第18話  「ハーレムのすゝめと正妻」

「まあ一旦帰りましょうか」


「そうだね〜」


 やることも済ましたし、一旦は学校を出る。


「ただ書類出しに来ただけなのに色々疲れたな」

 

  肉体的、と言うよりかは精神的にかなりきた。

 てかよく考えたら俺この制度始まってから、精神的に休めたことなくないか?


「いやー、さすがに秋月さんの恋人(仮)がいきなり来るとは思いませんでしたね〜」


「結局あの人は、全てが謎だった」


 何を思って自分の恋人らしき人を俺の恋人な推薦してくるのか。

 

 ……いや恋人じゃない、のか?

 フレンドシップの一環としてのキス?


「もしかしてスキンシップでキスは普通、なのか?」


「何言ってるんですか普通なわけないでしょ、せいぜいがハグですよ」


「だよね」


 即座に突っ込みが入った。

 まぁそうだよね

 

 一応前世の常識ではそうだけど、今世では分からないからな。

 一応聞いてみた一応。


「まぁ白石先生の件に関しては、ちょっとそっちでも調べて見てよ」


 さすがに気になるしそれによって秋月さんへの対応も変わる。

 

「さて、そろそろ許嫁投票のことを考えないといけないよな」


 いきなり橘さんを怒らしたりしてバタバタしてた。っていう言い訳で考えるのをやめてたけどそろそろちゃんとしないとまずい。

 そうでなきゃ今までの苦労が水の泡だし、姉さんのためにもならない。

 この制度はなんとしても続けないといけないから。


「まず便宜上、誰に味方になってもらうかという言い方を攻略って言うとして、その攻略についてまず橘さんは今回ではない、って俺は思ってるんだよね」


「確かに一人を味方にすればいい、という考え方なら一人に絞ってもいいですからね…………橘様を外すその理由を教えていただいても?」


「うんもちろん。まずこないだの件もあって、橘さんはもう少しほとぼりを冷まさないといけないと思うというのが一つ。二つ目に明るいだけ、っていう感じの子ではなさそうだから。うまく言葉には出来ないけど、ちょくちょくなんか違和感がある気がするんだよね。白石先生の言ってたことも気になるし」


 総じていえば、ちょっと不確定要素が多すぎる。


「…………そうですね。となると、攻略順は、宝生様か秋月様、どちらかになりますね」


「うん、そうなんだけどね?」

 

「その様子だと、考えがある様子」


「これはあくまで、俺の個人の考えもはいっちゃうんだけどさ」


「はい」


「単純に恋人がいる相手を仮定した場合、その略奪、っていう言い方が正しいかはわからないけど、それは難しいだろう、って思うわけよ。しかも相手は女性が好きって言ってるわけだからね」


「……それだけだと普通の判断ですよ?」


「んで、俺個人として恋人がいる相手から奪うような真似をするのがあまり好きじゃないんだよね」


「……ですが白石先生は」


 確かに容認するような発言をしていた。


「まぁそうなんだけどね?これはあくまで俺の矜持、というか考え方だから。なるべくならやりたくないなぁってだけ」


 「でもそれは………」


 「でも姉さんの方が大事だからね、やらなきゃいけない時はやるよ?でも今はまだ、かな」


 「……そうですか。」

 

 明らかにもの言いたげな様子の花咲凛さん。


 「まぁ最初は宝生さんともう少し話してみて、なんとか許嫁制度をこのまま続けるように話してみるよ」


 「それではこの4月までは一旦第1目標、と言いうことですね?」


 「その予定だよ」


 「……大まかな目標については承知いたしました。ただ今後のことを考えれば、宝生様にだけかかりきりになりすぎる、というのも危なく感じます。ですので、あくまで宝生様優先にしながらも他の方もないがしろにされませぬように、愚考いたします



 蔑ろ、かぁ。

 うーん。


 「そもそも俺が嫌われている訳じゃん?そのうえでないがしろにしてるとして、嫌がられる、なんてことあるかな?そこまでおろそかにするつもりもないのだけど」


 「そうですね、キョウ様なら言わなくても大丈夫だとおもいます。万が一のことを考えて、お伝えしております。女性、というものはキョウ様が思うよりも存外敏感でございます。嫌われたままでいい、というなら話は別ですが、許嫁の皆々様とはいずれ身体を交える関係でございます。でしたら、ハーレムを創る者としては、キョウ様に隔意を持たれる、というよりは許嫁で差が出来るようなことは避けたほうがよろしいか、と。こちらハーレム作る上での基本事項でございます」 


 ハーレムを創ることに基本事項なんてあるんだ?!

 そりゃるか。

 ………あるか?


 「でもまぁ確かに差をつけるのは良くないよなぁ。でも等分にしたらそれはそれで時間足りなくなりそうじゃない?」


 「そうですよ?ゲームじゃないので、誰かにかまってたら誰かは放置されてるわけです」


 「え、めっちゃむずくね?」


 「めっちゃむずいですよ?」


 何を今さら、とばかりに返答してくる。


 「ハーレムとは胃が縮む思いをいつもする、こともあるそうですよ?これもハーレム本に書いてありました。【ハーレムのすゝめ】」


 「本の名前の癖よね」


 「ちなみに私の愛読書の一つです」


 「絶対他にもっと愛読する本あるよ?」


 間違いなくそれではない。


 「……話を戻しますね?まぁ今回の件で大事なことは、許嫁間で、差をつけない、というのが大事なのです。今回、宝生さんに時間かけた分をいずれほかの方にかければいいんです。これは時間だろうが、お金だろうが、性行為であろうが、です」


 全てを平等に、か。


 「もし、その均衡が崩れるとしたらそれは……」


 「それは……?」


 「キョウ様が一番の女性、【正妻】を決められた時です。それは正当な理由ですので」


 「……はは、まぁでも今は正妻も何も許嫁の一人もいないから、正妻も糞も関係ないよ」


 「今はまだ皆さまキョウ様の良さに気付いてない、ですからね。皆様が気づいたら……ふふ」


 普段あまり表情を変えないからこそ、そのほほ笑みが怖い。


 「俺そんな魅力はないよ?」


 「……男性というだけでも今は魅力あるんですよ、それにキョウ様は性格もあまり見ない、女性を蔑視しない、紳士であられる。これで魅力ない、と?」


 「……ってよく言ってくれるけどねぇ?」


 「実感が湧いてないんですよねぇ。ただまぁキョウ様基本的に田舎暮らし前の価値観残っている場所で、余り女性に囲まれる、というかそもそも人が少なかったからですねぇ?それに降りてきたらもう私がいたので、変な虫はつきにくいですからね。でも学校行ったら、いやでも思い知ると思いますよ?女性に囲まれる、という経験を。これも楽しみですね、ふふ」


 怖い怖い怖いよ。


 「学校にしても、正妻にしても、未来が楽しみ、ですね?」


 「不吉なこと言わないでよ」



 近い将来本当に、正妻をめぐる争いに陥ることを俺はまだ知らない。

 


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


しごおわ!!!

 ということで一旦0章終了!!

 長めのプロローグ終わり!!!


 次回1章許嫁投票編!


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