反逆の山田

@D-Shigemitsu

第1話 せめて奢ってくれ


「おい山田、ちょっと話がある。すぐに会議室に来い!」

 

 またか。

 心の中でため息をつきながら電話を置き、すぐさま会議室に向かう。

 最近部長からの呼び出しが多い。


「失礼します」

 会議室に入ると、すでに部長がいた。


「お呼びでしょうか、佐藤部長」

「お前が担当しているリースの件だ。先月報告した時に比べて契約が全然増えてないじゃないか!これはどういうことなんだ!?」


 俺は少しだけ間をあけてから答えた。

「それは……」


「それに先週も取引先との会議で問題を起こしたそうだな。そんな態度でうちの会社に利益をもたらしてくれるのか?もっと真面目に取り組んでくれよ」

「はい、すみませんでした……」


 部長は俺のことを睨みつけるように見つめてくる。正直、こんな目で見られるだけで胃が痛くなる。


「いいか、今度問題を起こせばクビだからな。わかったら早く仕事に戻れ!」

 はい……と小さく呟いて部屋を出た。

 くそっ、なんで部長は俺にばかりうるさいんだ……。



 部長に嫌味を言われながら仕事をしているうちに定時になった。

 

 今日はもう帰ろうと思い、帰り支度をしているとまた部長に声をかけられた。

「山田、ちょっと飲みに付き合え、いいな?」

 嫌な予感しかしないが断るわけにもいかない。

 

 はい……と答えると、部長はついてこいと言って歩き出した。

 連れて行かれたのは居酒屋チェーン店だった。店内に入ると店員さんに個室へ案内された。

 

 席につくと、部長は生ビールを注文し、すぐに運ばれてきたそれを一気に飲んだ。

 それから部長は次々と注文を入れていく。


「おい、山田、飲んでるかぁー。ほら、お前も飲めぇー」

 大分酔いが回ってきたみたいで絡み方がうざい。

 上司だし無下にする訳にもいかずに仕方なく付き合うことにした。


 結局、俺は部長に勧められるままにどんどん酒を飲むことになった。

 そして2時間後、すっかり出来上がった部長は俺に向かってとんでもないことを言い始めた。

 

「お前、ほんっと使えないよな。マジでクビにしたいんだけど」

 そう言って部長は笑っていた。

 そんなこと言われても困る。

 だが、ここで逆らうことはできない。

 どうしようかと思っていると、部長は店員を呼んで会計し始めた。

 

 いつも通り割り勘だ。つきあわせるならせめて奢って欲しい。

 部長は店を出るとそのままタクシーに乗って帰って行った。


「さて俺も帰るか」


 自宅に帰ると風呂に入ってベッドに寝転がる。

 疲れた。本当に最悪な一日だった。

 スマホを弄っているとふとある記事が目に入る。


【誰でも株で1億円稼げる方法】

 

 そんなものあったら苦労しない。

 1億あったら会社やめるかな。その前に部長を殴りたい。

そんなことを考えながら気づいたら寝落ちしていた。

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