・」


 モーション先輩の言うことも、正しいかもしれない。

 私が何て呼ぼうと、自由なんだ。


「それに、どうして、まこっちに告白できないんだい?」


「こわいからです・・・。


真君と今の関係が崩れることが・・・。


真君には、他人の恋を奪うような浮気性の従兄もいますし、人の幸せを妬んで、攻撃をするカンツォーネさんもいます。


だから、私が素直になったら、幸せが壊されていくような気がして・・・」


 泣くことをこらえながら、私は必死に語る。

 そう、自分が幼馴染にも言えないような、本心を。


「実は、人の恋を奪うことも、人を妬んでの攻撃も、自分自身を不幸にしてしまう行為でしかないんだ」


「そんなことって?」


 勇気さんも、カンツォーネさんも、幸せじゃない?


「浮気をして、本当の恋が得られると思うかい?


人を妬んで、攻撃したら、何が残るんだい?


その人たちは、孤立するだけだ」


「言われてみれば・・・・」


 勇気さんも、カンツォーネさんも、本当の友人もいないし、孤立しているようなものかも。


 モーション先輩の言葉に元気づけられた私は、告白を決意する。

 だけど、それは今じゃない。

 カンツォーネさんや、勇気さんとも「本気だ」ってことを示さなくてはならないのと、恋が成就することは期待しないことだ。


 だけど、別の日に「モーション先輩、付き合ってください」と告白する真君がいた。


「まこっち、本当にそれでいいの?」


「いいんです。

だって、本気の恋ですから」


 このやりとりを見て、私はモーション先輩と、真君の恋を応援する決意をした。

 恋が叶うことが、すべてじゃない。


 応援してあげることも、大切なんだ。


 だけど、次の日に、真君とモーション先輩の遺体が発見された。

 犯人は、カンツォーネさんだった。


「カンツォーネさん、どうして?」


「リア充見てると、妬ましくなるのよ・・・・」


「私にも、同じことをしにきたんですか?」


「ううん。


リアルが弾けていない人のことなんて興味もないわ」


 歩いて、去っていく唄さんに大きな声で


「カンツォーネさん、私、本気の恋に気づけました」


「恋?


へえ、どんな恋が聞かせてくれるかしら?」


「私は、真君の恋を応援しようと思いました。


だけど、モーション先輩のことも、ちょっとは憎いなって思っていたんです。


だから、このまま生きていても、私は辛かったと思います」


「助けたつもりではなかったけれど、つまらない人ね」


「つまらなくありません。


カンツォーネさんは、絶対に幸せになれません」


「そうね。


あたしは、幸せじゃない。


だから、あたしが幸せになれる未来があるなら、探してほしいわ」


「なれます。


絶対、なれます。


時間は、戻せるんです」


「時間が戻せるって、どういうこと?」


 カンツォーネさんは、意味がよくわからなさそうだった。


「カンツォーネさんにとって、世界一無敵な騎士を見つけてほしいんです。


私も、私の世界一無敵な騎士を見つけられたんですから、カンツォーネさんも見つけれます。


カンツォーネさんにも、素敵な幼馴染ができるといいですね」


「話がよくわからないんだけど」


 私の能力は、パラレルループ。

 パラレルワールドに移行できるけど、それにはカンツォーネさんも一緒にいってほしかった。


 カンツォーネさんが、このままだれかの殺人を行うくらいなら、パラレルワールドで幸せな未来になれるようにすればいい。

 他にもいい方法があるかもしれないけど、私ができることと言えば、このくらいだった。


 パラレルワールドでは、幼馴染と報われるようにしたい。


「聞いても、忘れちゃうだろうからさ、このまま騙されたと思って、私と一緒に行くしかないですよ。


パラレルワールド」


 カンツォーネさんは一瞬青ざめていたかれど、私は構わずに、カンツォーネさんと一緒にパラレルワールドに旅立った。

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