~再出発~
―――時は経ち、また新年を迎えた。
彩希は賢明にリハビリをした成果を出し、普段の生活で不自由のないほどにまで動けるようになっていた。
そして一番懸念されていた、学園への復帰だったが、周りは転校を勧めるも、彩希自身が「ここまで来て逃げたくはない」と言い張り、上条学園への復学を希望した。
学力については、一年間眠っていたこともあり、留年が決まっていた。
そして俊もまた、心の傷から教室へ入れなかった分、学力が遅れていると判断され、同様に留年することが決まり、2人はそれぞれもう一度3年生となり、無事に卒業できることを望んだ。
一方で、圭と敦也は先に卒業し、共に同じ高校へと進学した。
学年は変わってしまうが、圭も敦也も、「俊も水瀬も一緒に来いよ」と2人の入学を待っていた。
そして季節は流れて。
それぞれが想い想いに自分の居場所を見つけて、懸命に生きていこうと誓った。
俊の左腕に残されたリストカットの痕も、もうほとんど目立たなくなる程までに薄くなっていて、あれ以来、自傷行為をしていないことが窺えた。
まだ心からの笑顔を見せるのはむずかしいが、少しずつ、俊は自分の想いを正直に話すことを決め、その表情もだいぶ柔らかいものになっていた。
それでも、時々はまだあの頃の夢を見てしまうときがあるらしく、夜な夜な苦しむこともあった。
そして衝動的に、自傷行為をしそうになる事もあったが、すぐに誰かに助けを求めて、圭も敦也も、そして弥月も、皆がいてくれることに感謝し、そして互いに信じ合った。
―――いつか、この苦しみが、笑顔に変わりますように…と。
そして迎えた新学期。
真新しい制服に身を包む俊と彩希。
入学式も終わり、皆が自由に談笑している中、俊は彩希を見つけて、微笑みかける。
そしてその様子を校門から見ていた圭と敦也も加わって、4人で記念写真を撮ることにした。
俊はその写真を、引き出しに仕舞っていた彩希とのツーショット写真と一緒にサイドボードに飾った。
二つの写真は太陽の光に照らされて、輝いていた。
そこに映る俊の表情は、どちらも変わることの無い、心からの笑顔だった。
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