2022年
ショートストーリー部門
作者・三嶋悠希 大賞:『初デート前レター』の感想
初デート前レター
作者 三嶋悠希
https://kakuyomu.jp/works/16817139557831108733
彼女がいるのに成瀬と偽名をつかってマッチングアプリをしている彼に気づいた彼女は、古知真貴と偽名を作って成瀬にメールを送りカフェデートにこぎつけ、店員に化けて彼に手紙を渡す。本作は、古知真貴は現在付き合っている彼女の偽名だったと明かされる彼あての手紙。
恐いミステリー。
つまりホラーである。
主人公は偽名・古知真貴を名乗っている大学生の彼女。一人称私で書かれた文体。一人語りの、ですます調で書かれた手紙文。
復讐譚、或いは因縁譚。
謎解きのワクワク感を抱かせる「奇妙な出来事→推測一→推測二→推測三→答え」という流れに準じている。
からめ取り話法と女性神話の中心軌道の一部にそって書かれている。
大学生の彼と彼女は付き合っているが、最近怪しい。
風呂に入っている間に彼のパソコンをみると、『成瀬』と偽名を使ってマッチングアプリをしていることを知った彼女は、『古知真貴』と偽名を名乗ってマッチングアプリを利用している成瀬に「めちゃくちゃかっこいいですね。タイプです」とメールを送り始めた。
成瀬からの電話を断っているのは、成瀬くんがカッコいいから。デートを受け入れたのは、「絶対楽しませる」というキザ台詞にやられたから。いつも察したような気持ちをメッセージで送ると「なんで分かるんだ⁉」と驚いていた彼も、いまでは「長い間一緒にいる奴に似てる」と呆れ混じり。
「パンケーキが好きそうに見えます」と言い当てた彼は、「もう一人の俺⁉」と驚き、ようやくパンケーキの美味しいカフェで初デートにこぎつける。カフェにきた彼は、カフェ店員から手紙を受け取り、彼は現在、その手紙を読んでいる。
これまでのやり取りが綴られたあと、古知真貴は本題として、成瀬が返信した「長い間一緒にいる奴に似てる」に言及し、現在付き合っている彼女がいるのでは、と文面で勘ぐってみせる。彼女に嫉妬していることより、文章をよく読みましたかと尋ねてくる。
はじめて知り合った相手に懐かしさを覚えるのはそもそもおかしいこと。古知真貴という名前が、古く知る真の貴方をからきている偽名だということ。電話を断った理由。
夜遅くパソコンで何をやっているのかと、風呂に行っている間に見たマッチングアプリの形跡。一方的な手紙の内容。手紙の冒頭では、成瀬という人に手紙を渡すよう告げたが、成瀬は偽名なので本来であれば届かなかったはず。手渡した店員は帽子を深くかぶっていたのではと投げかけ、末文には「前を向きなさい。お顔をよく見せなさい」「あなたの彼女は目の前です」と書かれていた。
三幕八場の構成で書かれている。
一幕一場のはじまりでは、古知真貴から成瀬くんへの手紙。カフェ店員に頼んで成瀬くんへ手紙を渡すようお願いしたこと、彼氏ができないのは行動しないからだと高校時代の唯一の友達いわれてマッチングアプリをはじめたことを伝える。
二場の主人公の目的では、男性利用者の多いマッチングアプリの中で彼のと労をねぎらいつつ、アイコンの顔写真にかっこいいと思ったことを伝える。
二幕三場の最初の課題では、電話を断り続けている理由は、成瀬がかっこいいから。
四場の思い課題では、文脈から成瀬の気持ちを察したメッセージを送って驚かれたものの、最近は慣れたのか反応せず面白くないこと。食の好みも当てると「もう一人の俺⁉」と驚いたことに対して、文系なので合っているのかわからないとしながら、イエスとも言えないがノーでもない、どちらかと言えばイエスと答える。
五場の状況の再整備転換点では、成瀬からの返信にあった『長い間一緒にいる奴に似てる』について。彼女さんを指しているのではないですかと尋ねる。彼女がいるのにマッチングアプリをする人でも避けたりしないとしながら、彼女さんは成瀬をわかっていることになると伝え、いいたいことは「ここまでの文章を、よく読まれましたか」ということ。初めて画面上で知り合ったのに、メッセージに本当に懐かしさを覚えたのか。個人情報を載せないために使っている偽名の古知真貴は、『古く、知る。真の貴方を』であり、毎日見ているあの人の文章に似ていると思ったことはないか。人の癖は文章にも現れるため自分の敗北としながら電話を頑なに拒んだ理由はわかったかと尋ねる。
