35. リリアside 邪魔されたから①
「リリアは今日も可愛いね。本当に天使みたいだ」
オズワルド様は今日もわたしを褒めてくれる。
少し前まで憎い女サーシャを映していたガラス細工のようにきれいな瞳も、今はわたしだけを映している。
でも、こんなのじゃ満足なんて出来ない。
わたしを不幸にしたあの女にはもっと苦しい思いをしてもらわないと、気が済まないんだから!
やり直しの人生で、せっかく手に入った幸せは絶対に離さないわ。
ここまで辛いことが沢山あったんだから!
でも、神様はちょっぴりイジワルみたい。
わたしは何度も失敗して、何度も時間を逆行しているわ。言っても信じられないと思うけど。
でも、誰にも言わない。
このことはリリアだけの秘密だから。
◇
わたしがサーシャを恨む理由?
そんなの簡単よ。
本当ならお母様がオーフィリア夫人になっていたはずなのに、恋に落ちた王女様にオーフィリア子爵様を奪われた。
お母様がそう言っていたから、間違いないわ。
わたしが暮らしているブロンムーン家は貧乏で、自由にドレスを買ったり宝石を買ったりすることなんて出来ない。
本当ならわたしがオーフィリア家の長女になれていたはずなのに、自由にオシャレしたり可愛いドレスを仕立ててもらったり出来たのに……。
だから、わたしのお母様がそうしているように、私もサーシャとサーシャの母親を恨んでいるの。
「あの女の娘、サーシャが婚約したそうよ。リリーが大好きなオズワルド様と」
「どう……して?」
「サーシャがオズワルド様を誘惑したのよ。
あの貧相な体でも誘惑出来るだなんて不思議よね。やっぱり顔なのかしら?」
だから、こんなことをお母様から言われたとき、すごくら嫌な気持ちになった。
サーシャはわたしから幸せを奪ったのに、好きな人も奪っていくのね?
「リリア、いい方法を教えてあげる。
サーシャがお手洗いに行った隙を狙うのよ。後ろからナイフで首を切れば大丈夫よ」
「それって、殺すってこと……?」
サーシャは恨めしいけど、殺すのは良くないと思う。
でも……。
「あの女はリリアのものを全部奪ってくるわ。恋人も、宝石も、命も。全部よ。
だったら、奪われる前に命を奪っておいた方が幸せになれるのよ?」
「幸せに……」
優しいお母様の言葉を聞いていたら、サーシャを殺した方が良いと思うようになった。
わたしの努力を全部奪われるなら、邪魔出来ないようにした方が良いよね。
どうしてこんなに簡単なことに気付かなかったのかな?
ちょっぴり不思議ね。
サーシャを殺すと決めたわたしは、次の日に行動に移した。
お母様に言われた通り、後ろから忍び寄って首にナイフを突き刺したわ。
悲鳴を上げられると思ったけれど、憎い女は目を見開いて驚いているだけ。
喉を刺されると声って出せなくなるのね。
返り血を浴びないように、ナイフはサーシャの前から刺したけど、腕に少しだけ付いてしまったわ。
気持ち悪いから、すぐに水で流した。
ナイフは……刺したままで大丈夫よね。
もう持ち手まで血塗れだから、触りたくないもの。
そんな時、サーシャは首のナイフをそのままに、お手洗いから飛び出してしまった。
でも、こんなに血が出ていたら、絶対に助からないわ。
そう思っていたのに……。
「サーシャ! しっかりしろ!」
「何事だ?」
「先生! サーシャが襲われました!」
お手洗いにまでオズワルド様と一緒に来ていだのかしら?
そんな声が聞こえてくる。
気になるけど、今出たら怪しまれるよね……。
今は個室に隠れて、何も見ていなかった事にした方が良さそうね。
サーシャがは何も喋れないから、わたしが犯人だって分からないもの。
「ナイフを抜いて傷口を押さえるんだ! 彼女なら、このくらい治せるはずだ」
「分かりました。サーシャ、痛いかもしれないが耐えてくれ」
そんな会話が聞こえてくる。
何をしても無駄なのに。馬鹿な人達。
「……死ぬかと思いましたわ。
助けてくださってありがとうございます」
「良かった。もう大丈夫か?」
「ええ。もう元通りになりましたわ」
どういうこと……?
なんで喋れているの?
意味が分からないわ。
「そうか、本当に良かった。
誰に襲われたか分かるか?」
「リリア・ブロンムーン様ですわ。まだ中にいると思うのですけど……」
そんな会話が聞こえきて、すぐにわたしは見つかってしまった。
サーシャは癒しの力を持っているから、あんなに血が流れても生きていたみたい。
そのせいで、わたしは捕えられて、その日のうちに処刑された。
でも……。
神様が可愛いわたしの味方をしてくれたみたいで、次に目を覚ました時に時間が巻き戻っていたの。
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