第22話 真祖吸血鬼の憂鬱・娯

 で、言い訳があれば聞こうか?……帰宅直ぐ我に「吸って~血ぃ吸って~」と全裸ダイブしてくるような者の話なぞ聞きたくはないがな。


 何? 会社で馬鹿にされた? 我の話を聞く限りとても吸血鬼の話と思えない? ……ううむ、最近では血を吸えない吸血鬼の話もよく見るしいけると思ったのじゃが、思ったよりもてんぷれえとな吸血鬼のイメージは根強い様じゃな……。

 以前にも言った様に必要といえど我は血が苦手だし、首筋から血を飲むという事なぞ出来んぞ、ほれ……しょこまで牙も長きゅないじゃりょ?


 ……ゲフン、まぁ仮に我の牙を長めに1センチとして、我の口の大きさならば上下の牙の幅は3センチあるかどうかじゃろ、計った事なぞないが。

 犬やオオカミ、ライオンなどが何故頸動脈を噛み千切れるかというと、あの口の大きさあって然りなのじゃ。

 しかも噛み千切ればいいあ奴らと違い、貴様ら人間がイメージする吸血鬼は映画等を見る限り、犠牲者に綺麗に2つの牙の跡だけ残っている描写も多いよな? 他の歯の跡すら残っていない。

 肉を噛み千切る時、解るじゃろう? 貴様は上の歯だけで噛み千切れるか? 上下の歯で挟む様に千切るだろうに。

 そして調べた事もあるが、頸動脈の太さは血管では太い方らしいが、それでもわずか10ミリほどらしい。そして皮膚の下に直ぐ血管がある訳ではない。筋肉も脂肪もあるだろうし皮下2センチほどか。我の牙では穴だけ開けても頸動脈に届かんな。皮下の血管を傷付ける事で血は出るじゃろうが。

 最近は流石におかしいと思ったのか、顎が外れたかの様に口を開け、犠牲者が死ぬだろう勢いで噛みついているのも多いがな。


 一番難しいのは、吸血行為を行った後、獲物を「綺麗に生かす事」じゃろう。頸動脈は心臓にも近く、人体でも活発な血管らしい。其処に穴を開けると……血を吸い尽くしでもしない限り開いた場所からポンプの様に血が止まらないだろうな。

 映画の吸血後を思い出すがよい……そう、被害者の首筋からはほとんど血が流れていないし、吸血鬼自体も口元以外汚れている事も少ない……本当に不思議じゃのう、クククッ♪

 因みに時代劇で見る切られた侍の様なシャワーの様な出血があるじゃろ? アレは過剰過ぎる演出らしいぞ。何? 我も時代劇を見るのかじゃと? そもそも何でじろーけいらーめんを知ったと思うのじゃ。


 首筋から血液を吸うその描写ですら、我が戯れにいんたぁねっとで調べた程度でこれだけの矛盾を指摘出来るのじゃ。

 実際の吸血鬼は我の様に獲物から抜き取ってから保存をしておき、改めて飲むのが一番じゃろう。そもそも戦闘しながらあはれな犠牲者の血を飲み続ける描写もあるが、我からしたら滑稽じゃわ。腹が膨れて動きが鈍くなるじゃろうに。


 ……ん? 結局血は吸ってくれないのかじゃと? 言ったじゃろう、我の口では物理的に、貴様を殺すつもりじゃないと頸動脈からの吸血は無理じゃ。

 ……其れもまたよいとな? 貴様はどれだけマゾなのじゃ。貴様は……あ、愛する者の手を無駄に汚させたいのか? ってノータイムで抱きつこうとするにゃ! 嚙んでくれないのなら私がアソコにかみちゅく~とか意味不明じゃわっ! く、くろぬこっ! のんびり飯など食ってないで助けぬかっ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る