六場の最大の課題では、いつも一緒に紅茶を嗜んでいる成瀬だから気を配れなかったのだとし、パソコンのPINがバレバレだと伝える。入浴中にマッチングアプリの形成をみたこと。パンケーキが最大のヒントだとし、顔がどんどん歪んでいくけど読むのは止められない。手に取るようにわかると文面が続く。
三幕七場の最後の課題、どんでん返しでは、手紙は会話のキャッチボールではなく一方的にボールを当てに行っていることに気づいているかと問いかけ、メールでも、貴女の返信に被せるように送っていた。でも手紙では相手に合わせるのは不可能なのに、全部当たっていて嬉しいと伝える。
八場のエピローグでは、冒頭を読んだか尋ねる。成瀬という人に渡すよう店員に告げたが、成瀬も偽名なので、あなたに手紙が届く見込みはないはず。さっきの店員は帽子を深くかぶっていたはず。『前を向きなさい。お顔をよく見せなさい。古知真貴――あなたの彼女はもう目の前です』と締めくくられている。
手紙の謎と、成瀬くんに関する様々な様々な内容の謎が絡み合っていき、一つの真相にたどり着く展開は、読者を魅了して強く読み進めさせていく。
読み進めることで、わからないことがわかり、読み手はある種の感動を覚える。
また、読み手の中にマッチングアプリを利用している人がいるなら、自分にも関係があるのではと捉えるかもしれない。
倦怠期にあるカップルは、本作のような手法で相手を問い詰めることができるかもと考えるかもしれない。
つまり、それだけ広い読者に感動を与えることができる作品、といえる。
一人称の語りは、主人公の内的な声の多さと大きさの扱い具合に気をつけなくてはならない。多大になるほど主張が前に出すぎて、読者は嫌になる。
本作は手紙文でできている。
手紙は筆者の言いたいことを、受取人に向けて、一方的に描き綴ることができる。そのため、主張が多少強くなっても大丈夫なところがあるので、手紙を選択したことがなにより良かったのだろう。
本作は、彼女がいながらマッチングアプリで他の女をさがして浮気しようとする彼への復讐譚、または因縁譚である。
本作のような話の場合、情報をしぶってはいけない。
間違った仮説を締めておいて、後で覆すようなミステリー技法の応用が求められる。
本作では、その点が押さえられており、一つ一つ取り上げては語っていく辺りはくどさがあるものの、違和感なく読み進められる。
本作は手紙であり、二人はマッチングアプリを介してのメールでのやり取りをしてきた体をしているので(互いに偽名を使っているものの、実際は付き合っている彼氏と彼女)、視覚的な描写にならざる得ない。それでも、散りばめられた情報から、場面が想像できる。
なにより、主人公である彼女による、彼の心の声や感情の言葉、表情の予想などが入れることで、読み手に彼が感じている気持ちを追体験できる仕組みは非常に面白い。
冒頭の文章で、「実は昨日、ここのカフェ店員さんに頼んでおいたんです。明日、大学生くらいの青年が来ますので、何名様か聞かれた際に『二名』と答えたら、名前を聞いてください、と。そこで『成瀬』と名乗ったなら、この手紙を渡してください、と。無事受け取れたようで何よりです」とある。
はたして、彼はどう答えたのか。
なにもしらない彼は、ここでは「成瀬」と答えず、本名を答えた可能性が高い。
だからラスト手前で、「私は成瀬という人に渡すよう店員さんに告げましたが、成瀬という名前で通るはずがありません。なぜなら、あなたも偽名なのだから。あなたに手紙が行き渡る見込みは、本来であればなかったのです」と書かれている。
彼は本名を名乗ったはず。
であるならば、手紙は手渡されない。
それでも手紙が渡ったのは、渡した店員が偽名・古知真貴を名乗る彼の彼女だったから。
受け取った本人である彼ならば、店員と対面したときに違和感を抱けたかもしれない。付き合っている彼女が店員をしていたら気付くと思うのだけれども。
これから別の女とデートすることに気が回っていて、気にならなかったのかもしれない。
