洋書(英語)を読んでみよう

春泥

はじめに

 趣味が読書の自分は、たまに洋書を読みます。言語は英語、残念ながら他の外国語はできません。ジャンルは主にミステリーやホラー、SF、ノンフィクションなんかも。

 日本語で書かれた日本人作家の小説、あるいは和訳された海外小説を読む方が圧倒的に多く、洋書は年間10冊も読むかどうか。もっと読めたらいいのですけど、残念ながら読むスピードが日本語よりかなり遅いので。


 今読んでいるのは、ミステリーの女王アガサ・クリスティーの The Mirror Crack'd from Side to Side、素人探偵のミス・マープルが登場する長編です。TVドラマ版『ミス・マープル』を観たことがあるなら、これが「鏡は横にひび割れて」というエピソードの原作であるとぴんと来るかもしれません。BBC版なら、アマプラで視聴できます。小説の邦題も同じく『鏡は横にひび割れて』です。


 和訳があるものを、なんでわざわざ原書で読むのか。


 それは、アガサ・クリスティーを読み始めた中学生の頃、当然英語の勉強も学校で始まっていたので、いつか間に翻訳者を介することなく原語で読めるようになるだろうか、と夢に見たからです。

 どんなに優秀な翻訳家でも、外国語のニュアンスを漏れなく日本語に置き換えるというのは不可能です。

 中学生のわたしは、英語を勉強して将来何の役に立つのか、まったく考えていませんでしたが、英語で書かれた小説が英語で読めたらそれは素晴らしいことだろうと密かに思っていました。


 だからわたしは今、これは、あのアガサ・クリスティーが一語一語綴った物語なのだと噛みしめながら、The Mirror Crack'd from Side to Sideを読んでいます。


 このエッセイはその読書記録であると同時に、洋書を読んでみたいけど、どうにもハードルが高くて……という人の後押しになったらいいなと思っています。


 まあ、本を読みながら思うところをつらつらと綴るのがメインなのですけど。


 ところで、これを書いている2023年7月5日時点で、なんと某出版社の夏のKindle大セール*で対象商品50% OFF という大盤振る舞いが実施されておりまして。


 たとえばカクヨムにゆかりのある『同志少女よ、敵を撃て』もKindleで半額だし、アガサ・クリスティーの名作『そして誰もいなくなった』や、『オリエント急行の殺人』さらに、わたしが今現在英語で読んでいるミス・マープルものの邦訳『鏡は横にひび割れて』もセール対象になっています。


 とりあえず、わたしは速攻で『鏡は横にひび割れて』を購入しました。


 お前、英語で読むんじゃないのかよ、という心の声が聞こえてきたような気がします。

 ええ、勿論、読みますよ、英語で。でもね、外国語で小説を読むのは、楽なことではないのです。途中どうしても意味が解らない箇所が出て来て放り出したくなるかもしれないじゃないですか。そういう時のための、転ばぬ先の杖です。


 英語で読んだからといって、日本語でも読んじゃいけないなんてことはありません。名作というのは、折に触れて何度も読みたくなるものなのです。だから、もしも初めて洋書に手を出すことに不安を覚えるのなら、素直に和訳も買ってしまえばよいと思います(和訳がないなら仕方がないですけど)。逆に、翻訳書で読んだものを原書で読んでみるというのも当然ありです。


 そんなわけで、今現在私の手元には、下記二冊があるわけです(どちらも電子書籍ですが):


アガサ・クリスティー『鏡は横にひび割れて』 \495(期間限定価格)

Agatha Christie, The Mirror Crack'd from Side to Side \630


 ちなみに「アガサ・クリスティ」ではなく「アガサ・クリスティー」とするのは、この『鏡は横にひび割れて』に用いられる作者名の表記に倣っています。

 こんな風に同じ人物、しかも超有名人物なのに、日本語では表記が微妙に異なるっていうの、苛々しませんか? しないですか? わたしは、嫌いなんです。


 統一せい!! (太字、ゴシック、16pt)


 と思うんですよ。

 日本語と英語の発音は大きく異なるので、日本語の音を表すカタカナで、外国人名を正確に記すことは不可能です。だから、「クリスティ」と「クリスティー」どちらの方が英語の発音により近いのかというと、これはほぼ互角の戦いだと思います。強いて言うなら、「クリスティー」と「クリスティ」の間をとって「クリスティ-」(「ティー」よりは語尾が短く、「ティ」よりはやや長め)でしょうか。

 混乱を避けるため、本エッセイにおいては、「クリスティー」で統一したいと思います。


 そういえば、中学生の自分は、名探偵の名前が「ポワロ」なのか「ポアロ」なのか、戸惑っていました。そして、英語表記 Hercule Poirot を見て、途方に暮れるのです。


 原書(英語)で読んだ本の和訳版も手に入れるということは、普段はあまりしません。翻訳する手間暇をかけていない分、たいてい原書の方が安くつき、そこが原書を読む魅力の一つでもあるからです。でもアガサ・クリスティーは自分にとって特別な作家なので。

 他に、今回のセール対象にカズオ・イシグロ『日の名残り(The Remains of the Day』も入っているので、これも買っちゃおうかな……。

 若くして世界的名声を得たイシグロは、あまりに英語的な(生粋の英国人でないと理解できないような)表現を使ってしまうと翻訳する際に困るんじゃないかという強迫観念に駆られながら小説を書いているそうで、英文が比較的平易なことで知られています。とりあえず英語で本を読んでみたいけど、一体どれから始めたものかと途方に暮れているのなら、おすすめしたい作家の一人です。

 

 まあでも、自分が興味の持てる作品を選ぶのが一番ですけどね。


 次回からはちゃんとThe Mirror Crack'd from Side to Sideを読んでいきたいと思います。


=====

*上記のKindleセールは2023年7月12日で終了しています。

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