「……どう、だった?」

 耳元から口を離して木染が言った。


「オリジナル? オリジナル……かな? イメージしてたのは、最近なんかおすすめによく出てくるリラックス系の動画だけど」

「それで? 動画にできそう?」


 感想を口にすると、木染が顔を真っ赤にした。


「はっ……はあああ⁉ かわっ……可愛いってあんた何言ってんの⁉」

「いい。やめて。いい。もう感想いいから」


「動画? するわけないじゃん」

「よくても、やだ。言われて気付いた。私、すっごい恥ずかしいことしてんじゃん。もう一回なんて絶対無理」


「マイクでもやだ。絶対思い出しそう」

「とにかく、これは没だから、違うの。考えるよ」


 むすっとして頑なな木染の様子を見て、素直に違う案を提案する。


「お、なになに。まだ案があるの?」

「波の音? 確かに、やったけど」


「環境音ASMR? あれってASMRなの?」

「う、そっか。私が先にやったのか」


「山か海か川で撮影……」

「好きなところ……どこでも……山か海か川に行って撮影……?」


「え? ごめん。聞いてる聞いてる。別に嫌じゃないよ」

「あ、ああ。そっか。撮影大変なのかな。そういうのは調べなきゃね」


「うん、でもとりあえずいい考えなんじゃない? 一旦その方向で考えよう」

「どこか日帰りで行けそうなとこ休みまでに探して、土曜日撮影……うん、いいじゃんか」


 予鈴がなった。もう昼休みも終わりに近づいていた。

 戻ろうと声をかけると「あ……もう昼終わりか」と言って、木染も立ち上がる。

 後ろからぎこちなく声をかけてきた。


「ちなみにさ……これって、デ……いや、ごめん。そんなわけないね。なんでもない」

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