第1話 FR星ヶ丘学園の朝

「わっ、見て!SKY-Colorsだよ!」


「ほんとだ!」


「かっこいいー!」



寮のロビーのモニター。


そこには4人組ボーイズアイドルグループのミュージックビデオが流れていた。

この落ち着いたメロディーに雪の音や、冬のあたたかさを感じられる曲。

冬というものをしっかり音に表現できていて、歌っているSKY-

Colorsの歌を邪魔していない。


……すごい、本当に。

周りの女の子たちが夢中になっている歌やダンス、ビジュアルではなく、わたしは曲の方に夢中だった。

あと、演出も。

雪が降っているところや、クリスマスのあの賑やかさ。

衣装も可愛いなあ。

踊ってるところは白の衣装にファーやキラキラの結晶やクリスタルが散らばってるし、個人パートのところは温かそうなニットとかの普段着や鮮やかで楽しいクリスマスパーティーの衣装。

切ないというよりは明るめの冬ソング。


この曲のセンターのメンバーはまさに「冬」って感じの人で、人気メンバーなんだ。

歌が特にすごくて、高音がきれいなの。

ラスサビの前の高音、ハモリ、最後のパートとかキュンってしちゃう。


……とかいろいろ想像してたらもうすぐ朝ごはんの時間だ。


モニターを後にし、寮のレストランに向かう。



はじめまして、私はシオンといいます。

先週高校一年生になったばかりです。

FR星ヶ丘学園という、ちょっと変わった学校に通っていて、私はそこの普通科に在しています。


どう変わっているのかというと、普通科と「芸能科」というコースがあるんです。

芸能科はアイドルや俳優さんを目指す人たちがいて、みんなすごくキラキラしています。

いわゆる……「卵」という存在です。

もちろん、事務所とつながっています。

FRエンターテインメントという、かなり大手事務所で本部は韓国。

うまくいけば、韓国デビューができるというK-POPアイドルを目指す人たちにとっては憧れの存在だそうです。

芸能科の校舎自体が事務所で、通称日本支所と呼びます。



レストランに入り、手を消毒。

トレー、皿、おしぼり、皿を取り、料理をとっていく。

カフェテリア式です。

今日は洋食らしいです。

クロワッサン、スクランブルエッグ、ベーコン、レタス、コーンポタージュ、フルーツ入りヨーグルト。

まるで、ホテルみたいです。


席は指定されています。

部屋番号順、ですね。

長いテーブルがいっぱいあって、そこにずらーっと座って食べます。

嬉しいことに、私ははしっこ。

1人で静かに食べられます。


「ねえ、WizardsのMVTeaser見た?」


「見た見た!フル公開楽しみすぎる!」


「カグヤのとこめっちゃ良かったよね!?」


「ノアもやばいよ!!」


MVTeaser。

それはYoutubeで公開されるアイドルたちのMVの宣伝みたいなもの。

ほとんどはMVの一部を切り取って編集したもので、これを見るとMVを見るのが楽しみになる。


そっか、Wizardsはもうすぐデビューだ。

さっきモニターに映っていたSKY-Colorsの弟分になる期待の新星。

今から3か月前にオーディションで7人のメンバーが決まった。

そのオーディションはかなり話題になっていて、デビューを楽しみにしているファンたちは多い。

わたしも、一応楽しみにしている。



朝の寮はこんな感じで、賑やかです。

芸能科の人も普通科の人も基本は全員放課後は寮で過ごします。

私も寮で過ごしています。

もちろん、家族とは毎日連絡をし、休日は通話もします。


レストランのご飯は美味しいです。

部屋のベッドも寝やすいです。

ただ掃除は自分でしないといけないです。

時々清掃員さんが来ます。

部屋は2人で使うところもありますが、私は1人で使っています。


……だから私にはルームメイトという人がいません。

そして、友達もいません。

まだ高校生になって1週間だからということもあるかもしれませんが、一番の原因は私のこの地味な外見です。

肩までの真っ黒なショート、黒いメガネ、微妙に長い前髪、そして無表情。


女の子たちはみんなキラキラしています。

みんな女子力があって可愛いです。

ちょっとだけ羨ましいです。



私は別に、ここに通いたいという意思はなかったです。

もうアイドルにはと思っていたから。

けど、からとんでもないお願いを任されたのです……




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