第6話 早すぎた恋愛

 私は、まだ真君が好きなんだと実感させられた。

 まだ、彼を、幼馴染の恋を諦めきれないでいる。


 真君は、私を恋愛対象として見てないけど、私はずっと一緒にいていいのだろうか?

 男女の友情は続かないと言うし、どこかで壊れてしまいそうな気がする。


「真君」


「赤音?」


「モーション先輩ともし、付き合うことができたら、どうするつもり?」


「そんなことは、決まっている。


彼氏彼女らしいことをするんだよ」


「それって、どういう意味?」


「そのままの意味だよ」


「真君は彼女できたら、私との関係はどうなるの?」


「どうなるって、変わらないよ。


俺にとって、赤音は大切な幼馴染だし」


「彼女できたら、彼女優先の生活になるんだよ。


真君は、私がいなくても大丈夫なの?」


「赤音は、何を質問しているの?


彼女優先の生活になるわけなくて、赤音との付き合いも大切にしていくよ。


大事な幼馴染だし、どんな時も俺のそばにいてくれたんだし、俺が赤音を見捨てるわけないじゃん」


「そうなんだ・・・・」


 そしたら、どうして、真君は私のことを好きにならないの?

 そして、真君に彼女ができた場合って、私が邪魔者になるはずだけど、彼はそのことすらもわかれないんだね。


「私、真君に彼女できるのいやかも」


 私は、なんてことを言葉にしているのだろう?


 私の心はきれいじゃない。

 いつでも、嫉妬心がある。


 これで、真君は私が好きだってことに気づいてくれるかな?


 面と向かって告白すればいいはずなのに、私はその勇気すら持てない。


「どうして?」


「嫉妬しているから・・・・」


「赤音・・・・」


 真君は、そこで立ち止まって、後ろにいる私の方に振り向く。


「俺が、赤音を見捨ててしまうことがこわいのか?」


「うん。


こわい、すっごくこわい」


「大丈夫だって。


俺は、言葉だけじゃない。


今までだって、そうだったろ?


何を急に不安になることなんて、何もない。


だから、俺は彼女ができても、できなくても、赤音との付き合い方を変えたりなんてしない」


 真君は笑顔で答えた。


 そうか、真君は鈍感すぎる。

 ここまで来ても、恋愛って意味にはとらないんだ。


 真君は、行ってしまう・・・!

 だけど、私は何をしている?

 何がしたいの?


 真君に伝わるようにわかるように、告白しなくてはいけないはずなのに、どうしてだか口が動かない。

 振られることがこわい。

 真君ともっと良好になりたいけれど、今の関係を崩すことがこんなにもこわい。


 真君は、曖昧にしてはだめなのに。

 私は真君を取られてしまいそうで、胸が苦しくなる。


 廊下で、すれ違った女性がいると、真君が「モーション先輩!」と叫んで、駆けつけた。


 この人が、真君のいうモーション先輩?

 髪は腰まで長くて、綺麗だった。

 

「モーション先輩、久しぶりです」


「君は、誰なの?


この学校の生徒みたいだけど」


 知り合いじゃないんだ・・・・。


「俺ですよ。


俺。


後輩の井藤真ですって」


「ごめん、誰なのかわからない。


君と私は、どこかで話したりしたことある?」


「あるわけないじゃないですか?


今日が初めてですよ」


 初対面なのに、なれなれしくしすぎじゃない?


「あ、そうなんだ。


君は、確か井藤真君だっけ?


私がモーションというあだ名だということも含めて、いつ私のことを知ったの?」


「あはは、遠くからみれば誰でも知っている人になれますよ」


「つまり、君は私のストーカーをしていたということでいいの?」


「はい。


それと近いです」


 真君、何を言っているの?

 これ、完全なる天然じゃない?


 モーション先輩は、顔が青ざめていた。


「君は、罪悪感とかないの?」


「え?


何が?」


「私のストーカーとかして」


「あるわけないじゃないですか!


モーション先輩が好きなんですよ。


そのまま連れて帰りたいくらいに。


ですから、モーション先輩、俺と付き合ってくれませんか?」


「無理です!


こんなストーカーじみた人は、こちらからお断りです」


「そんなあ」


 ショックを受ける真君をおいて、モーション先輩はそのまま去っていった。


「振られちゃったよ・・・・。


どうして?


赤音、俺のどこか悪いんだと思う?」


「それは、誰でも振ると思うよ。


まず、自分がされたら、言われたらどう思うかを先に考えるべきだと思う。


でないと、真君は一生彼女なんてできないと思う」


「そんなあ。


俺の運命の人は、本命として、両思いになれる人は、どこにいるんだろう・・・・?」


「真君、そんなに落ち込まないでよ。


第一、私がいるじゃない。


それじゃあ、満足できないの?」


「赤音の存在には、感謝している。


感謝しても、しきれないくらい。


この先も、何年先もずっと一緒にいてほしい。


いてほしいの。


だけど、だけどね、それくらい俺には特別な存在がもう一人ほしいんだよ」


 どうしてなの?

 ここまで言っても、気づかないものなの?


 なら、今度こそ、告白しないと。


「真君に伝えたいことがあるの」


「伝えたいこと?」


「私、真君が好きなの」


「好きだよ。


俺も友達として、幼馴染として」


「違うの」


「違うって、何が?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る