ショート≠ショート
冠城 刺刀
世界が終わる話
人が死ぬ時はいつだと思う?
具体的にどーゆーこと?。
ほら、忘れられた時とかって言うじゃん。
生命活動が止まった時。
つれないなぁ。
なんでもいいよ、今生きてるんだから。
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この世界は終わりを迎えつつある。高度に発達したAIの反乱だとか、核戦争が起こったことによる余波や、宇宙人が攻めてきたとかそういう一大事では無く、海面の上昇という至ってシンプルな理由だ。最盛期の人類の2割それが世界の人口だ。そんなことはこの時代に生まれた私にとってどっちでもいい。私にとって今が普通だから。人類はあと100年程で地球に住めなくなる、と小さい頃から言われて育って齢18の今でも同じ事を言ってるあたり意外と大丈夫なのだろう。
「寝てる?ねえねえ起きてよ。」
教室で寝ていた私を邪魔する者は1人しか居ない。
「なに?もう授業も終わってやることもないでしょ。」
「つれないなぁ、花の高校時代唯一無二のクラスメイトだって言うのに!」
「そんなこと言われても、毎日毎日ずーーーっと同じアンタの顔を見続けるのよ?憂鬱にもなるわよ。」
「俺、昨日と比べて少し変わって無い?」
「古典的な展開に付き合わせないで。付き合ってるわけでも無いんだから。」
ありとあらゆる仕事をロボットがこなしているこの世界で、家族以外の人間をコイツしか知らない。
「そんな事はどうでもいい!」
「奇遇ね私も同じこと思ってたの、これから今までの人類とこれからの人類に思いを馳せる時間だから、おやすみなさい。」
「そんな適当な理由なの?!」
彼は一々オーバーな反応をするせいで見てるだけでもうるさい。
「まぁでもそうだよね大事だね、それ。例えば、明日世界が終わるとしたら、とか考えるの面白いし。」
「なにそれ?」
少し興味をそそられた。
「今日の歴史の授業で昔の文化について話してた時言ってたよ?君寝てたけど。ほら、異世界転生とか、流行りましたよーって時にSNSとかで一時期似たようなのがいっぱい出てきたんだってさ。」
寝ていたからわからなかったどころか何を言っているかさっぱりだった。
「そんな中で、もしも明日世界が終わるとしたら何をしますか?って言うのがあったんだよ。君ならどーする?」
「私なら何もしないと思う。いつも通り通学して、いつも通り生活する。」
「え?なんで?」
「やりたいことも無いし、ふつーに今幸せじゃない?生きてるだけで」
「俺はあれだな、うーん、あれだよ。」
「なに?」
「君に会いに行くよ、いつも通り。今日みたいに。」
「それってさ」
口を開こうとしたその時。
ぶつんと何かが切れる音がした。
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この世界は終わりを迎えていた。高度に発達したAIの反乱だとか、核戦争が起こったことによる余波や、宇宙人が攻めてきたとかそういう一大事では無く、海面の上昇という至ってシンプルな理由でも無い、未知の伝染病により、人類は両手で収まるまでに減少した。そんなことはこの時代に生まれた俺にとってどっちでもいい。元から人類の存続もとい抗体を持つ彼女1人を守るために生まれたのだから、過去の事は必要ない俺にとって今が「普通」だから。人類が数を急激に減らしはじめてから100年でクローンの数は1つの町ほどになった。クローンの寿命は短く20年ほど、小さい頃からの数え切れない人生の記憶をもって彼女のために同じ日々を繰り返している。今でも同じような事を言ってるあたり意外と本質は変わらないのだろう。
彼女は老いる事は無い、科学の発展によるもの、人類が最後に残した希望という耳さわりのいい言葉で誤魔化した拷問にも近い技術。
彼女はここでとまっている。
100年前のここから変わらない日常。
俺がその他大勢と同じく病気で倒れる直前のあの日の中で。
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「人が死ぬ時はいつだと思う?」
彼女は言う。
「具体的にどーゆーこと?」
俺は答える。
「ほら、忘れられた時とかって言うじゃん。」
彼女は笑顔で返す。
「生命活動が止まった時。」
俺は答える。
「つれないなぁ。」
彼女は笑顔でおどける。
「なんでもいいよ、今生きてるんだから。」
俺は答える。
忘れられないように、今日もまた世界は終わる。
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