魔王様、配信の時間です!~魔王に覚醒した俺は、やがて人類に宣戦布告をする~

ぷ。

第一章第一節 魔王覚醒編

陰キャな拙者のモノローグ

 「聖剣抜刀!」


 そいつは、声高らかにそう叫ぶと、聖剣を手に白銀の甲冑姿をあらわにした。


 あるはずのない古傷が、あの惨劇を思い出させる。


 姫騎士ルクスフィーネ。


 俺は、彼女を知っていた……。



 ◇◇◇



 迷宮ダンジョン


 それは、現代のこの世に突如出現した。


 世界各地に、ダンジョンなるものが突如出現してから、かれこれ17年の時が過ぎた。


 勿論、当時の世界は大混乱。それに呼応してか人々の中に“魔導紋”なる“魔術”の才能を発現させた者まで現れて更に大混乱。


 おまけにダンジョンの転移門ゲートの中からは魔物モンスターが出て来てさあ大変だ。


 そんな大大混乱の最中、抜本的な法整備もままならないまま今日を迎えたというのがこの世界の惨状である。


 それでも人間という生き物は意外と図太く、今ではそんなダンジョンと上手く折り合いをつけて、なんとか平穏を取り戻した。


  詰まるところ。


 万が一、ダンジョンの本来の所有国家、世界が現れても軍事的な衝突にならない様、ダンジョンの探索と研究を民間の企業に委託することで「これは侵略行為ではありませんよ」と逃げ道を作ることに決めたのだ。


 これを受けて、世界中の企業は我こそはと、この新たに爆誕したブルーオーシャンへと乗り込むために名乗りを上げる。



 そして。




 時は令和。 





 世は正に大ダンジョン配信時代に突入した!



 ※※※



 ――などと俺は、脳内で誰に説明するでもなく一人物思いにふけりながら、教員室から教室へ移動をしていた。


 俺の名前は、鱶野辰海ふかのたつみ


 硬派なオタクでちょっぴりわがままボディのセンチメンタルな17歳だ。


 憂鬱な表情で廊下の窓から初夏の風景を一瞥いちべつする。


 「はぁ~」


 俺はこの昼休みの間、教員室で担任の今市公造いまいちこうぞう(32歳独身彼女募集中)に進路の事でこってり絞られていた。


 今市の野郎、見た目はゴリラの癖に現国の教師なんぞしているものだから、言葉のバリエーションが豊富で説教の時間が一々長い。


 お陰で昼休みが半分以上消えてしまった。


 “Ⅾライバー”


 高校卒業後の進路希望の紙にそう書いた。


 Ⅾライバーとは、言わば、ダンジョン探索動画配信者のこと。


 今やダンジョン配信は全世界中の人々が注目する一大エンターテインメントにまで昇華され、有名配信者はメジャーリーガーに匹敵する程の規模となっていた。


 しかも、民間資格を必要として企業の所属となる。つまりは、立派な就職先なのだ!


 それを今市は、「辰海よ、そう言うのはなモラトリアムって言うんだぞ」と取り合わないのだ。二言目には「お前の頭の中は小学生か?」だ。


 確かに全国の小学生の今なりたい職業一位は三年連続で、Ⅾライバーだが……。


 ええい、今市め!言うに事欠いて言いたい放題言ってくれる。許さんぞっ!いつか有名ライバーになってバズりにバズって見返してくれるからな――!!


 芸能界に進出したりと市民権を得たはずのダンジョン配信者も古い考えの大人達には遊んでいるように見えるのだ。正にジェネレーションギャップ。


 大人しく適当な進学先の名前でも書いてお茶を濁すか?いや、駄目だ。自分の将来の事だ、そんな適当では後悔する。


 それに俺は、早くⅮライバーとして大成して、有名になりたいのだ。他に進学や就職などと回り道している時間は無い。


 そう、有名にさえなれば――。


 もしもだ。俺のチャンネル登録者が十万人くらい行けば、今市も考えを改めてくれるだろうか。確かそのくらい行けば公務員くらいの稼ぎになると聞いたことがある。


 取り敢えず、進路希望の再提出は二学期まで待ってくれるそうだ。


 ……良ぅし!夏休みの目標は、目指せ登録者十万人だな――!!

 

 俺はスマホで、あえて自分のライブチャンネル登録者数が一桁なのを確認して、人知れず野望に燃えた。





――――――――――――――――――――

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