第１回カクヨム二十句連作部門ノ３

ナツノスナ

足跡は　肌足（はだあし）夏の　波に消え

透き通る　白い足首　波の泡

桜色　十枚の爪　波に濡れ

波の引く　音のむこうに　君がいて

流れゆく　海へ海へと　足の砂

夏映す　鏡の渚　歩く君

波を蹴り　乾いた砂へ　走りだす

濡れた砂　乾いた砂に　抱きつかれ

抱きついた　君は捩（よじ）って　笑いだす

寝転んだ　体に波の　音響く

砂まみれ　海でも汗でも　塩は塩

手遊（てすさ）びに　手を櫛にして　砂をすく

砂の手を　髪にのばして　怒られる

夏の砂　ぢりぢりと焼く　二人だけ

二人岩　水の子ら傍（わき）　流れゆく

傍焼（おかや）きを　男（お）の子（　）女（め）の子に　する我ら

俄雨　砂や頭に　涼を打つ

腕捲（うでまく）る　君にさしだす　腕枕

日に焼けた　二人に目立つ　白い砂

足跡は　夏の肌足（はだあし）　波に消え