主人公である彼女は、おそらくカフェで働いているわけではないだろう。
手紙の冒頭で、カフェ店員に手紙を渡すように頼んだこと。彼氏ができないのは行動しないからと、高校時代の友だちに言われたこと。「ただでさえコミュニケーションが苦手で、高校で出来た友達も、さっきの子だけです」から考えると、カフェ店員は高校のときに唯一できた友達だったと思われる。
嘘をつくには、必ず真実を混ぜなくてはいけない。
小説でも、すべてが荒唐無稽な作り話では読み手は共感はおろか感情移入もできず、難しいと思えば距離を取って離れてしまう。
彼にとっての真実は、マッチングアプリで知り合った古知真貴とのメールでのやり取りや、付き合っている彼女とほのめかす情報なんだろうけれども、嘘をつく彼女自身としては、どこかしら本当を入れておきたいとする心理が働くはずなので、カフェ店員は高校時代に唯一できた友達だったはず。
その彼女に頼み、協力してもらって、一時的にカフェ店員の制服姿で彼の前に現れているはず。
接客業では、働くスタッフには身だしなみ、挨拶、表情、言葉遣い、態度・動作・仕草が要求される。
第一印象を判断されるのは、話の内容や話し方よりも顔の表情。
身だしなみマニュアルが存在する。
女性で飲食店ならば、お辞儀したときに髪が前にたれず、前髪が眉毛が罹ることなく清潔で、ヘアアクセサリーも決められた範囲内のものにする。服装も、制服の方や竹を崩さず、シミやシワもなく、決められているた項目に準じる。手や指先も清潔にし、靴も型崩れなどなく、色や形も適切なものを使用している。
目や口の表情はもちろん、視線も大切さであり、目線があったら一歩前に出て、目線の高さはお客様と同じ条件にし、相手の鼻を見る感じ。顎の高さによって相手に与える印象が変わるので、顎を下げすぎると、疑惑の目で見られているような印象を相手に与えてしまう。
各店ごとに用意されたマニュアルに違いはあるけれども、お客様に不快な印象を与えないようにしている。店の売上につながるから。
パンケーキの美味しいカフェならば、それなりに繁盛をしているし、若い女子が利用してくる。
帽子を深くかぶっていたらしいけれども、他の店員との身だしなみが違えば浮いてみえるし、なにより店自体の印象が悪くなる。女子は目ざといから。
店長の知らない人間が、勝手に店の制服を着て働いているのは問題である。チェーン店なら、本部にクレームが入り、あとで怒られるかもしれない。
チェーン店でないにしても、勝手にされるのは困る。
カフェで働いている高校時代の友達に話してから、店長に相談して協力してもらえるよう話がついているのかもしれない。
そうでないと、勝手にはできない。
読者には、店員が彼女だったかどうかわからない。
なぜなら、読者は彼ではないから。
だから、そうなんだと気にすることなく冒頭を読みすすめていける。
手紙を読んでいる彼は、どんな子だったかと思いだしたり、店内を見渡したりしたかもしれない。
「今、眉間に皺を寄せましたね。『こいつは一体何が言いたいんだ』と」この文章のタイミングは良いなと思った。
読者は、本作はどういう話だろうと思うタイミングだったから。
彼氏が感じた「こいつは一体何が言いたいんだ」とは内容は違うけれども、似たような気持ちに読者がなているところに、「どうか甘く見てあげてください。今までの私たちの軌跡を振り返ろうというだけです」と続くので、彼氏ではなく読者に対してエクスキューズを出しているように思えて、面白かった。
中盤前に、「本題に戻りましょう。あの時の成瀬くんの返信──長い間一緒にいる奴に似てる」とあるおかげで、読むのをやめようかと思った読者を引き止めることができている。
マッチングアプリについての説明や、成瀬がかっこいいとか、電話を避けてる理由とか、パンケーキが美味しいカフェを紹介されたこと、先読みされて当てられてもう一人の俺かと驚く彼にノーともイエスともいい難いみたいなやり取りに、読み手としては距離ができていく。
二人のやり取りなので、読み手の気持ちとしては「そうなんだ」くらいになって、気持ちがついていけなくなりつつある。
そんなタイミングで「本題に戻りましょう」とくるので、読み進めていける。でなければ、やめてしまったかもしれない。
