第6話 「新居へ」
「とうとうこの日が来てしまった……」
あれから3日、直ぐに入居の日は来た、来てしまった。
はぁもうこの3日間は生きた心地しなかった。
「まぁまぁ私も結局一緒に行くことになりましたし??安心してください」
「花咲凛さんギリギリまで前の家から通おうとしてたじゃん」
「だってどう考えても最初雰囲気キツそうじゃないですか。だからキョウ様が雰囲気良くしてから行こうかな?って」
「一緒に地獄に行こう?」
「何が地獄ですか。キョウ様にとってはもしかしたら天国かもしれないじゃないですか」
「いや空気は多分地獄だから味方が欲しくて」
そんな他愛もない話をしてたら、あっという間に着いてしまった。
家は東京の一等地の住宅街にある立派な家。
いや豪邸と言っても差し支えない。
まぁ人口が減った影響で、空き家もかなり増えてきて、そういうのを政府が接収したらしい。
細かいことはよくわからないけどいい家に住めるのはいい事だ。
「家がすんごいなぁ」
「ですね、私たちが元々住んでたところも立派だと思ってたのに、それを軽く凌駕してきますよね〜」
「前の家ではキッチンとリビングが別なことに感動してたもんね」
「いやぁあれは革命でしたね」
無表情で驚いてる様はなかなかにおもしろかった。
「でもあの時から考えると花咲凛さんもだいぶ表情豊かになったよね〜」
最初の頃は本当に軽口も言わなかった。
なにか特別なことがあった訳じゃない。
段々と打ち解けていっただけ。
「やっぱキョウ様に女、にされたからですかね?」
「……何をご冗談をまた。誰かに聞かれたらどうするんです、か?」
前をみると花咲凛さんがあ、って顔をしてる。
うん??
恐る恐る後ろを振り帰る。
「あ」
あぁ終わったァ。
そこには同じ高校に通うらしい彼女の姿。
「ごめんちょっと通れないからどいて欲しいな」
ニコりと笑顔を浮かべてこちらをみる。
「あ、あぁごめん」
「ううんいいよ〜」
どうやら花咲凛さんとの会話は聞かれてなかったらしい。
あぶなぁ。
聞かれてたら、今後の生活がやりにくくなってきたところだった。
「あ、そうそう」
「ん??」
「あんま道端でさっきみたいな話しない方がいいよ?嫉妬で殺されちゃうかもしれないから。近頃の世の中は、そういうことできない子の方が多いんだからね~。まぁ私は興味無いからいいけど、さ」
「お、おうありがと」
「ほいほーい。んじゃお先に~」
肩をぱんぱん、と叩きスーツケースを引っ張っていく橘さん。
「…………」
「…………」
お互いに無言。
「どうしましょう、キョウ様。実は、私これからこの家でメイドをやっていくことになるんですけど、今の会話聞かれて、ちょっと気まずいなァって思うんですけど、どうしたらいいですかね?」
「ははは何をおっしゃる、花咲凛さん。お宅はまだ仕事上の付き合いじゃないですかぁ。私に至っては、許嫁となる人に見られましたよあははは。この間は上手くできなかったから、今回は上手くやろうかな、って思ってたんですけど初めからつまずいちゃいましたよあはは、どうしたらいいですかね?」
「あーそれはキョウ様の自業自得なんでなんとかしてください。それよりも私の職場関係がまずいんですけどそっちへのアドバイスは?」
「自業自得乙、ですかね」
「あーそんなこと言っていいんですかー?メイドという立場を利用してあることない事吹き込みます、からね?」
「例えば?」
「キョウ様は、性癖がドMで鞭でたたかれるだけじゃ喜ばない、とか?」
「「え゛ッ」」
…………
うん?
なんか嫌な予感がする。
というか、いやな予感しかしない。
だってほら、花咲凛さんがさっきと同じように、「あ」みたいな顔してるもん
やっちまったって顔。
はぁ。
心の中でため息をつきながら、恐る恐る後ろを振り返る。
そこには三度婚約破棄された令嬢。
ちょっと先には、リムジンらしきものも止まってる。
いつの間にか、来てたらしい。
怖くて顔は見れない。
「……ご機嫌よう?」
「TPOは弁えた方がいいのでは?今後注目される訳ですし。よろしくお願いしますね」
それだけ一言言ってスタスタと家の方向へ。
もうね一瞬だけ表情みたけど、微動だにしてなかったね。
氷の顔してた。
またも残されたのは俺と花咲凛さんの2人。
春ではあるけど、さすがにそろそろ家の中入りたい。
「ところでキョウ様」
「うん?」
「私この家でメイドとして――」
「――それさっきも聞いたからね?」
ふぅ。
一旦自販機で2人でコーヒーを買って落ち着く。
心機一転して、落ち着いてきた。
元々印象最悪だったのが変わってないだけ。
うんそうだ。
よし。
「そろそろ家の中入らない?」
「そうですね、大変きまずいですけどね」
「誰のせいだと思ってる?」
「キョウ様の性癖のせいですよね?ドSでメイドを緊縛するのが趣味とかいう――」
「「う゛ぇっ」」
……またか。
もうここまで来たら、驚かない。
後ろにいるのは、どうせ。
「……秋月さん」
「…………教師として言わせてもらえばそういうのは節度を守りなさい」
頭をポリポリとかきながら、普通に面倒くさそうに、注意された。
そのまま家の中に行くのかな、と思えば今度は振り返り敵意を込めた目でこちらをみて、
「私個人として言わしてもらえばやっぱあなた嫌いだわ、それじゃ」
ヒールをかつかつと鳴らし、家の中へ。
「…………」
「…………」
「もう家帰ろうかな」
もう俺のメンタルはボロボロよ。
「そうですね、帰りますか」
「花咲凛さん……」
「じゃえりましょ、家へ」
花咲凛さんは何故か真っ直ぐと歩いていく。
あれ?俺が帰りたいのは前の家なんだけど……。
「……家は後ろじゃない?」
そう抗議した瞬間、花咲凛さんが
「…………何言ってるんですか?キョウ様の家は目の前にしかないですからね?」
「いやまあそうだけど」
「ほら行きますよ〜、いつまでも駄々こねてないで」
「俺こねてなくない?巻き込み事故をもらったじゃね?」
「…………ふむ一理ありますね」
「キメ顔でかっこよく言ってるけど一理どころじゃないよ??」
花咲凛さんは無駄にクールな表情だから様にはなってるのが微妙に腹立たしい。
無駄に。
「過去を振り返ったらダメです。未来思考でいかないと」
「その未来が大変なことになってるけどね??」
新居に入るのがこんなに憂鬱なものだとは思わなかったなぁ……はぁ。
もっとこうワクワクするものじゃなかったかなぁはぁ。
「がんばりましょ、ファイト♪」
殺意沸いた。
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お疲れ様です。
週が始まりましたねぇ。
3連休後できついですけど、一週間がんばりまっしょい。
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ではでは。
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