夏の140字小説(2023 文披31題)

雪菜冷

花心の傘(day1 傘)

私の渾名は傘女。


晴雨関係なく傘をさす。


昨日は小間に藤の花が咲いた。


一昨日は桜。


気分で変わる柄を楽しむ。


「いれて」


夏の夕立で突如の来客。


同じクラスの男の子だ。


密度を増す空間。


むせ返る汗の匂い。


体中の血液が沸き立って──。


「金木犀の柄、綺麗だね」


まだ咲かないで。


この気持ちは今は秘密。

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