第103話 一転攻勢!

 仲間達のピンチの間際に現れたのは、突如として巨大化した大盾。

 それが今、匠美さんを狙った追撃をすべて受け止めた!?


 一体誰がこんな事を!?


「ぼ、ぼくは弱くなんかない! 僕だってみんなを守るパラディンなんだ!」

「んなあ!?」

「「「緒方君!?」」」


 ま、まさか緒方君だったなんて……!


 じゃああの巨大な盾は緒方君のスキル、なのか!?

 ダンジョンに入るのが今回初めてなのに、もうスキルを習得した!?


「ごんな屑鉄ゥゥゥ!!!」

「うああああ!!!??」

「ッ!? ご、ごわれないッ!?」


 しかも頑強! まったく壊されない!

 軒下で鍛えた数値が盾に反映されている証拠だ!


「ギィィィ!!! こんなうごげない壁なんてェェェ!!!」

「〝さみだれ烈花〟ッ!」

「イッヒィ!!?」


 それに遥が回り込もうとした途端、今度は入口側から無数の矢が!

 あのスキルは間違い無い、凜さんも一緒にやってきたんだ!


 これにはさすがの遥も引かざるを得なかった。

 すかさず跳び退き、みんなから距離を取っている。


 そして匠美さんはといえば、怒ってはいるんだけども。


「凜っ!? お前なんで――」

「バカッ! そんな事言ってる場合やないわ! こンのカッコつけのスカポンタン!」

「んがっ!? いっでぇぇぇ! 盾投げんなやぁ!」


 あ、凜さんから投げられた盾がクリーンヒットした。痛そう。

 でもどこか嬉しそうでもある。……いや嬉しいんだろうな。


 そうか、そうなんだ。

 緒方君も凜さんもみんなと一緒で、何とかしたいと思って……。

 フォローにも回るつもりで増援物資も持ってきてくれたんだ。


「――だが、感謝するで!」

「僕もやります! やらせてください!」

「おォ! やってやろうや君よぉ!」

「!? ハイッ!」


 そのおかげでまた俺達側に追い風がやってきた。

 澪奈部長もスペアの盾を持ったし、モモ先輩もかろうじて立てている。

 これでこっち側は五人、遥だって簡単には突破できないだろう。


「うじむしが、うじむしが、うじむしししィィィ!!! 殺す! みな殺スゥゥゥ!!!」


 だがもう遥は理性を保てているかどうかさえ怪しい。

 もはやなりふり構わず突進してきたぞ!?


「やってみろし! あーしらが簡単に死ぬと思ったら大間違いだってのぉ!」

「え、援護に回るわ。存分にやってちょうだい……!」

「なら先発させていただく!〝枝突一閃〟!」


 でも逆にみんなは冷静だ。

 凜さんが別のスキルを駆使し、目にも止まらない一矢を放つ。

 すると刹那、反応しきれなかった遥の縦ロールが一本、宙を舞った。


 は、速い!?


「な、なンッ!!?」

「……すごいわね母桃さんの強化魔法。尋常じゃなく強化されてる!」

「当然っしょ、モモっちの強化魔法はスキル効果付きだかんねぇ~!」


 凜さんの狙撃能力もすさまじいが、モモ先輩の強化も想像を越えてすごい。

 軒下で鍛えてからは使っていなかったから、俺にもわからなかった。


 でもまさか本職がアタッカー系の魔術士なのに強化魔法向けスキルが備わっていたなんてな。

 もしかしてモモ先輩って本当はアタッカーより、ヒーラーまたはバッファー職の方が向いているんじゃないか?


「んじゃいくでぇ緒方君! 合体攻撃や!」

「え、合体攻撃!? なんですかそれぇ!?」

「ノリや! 行くでぇ!!」


 そうこうしていたら匠美さん達もが動き始めていた。

 緒方君と並走しながら遥に向かっていく!


「調子に乗るなァァァァァァ!!!!!」

「だが乗らせてもらうで! 緒方君ッ!」

「うわあーーーーーーッッッ!!!!!」

「――ヒッ!?」


 その途端、再び盾が巨大化!

 それも遥を覆い尽くすほどに!


「からのぉ! ドォーーーンッ!!!」

「ウッギャア!!!??」


 しかもその盾の裏から、匠美さんがシールドチャージ!

 そうか、スキルで巨大化しても盾は盾、物理的に押し込めばスキルも伝わる!


 そうなれば巨大盾による超重シールドチャージとなるんだ!


 ゆえに遥が激しく吹き飛ばされ、岩壁へと激突。

 壁面をへこませてしまうほどに強く叩きつけ、みごと動きを止めさせたぞ!

 合体技! カッコイイ!!


「もっかいやで!」

「す、すいません、これ連続使用できないみたいでぇ……」

「何ィ!? んなら下がるぞぉぉぉ!」


 ……よし、これならもうみんなに任せておけば問題ない。

 あとは俺が答えを導き出せば――


「ねぇ、彼方」

「ん、なんだつくし?」

「さっき彼方はさ、遥が魔物になった原因って家族からの勘当とか寄生体に負けた事って言ってたよね?」

「ああ。それがどうしたんだ?」


 なんだ、つくしに何か思う所があるのか?

 もしかして俺が見落としていた所があるとか?


「もしかしたらだけど、それは違うかもしれない」

「えっ……」

「たしかにそれもあると思うんだけど、もう一つ遥にとってもっともっと重要な悩みがんだって」

「え、もっと重要な悩みが、あった?」


 そう、俺は見落としていたんだ。

 むしろ俺だからこそ見落とさざるをえなかった、遥の隠れた悩みを。


 つくしだからこそ気付けた、その心理を。


「遥はきっと、友達が欲しかったんだ! ずっと、ずっと!」


 気付ける訳がないよな、そんな事なんて。

 だってそれは、俺だって方法を知りたいくらいに求めていた事なんだから。

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