なんでもないような二人のやり取りに、重要なことを紛れ込ませているのは上手いと思う。彼は理工学部であり、彼女は文系だとある。
マッチングアプリでもやり取りで、大学で何を専攻しているのか伝えあっているかもしれない。仮に伝えあっていないなら、どうして彼女が、理工学部なのをしっているのかと彼が驚く場面だと想像する。
ただ、その辺りはどうなのかは手紙文からはわからないため、彼の気持ちを想像するのは難しい。
ただ、電話を断り続けている理由のところで、「成瀬くんは『緊張しなくてもいい』と言われました」という下りがあり、また「成瀬くんは毎回、大多数の男性のように『全然大丈夫だから! 気を使わないでね!』とは返さず『そっか』とだけ言ってくれたので、私も楽でした」ところは、現実味を感じる。
チャットでのやり取りの場合、男は緊張してるか聞くし、緊張しなくていいからねというもの。
作者は、その辺りをよく知っている。
また、「大多数の男性のように『全然大丈夫だから! 気を使わないでね!』とは返さず」から、彼女も不特定多数の男性とのやり取りを経験していることが伺える。
浮気をしようとする彼氏を問い詰めるためにマッチングアプリを利用し始めたはず。彼女は、マッチングアプリ以外でも、大多数の男性相手に似たようなやり取りをしたことがあるのかしらん。
それとも、マッチングアプリをしたら、男性の方から連絡がいっぱい来たときの体験なのか。
そもそも、主人公の彼女はどうやって彼氏と付き合うことになったのだろう。
「それなりの年数は付き合っていると伺えますし、さぞ仲は良いでしょう」から、同じ大学で知り合ったのだろう。
「お母さんなら、お母さん。サークル仲間ならサークル仲間。わざわざこんな遠回しな言い換えをする必要はありません」から、学部は違う二人はサークルで出会い、付き合いを始めたと邪推してしまう。
後半は、謎の提示がされながら紐解かれ、読み手に投げかけるような文章が書かれ、「でも読むのは止められない」と読者を煽るように、読み続けるよう仕向けていく。
それにしても、彼女はずいぶんと準備に手をかけたものである。
アプリでのメールやメッセージのやり取りをくり返しながら、彼とは普段どおりに接してきたはず。
彼を懲らしめるため、カフェ店員になりすますために友人を頼った。それだけ彼が好きで、浮気するのを許せなかったのだろう。
果たして二人はこの先、うまく付き合っていけるのかしらん。
この後の展開は破局か、許してもらって付き合うかの二択。
前者なら、マッチングアプリをしているのに気づいたときに咎めればよかったと後悔するかもしれない。
主人公の彼女が、彼をどれだけ愛しているかは読者にはわからないけれども、時間と労力をかけて浮気未遂現場を押さえたら、やり返した感を抱けて、少しは溜飲が下がるかもしれない。
でも、それだけ。
そんな労力をかけるより、問題のある男とはさっさと別れて、他にイイ男を探したほうが良いのではと思えてくる。
後者なら、恋愛関係ではなく従属関係となりそう。
仮に一緒になったとしても、彼は彼女に縛られるのが嫌になって再び浮気に走るかもしれない。
そもそも「私にはあなたしかいない」といった愛の告白は、彼の心をしっかりと掴むのに効果的と思われがちだが、「あの女は僕のものだ」と自負心を持った男は、その女に対する興味や関心を急速に失うことすらある。だから彼はマッチングアプリに手を出したのだろう。
彼女が今回の計画をしたのは、「成瀬くんのアイコンを見た時、私の心に芽生えた感情は、至ってシンプルでした──かっこいい」とあるように、彼がかっこいいから。
イケメンの彼に、彼女が惚れているから、こんなことをしたのだろう。
ちなみに、マッチングアプリの基本的な流れは、次のとおり。
一、プロフィールを登録する
登録に必要なものは、「プロフィール写真(顔が分かる写真や、趣味や好きなものがわかる写真を複数枚)」「自己紹介文(登録した理由や仕事内容、趣味、休日の過ごし方など)」「詳細なプロフィール(学歴や身長など)」
二、相手を探す
探し方はアプリにより異なるが、「年齢や身長などの条件を指定して検索」「位置情報を指定して検索」「趣味や性格などから探す」「アプリがおすすめした相手を見る」の方法があり、検索機能やおすすめ機能を活用して探す。
