物言わぬ星

@masamu-ne

物言わぬ星

世界地図の白い部分を指さして「ここが私のうまれたところ」


シェルターの中で子猫は丸まって子猫みたいに無力なままで


明日もまた人間をやるため日々を文字に吸着させて手放す


天上の雲に梯子を立て掛けて「世界平和」の旗はたなびく


言ったでしょ大事なものは奇数だけ偶数はダメ、偶数はダメ


音が好きで呼び過ぎたせいでさびしさが乗らない最後の呼びかけなのに


一日に十五時間は寝ています世界に君が見当たらなくて


君だけを呼ぶ声で呼ぶ明け方がホリゾンブルーの気泡の故郷


今春も一度も地面に着かないで飛び越えそうな君のステップ


今も君の背筋はしゃんと伸びている梅の木だったころの名残で


猫らしくない猫と行く散歩道紛れるように咲く白葵


水彩の輪郭だった君が今焼き鮭食べて現実になる


DとFにまたがる君の指紋痕ここに薬指を置くんだね


紫陽花は雨が好きだよあふれるほど見てくれなくちゃ振り向かないよ


木陰にてまるで日向にいるように細まる目元を下から見てる


ピールを食べてると小鳥みたいだね冬になったらいなくなるのも


帰省して久しく犬に触れるとき君の睫毛は意外と長い


初めての君が見えない夏が来てエレキギターを始めてみたり


地上から命からがら春の底四目並べが今揃いそう


物言わぬ草と小川の惑星へ走れ、おまえはけやきを越えて

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