大したネタ

ユダカソ

大したネタ

「フン、こんなネタ」

自分だって思いついた。


自分にだって思いついたのだから、大したネタではない。


だが愚衆はそのような陳腐なネタに群がる。

「なんて馬鹿な奴らだ」


「こんなの誰だって思いつくようなネタだろ?みんなこんなの賞賛してるの?馬鹿じゃないの?」

snsに書き込む。

俺のフォロワーがいいねを押してくれる。

みんな俺の味方だ。


俺だっていつもネタを考えてる。

それも誰よりも賞賛されるような最高のネタを!

たくさんたくさん考えてるんだ。


すると、俺の呟きにリプライがつく。

「思いついたのに形にしなかったんだな。お前が馬鹿にした奴は形にしたぞ。お前より早く。」


クソリプか。

俺も負けじと返信する。


「形にする価値が無いネタだったからしなかったんで。あいつより数倍頭いいんでそこまで計算できたんです。」


再びリプライがつく。


「でもそのネタは数万リツイートされてるしいいねも十万超えてるぞ。それで形にする価値ないって言うのか。」


しつこいな。

黙ってろ。


「でも俺にとっては全然面白くないと思ったんで無価値です。」


「他の人にはウケてるからお前以外には価値あるってことだな。」


「だからなんですか?形にした方がエライってことですか?」


「少なくとも形にしないまま見下してるお前よりは」


「馬鹿にしてんですか?最低ですね。」


「先に馬鹿にしたのはお前だろ。そうやって負け惜しみするくらいなら形にすればよかったのに。」


「負け惜しみしてませんけど。」


「わざわざ呟いて自己アピールしてる時点で負け惜しみしてるだろ。」


「は?それ自分のことじゃないですか?」


「お前のことだよ。自覚しろ。そもそもなんで形にしなかったんだ?」


なんで形にしなかった?


なんで形にしなかっただと?

そんなの、言わなくてもわかることじゃないか。


「だってあんな過激なネタ、どう言われるかわかったもんじゃないし、避ける方が無難ってこと誰だってわかるでしょ。少なくとも俺はわかったから形にしなかったの。」


はい、完全に論破、俺の勝ち。


暫くして、再びリプライがつく。

お?敗北宣言か?


「ああ、わかった。俺の負けだよ。お前のこと完全にナメてた。」


そうだろうそうだろうと頷きながら続きを読む。


「お前がそこまでつまらない奴だったとは思ってなかった。」


………何?


「俺は、お前はもっとネタ出しに貪欲さがある奴だと思ってた。だから余計に悔しがってるんじゃないかと……。でも、違ったんだな。」


………何が言いたいんだ。


「つまり、お前はネタを出して形にすることよりも、ずっとずっと…………」





「自分がどう思われるかの方が大事なんだな。」





「だからそんなつまらねえ奴になっちまうんだ。」


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