三、「いいね!」を押す
気になる相手を見つけたら、「いいね!」を送る。「いいね!」する数が多いほどマッチングの確率は上がるものの、多くのアプリでは、一定期間中に無料で「いいね!」できる回数が決まっている。出費を抑えたい場合、アピールする相手を慎重に選ぶ必要がある。アプリによっては、メッセージ付きの「いいね!」を送り、効果的にアピールすることも可能。
四、マッチング
相手からも「いいね!」が返ってくると「マッチング」成功。メッセージのやりとりが可能となる。マッチングしなければ、気になる相手と会えない。
五、メッセージ交換
マッチングしたら、なるべくすぐにメッセージを送る。初回メッセージは「はじめまして」や「こんにちは」などの軽い挨拶、名前や居住地などの簡単な自己紹介、趣味や好きなものなど相手との共通点に関する質問など。
何度かメッセージを繰り返して食事などに誘い、実際に会ってみる。
マッチングアプリは、双方「いいね」を送ってマッチングし、初めてメッセージのやりとりが可能となる。
婚活系のアプリを除き、女子はマッチング後のメッセージも完全無料でつかえるアプリがほとんど。
女性はお金をかけずに、マッチングのチャンスを広げられる。ただし、有料アプリはサポートが手厚く、真剣度の高い男性が多い傾向にある。結婚を視野に入れている人は、有料の婚活アプリを使ったほうが理想的な出会いが実現てきるだろう。
基本的に、有料会員でないとメッセージの送信ができない。
また受信したメッセージを読むこともできないようになっている。
登録自体は料金を払わずとも可能で、異性を検索しマッチングするところまでは基本的にどのアプリでも無料でできる。一部のアプリは、一通目のみ無料会員でも可能な場合があるものの、一通目での連絡先交換は基本的に禁止されているため、無料会員のままで出会うことはできない。
男女ともに利用者の四分の一は、宗教勧誘や金銭の要求、詐欺などのトラブルに巻き込まれたことがあるという。「すぐにLINEの交換を打診してくる」「すぐに会いたがる」「外部サイトへ誘導してくる」「第三者を紹介しようとする」「会話が不自然」などのメッセージを送ってくるのは業者である可能性が高い。
主人公の彼女は無料ではじめられて、彼氏の近くにいれば位置情報から見つけ出すことはできただろう。彼氏は、月額登録やポイント課金をしてマッチングアプリを利用していたことになる。
アプリプロバイダーの手数料を回避できるため、ブラウザからのクレジットカード決済をしていただろうし、一回での支払額は多くなるものの月額に換算すれば割安で長期間利用するつもりなら、三カ月プランを利用していたかもしれない。
彼女がいてもマッチングアプリをするのは、ストレスを癒やしたいだったりいろんな女の子とデートしたい欲求だったりと考えられる。
ひょっとすると、主人公と彼氏はマッチングアプリで知り合って、付き合うようになったのかもしれない。利用期間内だったため、彼はマッチングアプリを利用し続けていた可能性が考えられる。主人公の彼女よりもいい女を見つけたら、そっちに乗り換えようとしていたのかもしれない。
そういう男とは、さっさと別れた方がいい。
出会いはたくさんあるし、男は他にもいるのだから。
成熟した愛や男女のフェアな関係を、マスコミは提供しない。
相手を嫉妬したり操ったり、皮肉をいったり復讐したり誘惑しようとしたり、嘘をついたり脅したり共用したりといったことは、いずれも健康的な愛の相互作用にはなんら貢献しない。
本作のような、マッチングアプリを介した恋愛のトラブルは現代的であり、キャッチーさもあって、時代性も感じられる。
また、恋愛の問題は普遍的であり、誰にも起きうる可能性のある題材。人間関係こそが、物語の真髄である。
それらの点が、受賞に繋がったのかもしれない。
愛の成熟適応の段階によって、どこまで愛せば許されるのかがわかれば、罪悪感もすっかり消え去るだろう。
二人の人生それぞれに、多く幸があらんことを願う。
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